3.核廃絶へのいろいろな動き

原水協主催シンポジウム「2015年NPTへ:被爆国日本の役割」のご報告

NPDI外相会合がいよいよ今週末行われます。核廃絶運動、平和運動に関わるみなさんの間では、NPTで何が問われるのか、核廃絶への動きは今後どうなっていくのかなどに改めて関心が集まっています。

そんな中、原水爆禁止日本協議会(原水協)主催のシンポジウム「
2015NPTへ:被爆国日本の役割」が47日(金)に行われました。都内で行われたこのシンポジウムには、平日にも関わらず70人もの人々が参加しました。

会議では、まず笠井亮さん(日本共産党衆議院議員)、川崎哲(ピースボート共同代表)、田中煕巳さん(日本被団協事務局長)土田弥生さん(原水協事務局次長)の4名のパネリストが発言し、そのあと1時間以上に渡って活発な討論が行われました。


笠井さんは冒頭で、第
68回国連総会の核軍縮決議への態度で核廃絶に関する対決構図がくっきりしたことを指摘した上で、NPT再検討会議まであと1年となった現在の政府の様子を教えてくださいました。議員という立場をいかし、国会でのやりとりを紹介しながら、日本政府が「核兵器の非人道的影響の共同声明」に賛同してこなかったのは、「我が国の安全保障環境」と「核軍縮アプローチ」からふさわしくなかったこと、しかし「多くの目標、理想に向けてさまざまなアプローチが認められる」という理由で今度はこの声明への賛同に転じたことなどを説明くださいました。先日行われた「第2回核兵器の人道的影響に関する国際会議」では日本政府の姿勢が腰引けだったことを批判し、「核軍縮・不拡散政策スピーチ」で「戦争する国」づくりと一体の核使用容認するのではなく、いまこそ「核の傘」から脱却し、憲法9条をいかした非核平和の外交をと締めくくられました。



川崎は昨月末に明治学院大学で行われたメキシコ会議の報告会同様、今回の核の非人道性に関する会議で見えてきたことをもとに、今週末のNPDIや今年末に予定されるウィーンでの非人道性会議の第3回目にむけて日本の政府にどのような立場を期待すべきかを話しました。また、今週金曜日から行われるNPDI広島外相会合の関連NGO行事の日程を発表し、icanが各外相に宛てた要請書と核兵器廃絶日本NGO連絡会が岸田外務大臣と軍縮不拡散・科学部長北野充氏に宛てた要請と質問も会場にいらした方に配布しました。(広島での関連NGO行事にご関心がある方はピースボート事務局 03-3363-7561まで)


被団協の田中さんはこれまでの被爆者の長年に渡る活動を改めて振り返り、被爆者がこの間訴えてきたことが国際的な会議で話し合われるようになった喜びを改めて噛みしめておられる様子が印象的でした。2010年の再検討会議と昨年のノルウェーでの核の非人道性に関する会議を経て、ついに今年のメキシコの会議では被爆者の証言に1時間45分あてられたことに本当に一つの達成感を持たれていました。今回のメキシコで、被爆者の証言のように、事実や実体験を伴った話は貴重だと改めて感じられたそうです。また、(日本政府が)核抑止力に頼るということは核兵器の存在と使用を暗黙の内に容認していることに対して懸念を示すとともに、NPDIでは唯一の戦争での被爆国であることをしっかり認めたものであるべきと発言され、核兵器の廃絶につながるものになってほしいという強い希望を述べられました。



最後のパネリストの土田さんは日本政府(外務省)が325日のNGOとの意見交換会で核兵器へ踏み込むことはしないと答えたこと、またその根底にある核抑止力の擁護・依存を痛烈に批判しました。その上で、日本政府が核の全面禁止に進まない理由として
挙げる「日本をとりまくきびしい安全保障環境」については、憲法・非核三原則があることや、外交チャネルはやる気次第で切り拓けることを強調、さらに全面禁止条約を求める決議には核保有国の中国や、インド、パキスタン、北朝鮮などが賛成していることも指摘しながら安全保障環境をこれらの動きと関連付けて読み解くことの重要性にも触れられました。そして、このような日本政府の道理に合わない態度を変えさせられるのは国民の世論と行動しかないと述べ、改めて市民社会の団結と一層の活動の邁進を訴えました。


質疑応答では、「極限状況」の定義や拡大抑止などについて、質問と議論が交わされました。国民の力に関しては、タイムリーに朝日新聞が発表した世論調査で、集団的自衛権について「行使できない立場を維持する」が昨年の調査の56%から63%に増え、「行使できるようにする」の29%を大きく上回ったという結果もパネリストから提示され、安倍政権があからさまな政策を取れば取るほど平和志向が高まるのではないかなどとの意見も出ました。川崎からは、先週インドの防衛研究所による国際会議「核兵器のない世界:構想から現実へ」に参加した際のエピソードなどから改めてみえてきた日本の防衛関係者の姿勢も紹介されました。


シンポジウムの締めにはパネリストが簡単にまとめの発言をしました。笠井さんは安倍政権はあらゆる問題で暴走しているが、
安倍政権の前に立ちはだかる試練の山もまた認識されつつあると述べ、「一層国会でもがんばらなきゃなー」と決意を新たにされていました。

川崎は、NPT決戦ではないということを改めて指摘。「核兵器禁止条約を作ろうという流れはあるというのが現状であり、日本がやらないといっても条約はできる。それをうけて、市民社会はNYに声を届けるのではなくて、本来は国会を包囲して、条約に反対しているこの国を変えていかなければいけない。」と強調しました。また、核を使ったらどうなるのか?どういう状況で使うのか?などと、核廃絶に反対する人たちに追求していくことも、核の抑止力は虚構であることが浮き彫りになるので大切とのことでした。

田中さんは日本の政府を変える世論を作るために非核三原則の法制化を求めるための住民の議論を運動として展開することや、平和市長会議の
2020年までに廃絶をしようというロードマップ(2020ビジョン)など、自治体レベルでの活動により一層精進したいと思うと発言しました。

土田さんは「私の認識以上に日本政府は危険なところに踏み込んでいっていることがわかった」と述べ、しかし「これを変えるには世論しかない」とのこの確信を一層強めたと仰いました。また、川崎が主張したように、様々な積極的なイニシアティブに注目する重要性を
認識する一方で、NPTも大事だと述べ、核保有国も同意した明確な約束や合意など、きちんと守れば核兵器禁止に大きく貢献するものがあるので約束したのだからきちんとせよと圧力をかけることも大切だと思うと述べられました。その上で、オーストリアの会議に核保有国も参加することを期待するとして発言を締めくくりました。 


(文責:畠山澄子)

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