2008年_第1回ヒバクシャ地球一周(第63回ピースボート)

ヒバクシャと多くの参加者をつないだ「おりづる文化祭」

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-①

(その場で織田信彦さんによる「想」、弓削脩さんによる「愛」が書かれた)

 

12月15日、船内が終日「おりづる文化祭」一色に染まった。
100名のヒバクシャを乗せ核廃絶を世界に発信しようと意図された今クルーズ最大のプロジェクト「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」。船内での通称は「おりづるプロジェクト」である。これまで船内では証言、講座、交流会、クイズなどさまざまな催しを行ってきたが、その集大成というべきものがこの「おりづる文化祭」だ。

文化祭のディレクターを務めたのは、今クルーズ中、船内で「おりパ」としておりづるプロジェクトのボランティアをしてきた20代のフッキーこと橋間富貴子さん。「おりパとして関わって、おりづるの人たちと若い人たちとの接点がまだまだ少ないと感じていて、それをつなぐ場が必要だと思ったから」と動機を語る。
「今わたしたちにできること」をテーマに掲げた文化祭だが、特筆すべきは、これをきっかけにこれまでおりづる関連の催しに積極的に加わらなかった若者が、核、ヒバクシャ、平和などについて、思い思いの形で参加したこと。当日、どのような内容だったのか、関わった若者の声を取り上げつつ、主だったものについて紹介する。

●前夜祭(12月14日)

この日のために作られたオリジナルソング『ピース・フロム・ヒロシマ・ナガサキ』など音楽演奏や書のライブパフォーマンス、「白い花2008」の上演が行われた。

●開会式

あいにくの雨交じりの曇り空だったが、予定どおり屋外スペースでの開催になり、迫青樹さんが開会の挨拶を行った。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-①ー①

(「平和はみんなで楽しく」をテーマに「ウォーターボーイズ for Peace」によるパフォーマンス)

●ヒバクシャが語る憲法9条

ヒバクシャ4名が考える憲法9条とは何か、平和とは何かについてトーク。

●被ばく証言

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-④

(藤井美津江さん)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-②

(森喜代子さん)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(山根国雄さん)

 

●原爆詩とライブアート

ヒバクシャである絵本作家の森本順子さんと、らんぼこと山形歩さん、よしここと吉田真希さんという20代のふたりが、吉永小百合さんが編集した原爆詩集の朗読にあわせ、原爆、そして平和に対する思いを、キャンバスに向かって表現。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-③

(灯籠流しに見立て、それぞれの思いを言葉に)

 

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(楽器の演奏や詩の朗読をバックに作業は進んでいく)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(完成した絵と森本順子さん)

●「劇」千羽鶴~サダコの祈り~

広島を中心に平和の象徴として世界に広がる折り鶴。その裏に秘められたひとりの少女、サダコの人生を描いたオリジナル作品。総合演出を川上紘一郎さんが務め、キャスト、裏方含め総勢30人近くが参加した。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(劇中で自身の証言を語る橋爪文子さん)

 

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(「原爆の子像」を折り鶴で表現)

 

裏方のひとりとして映像や音響を担当したジンこと請関仁さんは「偶然ひろねえ(佐藤広枝さん)と知り合いになり、文化祭の2週間前に行われたピースカラーセッションという自主企画を手伝ったのがきっかけでした。おりづるプロジェクトのことは乗船前から聞いていたけど、和太鼓やバンド活動に忙しくて、エリトリアでの若者交流で8月6日、8月9日について聞かれた時、何の日なのかすっかり忘れていたくらいだったんです。太鼓やバンドはいつでもできるけど、おりづるプロジェクトに関わるのは今しかできないと思って」と参加することになった経緯を語った。でもこれで終わりにしたくないという。
「これから何をするのかが重要だと思います。地雷の現状を知るツアーで訪れたカンボジアと、今回のおりづる文化祭でいろんなことを考えさせられました」
まだ具体的にどんな活動をするかは決まっていないが、日本に戻ったら早いうちに広島を訪れるつもりだ。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(サダコチームのメンバー。右手前が請関さん)

 

●『若者から発信!~今、わたしたちにできること報告会~』

原爆開発から投下に至るまで、当時のアメリカ政府の動きを追った「原爆のその裏側~政治と陰謀~」。原爆症とはどのようなものか、またその後どのような症状が発症するかなどを調べた「原爆症のいま」。ヒバクシャ自身に聞き取りをしてまとめたこのふたつの発表、そして学んでどう感じたかを若者10人で報告。
最後に10人で考えた「人のいのちはもろく、戦争はしてはいけないものという言葉を私たちは受けとめた。63年前の犠牲の上に今の平和はなりたっている」という内容の宣言文を発表した。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(宣言文を発表する報告会メンバー)

 

報告会メンバーのひとり、ヒーローこと波照間永勇さんは、今クルーズの前半に行われた「ヒバクシャと語ろう」という企画に何度か参加したが、どう関わればいいかわからず、それっきりになっていたという。実は乗船前、沖縄で小学校の教員をしており、2年前の8月6日、広島を訪れたことがあり、またその後、勤めていたコザ小学校に、偶然、広島でヒバクしたピアノが寄贈され、関心はあったという。
「一緒にやらないかと仲間に声を掛けてもらって、今回5人の方にお話を聞いたのですが、井黒さんに『お兄ちゃん、お願いね』って言われて、自分のような若者にバトンを渡そうとしていると強く感じました」
下船後は、また教員をしようと考えているが、子どもたちに伝えるためにはまだまだ勉強が足りないと痛感。地元で、月に1度くらいのペースで勉強会を続けていければと思っている。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(学習の結果を発表する波照間さん)

●展示

長崎で使用された原寸大の原爆模型や、平和をテーマにした書、乗船者の似顔絵で作った世界地図などの展示。また普段、長崎の平和案内人(ガイド)として行っている「長崎遺構めぐり」を船内で再現。

●閉会式

悪天候のため、急遽会場をデッキから室内に変更。ヒバクシャから佐藤広枝さん、若者からは坊ちゃんこと織田信彦さんを司会に行われ、山田絹江さんがおりづるを代表してお礼の言葉を述べた。有志による「青い空」の合唱、今年5月の9条世界会議でされた9条ダンス、おりづるプロジェクトのテーマ曲としてFUNKIST(ファンキスト)が提供した『こどもたちのそら』にあわせて創作された通称FUNKISTダンスが披露され、最後にディレクターとして橋間さんが挨拶した。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(手話表現も使ったFUNKISTダンス)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(『青い空』を熱唱)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-14

(「手をとりあう」をイメージした9条ダンス)

橋間さんは文化祭を振り返って、「点数をつけるとすれば、60点。でもそれは自分が楽しめなかったから。周りの人からは満足しているという声がほとんどでした。はじめて関わった人の中で、何人かは大きく変わったように感じています」と話した。
ただこれで終わりではなく、目標はこれからもつながり続けること。将来自分の子どもを持つ持たないに関わらず、自分より若い世代に平和について伝える力を身につけていきたいと結んだ。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海

(閉会式で挨拶する橋間さん)

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