1.ヒバクシャ証言の航海

4月14日~18日 アウシュヴィッツ特別プログラム報告②【船内報告編】

船が地中海にいる間は、冷たい風がずっと吹いていましたが、最近天気も良く、夏らしい海と空が広がっています。
今日は、久しぶりにお昼に外に出て、波のかたちを眺めていました。
こんにちは、奈織です。船内で行った企画の報告をしたいと思います!

4月30日に「被爆者がみた、アウシュヴィッツ」という報告会を行いました。

実は、アウシュヴィッツツアーから帰ってきてすぐに、おりづるプロジェクトメンバーでない、アウシュビッツツアーの参加者のみなさんと一緒に報告会を一度行っていました。そこでは、ツアーの概要を30分ほどで簡単に報告したあと、私たちおりづるメンバーも含め24名の周りに、話を聞きたい人に集まってもらい小グループで感想をシェアするという場をつくりました。これは、とても大成功。帰ってきたばかりの新鮮な記憶や思いを、より近い距離で話を聞いてもらえて、わたしたちの頭の整理にもなりました。(このときの様子はこちらのピースボートのウェブページをご覧ください)

ただ、おりづるプロジェクトのメンバーの中では、やっぱり、「おりづるプロジェクト」としての目線で、それぞれに感じたことを思い思い、みなさんに伝えたいという強い思いがあり、後日あらためてプロジェクトメンバーのみで報告会を作ったのです。

わたしたちは、「おりづるプロジェクトとアウシュヴィッツのつながり」というところに焦点をあてました。

第二次世界大戦中において、同じ時期に起きた大きな負の歴史としてのつながりがあるとは思いますが、被爆者がアウシュヴィッツを訪れることで、何に気付くことができたのか、会場のみなさんに以下の三点を中心にお伝えしました。

①原子爆弾とホロコーストの接点
 李さん(李鐘根さん、広島で15歳の時に被爆)とはっちゃん(服部道子さん、広島で16歳の時に被爆)にお話してもらいました。

アウシュヴィッツ博物館で見た、かばんや靴や髪の毛の山。ガイドの中谷さんに聞いた差別され続けて虐殺されたユダヤ人の気持ち。生還者の方に聞いた壮絶な体験。死に直面する人たちのその様子が、自らの経験と重なり、ぐっと胸に突き刺さったようだったと語ってくれました。

被爆者としてアウシュヴィッツを訪れることは、私のように一つの歴史として感じるというだけでなく、むしろ、私には想像しがたい辛さが、共感できるものがあり、被爆者の経験と重なるのだと思いました。戦争、原爆を経験した人から発せられる言葉は、会場にとても重く響きました。

②原子爆弾とホロコーストの違い
金ちゃん(坂田尚也さん、広島で15歳の時に被爆)とのりちゃん(坂下紀子さん、広島で2歳の時に被爆)にお話していただきました。

原子爆弾は、空の上からボタンで操作したため、殺害の実行者は人の苦しみゆく姿を見ないで良かったのに対して、ホロコーストは人が一対一で対面して死を言い渡す。どちらの方が惨いのか、考えさせられました。

そして、博物館としてのヒロシマのありかたとアウシュヴィッツのあり方にも違いがあるようでした。アウシュヴィッツは、追悼の場、継承の場、教育の場としての位置がはっきりしていて、国が予算を投資して維持している様子でした。広島の継承の形や、市民の参加のかたちとは、また違った構造がみられました。

③歴史を継承するという立場として
もっちゃん(中村元子さん、広島で0歳の時に被爆)と、ユースの私が報告をしました。

生還者の話をきいたとき、その話はまるで最近のことであったかのように感じられました。やはり、経験した人の生の声と言うのは説得力があり、証言することの意義と可能性を改めて実感しました。

アウシュヴィッツのガイドである中谷さんにも、これから、戦争を経験していない世代が原爆のことを伝え受け継いでいくときの態度や方法について学ぶことが多かったです。生還者の声や、当時その場に居合わせた様々な立場の人の気持ちを想像して、どれも大切に焦点をあてていくこと、そしてどれも丁寧に想像力をはたらかせてゆくことの大切さを学びました。

今回の報告会には、80名ほどが参加してくれました。みなさん、とても頷きながら聞いてくださり、会場の雰囲気はとても一体感のあるものでした。

会場からは、
「被爆者として、とても残虐な過去を経験しておりながら、なお、アウシュヴィッツの痛ましい歴史を知りにいくというのは、とても勇気のあることだと思いました。」
「今まで、被爆証言というのは聞いたことがなかったですが、今まで自分が、被爆のことを知らないがゆえに差別をしてしまってきたことを思い出しました。それは、教育の中で教わらなかったからかもしれません。もっと詳しく教えてください。」
というような、声が聞こえました。

アウシュヴィッツで、私たちが感じたことというのは、とても心に深く残っており、話をするのが辛いこともたくさんあります。涙を浮かべずには話せないようなこともありました。アウシュヴィッツで感じたことを、これからの証言活動やユースの活動に、世界とのつながりの中に反映していけたらいいなと思います。

原子爆弾も、ホロコーストも、事実として、人間が起こしてしまった惨禍です。
一度起きたということは、繰り返してしまうことや、もっとひどいことをしてしまう可能性を私たちは持っているということです。その教訓を、これから世界を構築していく人たちが忘れてしまうことがないように、という願いを込めて、私たちの活動の重要性を再確認しました。

まだまだ、船の中には、被爆者の声を聞いたことのない人たちがいます。若い方、ご年配の方、興味のある方ない方、いろんな人が船の中にはいますが、より多くの人に私たちのメッセージが届くよう、残り半分の洋上生活を、過ごしていきたいと思います。

(おりづるユース特使 福岡奈織)

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