1.ヒバクシャ証言の航海

船内活動報告:ユース福岡奈織さん『はだしのゲン』企画

こんにちは。今日はパナマ運河を航行しました。両岸を熱帯林に囲まれて、頭上に鳥の鳴き声を聞きながら、ゆっくりと細い運河を進んでいます。雨も降り、OCEAN DREAMを大海へと送り出してくれる、奥深い景色でした。

パナマ運河通過中!撮影協力:三瀬清一朗さん。笑

そんな私たちは、先日ベネズエラを訪れました。先日の記事にもあったように、大統領にも面会することができ、とても被爆者の声を大事にされていることを感じました。

今日は、ベネズエラに到着する前に私が船の中で行っていたことを一部ご紹介します♪
(私は文章を書くのが遅いので、船内報告を楽しみにしてくれている皆様をお待たせしてしまって、申し訳ありません!執筆の力も向上させて横浜まで戻りたいと思います!!)

◆はだしのゲン紹介企画
5月4日、船内で『はだしのゲンからのメッセージ』という企画を行いました。
少し長いですが、わたしと、漫画「はだしのゲン」のつながりとともに、綴ります。

○わたしが「はだしのゲン」の企画を行った理由
昨年6月、広島で、「漫画はだしのゲン 40周年記念イベント」が行われました。
作者である中沢啓治さんが、生前からとても楽しみにしておられた40周年。高校生から社会人まで15名ほどの人が集まって「Team 青麦」を結成し、イベントを作り上げました。その他にも、はだしのゲンや、中沢啓治さんの周りの人たちが力を合わせて実現した、心のこもったイベントでした。

わたしは、様々なご縁に恵まれて、「Team青麦」のメンバーとして関わらせていただきました。

「はだしのゲンを読んだことがない人には、一度読んでほしい。一度読んだ人には、もう一度読み直してほしい」

そんな想いをこめて、メンバー全員が漫画はだしのゲンを読み直し、中沢さんの他の著作も読み直し、「はだしのゲンが伝えたいこと」というのをテーマに作り上げていきました。

「はだしのゲン」に懸ける想いを心を込めてお話しました

漫画「はだしのゲン」と向き合ったこの経験が、わたしが広島や長崎の被爆の記憶についてもっと知りたいと考え、おりづるプロジェクトに参加しようと決意した一つの大きなきっかけでした。ピースボートでも、はだしのゲンの事をもっとたくさんの人に知ってほしいを思い、乗客のみんなが手に取ることのできる「おりづる図書館」にはだしのゲンを置きました。今、本当にたくさんの人が漫画を読んでくれています。同時に、「私の遺書」や「黒い雨にうたれて」という中沢さんの本もたくさん読まれている様子です。

はだしのゲンは、漫画でもあり、たくさんの人が手に取りやすいと思います。とても臨場感のある絵と、ゲンのまっすぐな生き様や、ゲンの周りでゲンと支え合う人たちもまた、魅力があり、読む人を惹きつける力があります。

○船内での企画の様子

タイトルは「はだしのゲンからのメッセージ」。私がこの企画で目指していたことは、はだしのゲンを「読んでもらうこと」と「みんなで話すこと」。

もう少し細かくすると…
①わたしの知っているはだしのゲンの魅力を知ってもらうこと
 たとえば、少年漫画としての魅力や、各国語に翻訳されている事などなど
 (ありすぎてかけません♪時間もなくて話しきれませんでした♪)
②読んだことのある人が、はだしのゲンについて語る場をつくること。
③読んだことのない人が、読んだ人から、はだしのゲンについて聞く場をつくること。
④はだしのゲンの魅力について、みんなで共有すること、

ちょっと、①の部分を話しすぎてしまって、④の時間がなくなってしまったことが、大きな反省です。(笑)

「私のはだしのゲン歴」
「はだしのゲンから受け取ったもの」
「はだしのゲンの魅力とは?」
という三つのトピックで、グループに分かれて話をしてもらいました。
とても盛り上がり、やはりはだしのゲンのパワーはすごいなぁと再認識しました。
みなさん、それぞれに思い入れがあったり、新しい発見があったり、同じような疑問や考えが浮かんできたり、様々な対話が生まれていたように思います。

様々な世代の人たちが、それぞれの思いを話しました

会場には、読んだことがない人も半分くらい来てくれていて、漫画を読んだ人が、「こんな場面があってね、こんな事を感じてね、」と話をしているのを聞いておられる場面も多く見受けられました。

このような、対話の場をつくることが、原子爆弾を受けて人がどのように感じたのか、どのようなことがあったのかを語り継いでいくことにも、つながっていくのだろうと思います。

原子爆弾について、被爆について、歴史について、知っている人もよく知らない人も、それぞれの立場があって、だからこそ生まれる対話というのを大事にしていけたらいいなと思いました。でも、その中でしっかりと原子爆弾の悲惨さというのは訴えていく必要があります。

企画を終えて、まだまだ「はだしのゲン」を深めることができると感じたので、「ゲンプロジェクト」を発動することに決めました。横浜に戻るまでに、もう少しはだしのゲンの輪が広がるといいなと思います。

私自身、はだしのゲンをしっかり読み解くことで、成長できたことがたくさんあったので、それをみなさんにシェアしていきたいです。

その一つのスタートステップとして……

◆メッセージを歌いました

実は、「Team青麦」は、40周年記念イベントに向けて、メンバーの一人である、広島を中心に活躍するシンガーソングライター李翔雲さんと共に、はだしのゲンの歌を作りました。「メッセージ」という曲です。はだしのゲンが伝えたかった、中沢啓治さんが伝えたかった、「メッセージ」を私たちなりに言葉にした曲です。

その曲を、船内の文化祭で歌いました!!なんと、声をかけて集まってくれたのは、50人ほど。

練習風景。練習を重ねるほど歌詞が心に染みわたります

元気をもらえる歌詞にみんなが共感してくれました。
「いい曲だね~」と好評だったので、また歌いたいなと思っています。

船内で行われた文化祭で披露しました

こうして音楽という入口から、ゲンが広がっていくのも、また、新しい可能性を秘めていると思います。

私はバイオリンが弾けるので、今回のこの「メッセージ」のパワーを受けて、何か音楽でもできることがないか探していきたいです。

◆最後に…
はだしのゲンの魅力というのは、読んだ人の心の中に、様々に大切な感情が巻き起こることだと思います。戦争がいかに悲惨なものであったか、原爆がいかに残酷なものであったか、それももちろん大きなメッセージです。

はだしのゲンに出てくる登場人物はとても多いです。そしてその人物ひとりひとりにストーリーがあります。同じように、広島や長崎でも、ひとりひとりの人生があったということです。
14万人、7万人、と言われますが、14万人、7万人の人たちの人生と、それに関わる人たちがいたということです。それが、無差別に失われてしまう可能性が、まだまだこの世界には沢山残っていることに、私達一人一人が気付かないといけません。

みなさんも、はだしのゲンを見つめなおしてみてくださいね。

「何ができるのか わからないけれど 一緒にはだしで 歩いてみよう」
メッセージ歌詞より。

(おりづるユース特使 福岡奈織)

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