1.ヒバクシャ証言の航海

おりづる発表会「未来へツナグ物語」

みなさんこんにちは、おりづるユース特使 岩本麻奈未です。

船内生活も1ヵ月と云う月日が経ち、ピースボートの船はヨーロッパへ入ります。
その寄港地ラッシュをまえに、私達おりづるプロジェクトは大規模な企画を行いました。
ユース3名の大企画で小谷孝子さんの証言をメインに、船内の若者が未来へと被爆の記憶を継承することを形にした証言会です。

たくさんの方に来て欲しい!ということで、まずはその前座企画として「おりづる紙芝居」を行いました。

おりづるパートナーの方でパペットをしているチームと長崎で被爆された三田村シズ子さんが協力しあって紙芝居を発表。そしてその前座企画に集まって頂いた方々を、おりづる発表会「未来へツナグ物語」というメイン会場へと呼ぶことが出来ました。

おりづるプロジェクトの映像担当エマ・バゴットが制作したオープニングムービーや、三田村シズ子さんの踊る『長崎ぶらぶら節』。
そしておりづるユース橋本くん率いる「おりづる劇団」の一員であるパペットチームの映像と、『笑劇』という漫才コンビ。
続いて「おりづる劇団」の今回の目玉でもある、戦争経験のない若者が参加する『集団証言』。導入として集団証言のピアノ演奏を、わたし岩本が担当しました。

(集団証言をきっかけに被爆体験に関心を持った若者も。)

そのあと、参加ヒバクシャである鎌田さん、堀江さんで結成された『おりづる合唱団』の合唱がありました。歌で世界をツナグという言葉を掲げ、2人で結成した『おりづる合唱団』は今では、たくさんの乗船客の方が参加し当日は約20名の方が歌声を届けました。

(おりづる合唱団のみなさん)

折り鶴、エーデルワイス、アメージンググレイス、You Are My Sunshineの順に全4曲を演奏して頂きました。アメージンググレイスの演奏がはじまった瞬間、会場から歓声が。
なんと、水先案内人で乗船されているソプラノ歌手・清原千賀さんが登場し、共演するという素敵な合唱に。途中で歌を歌いながら涙ぐむ方々もおり、会場に来て頂いた乗船客の方々も涙ぐむ姿を見ました。

(水先案内人 ソプラノ歌手・清原千賀さんの指揮での合唱)

そして、会場が素晴らしい歌声に包まれたあと、今回の企画の最大のメインである、小谷孝子さんの証言に。相棒のあっちゃんを連れて登場です。
腹話術で被爆証言を話す小谷さん。会場の方々の集中を一気に集めます。

(小谷さんと相棒の“あっちゃん”)

そんな証言の最中、小谷さんは言います。
「そうね、もっと早く戦争をやめていればたくさんの人の命が助かったのにね」

今、私がここに生きている。
それがどんなに尊いことなのでしょうか。
災害、病気、戦争など、多くの災難をかいくぐり、遠い過去から紡がれるようにして届けられた命。その紡がれるようにして届けられた私たちの命が、ここにあって今を生きています。
その私たちがこれから紡いでいく命を守るために、被爆の記憶を忘れないように紡ぐ必要があるのではないのでしょうか。

小谷さんは、原子爆弾により4歳の弟を被爆から4日後の10日に亡くします。
その後、小谷さんのお母さんも原爆症による白血病で亡くなります。
小谷さんは、原爆孤児になりました。

小谷さんのお母さんは、小谷さんに対して「自分のことだけじゃなく人のことも考えられる心の優しい人になりなさい」と言ったそうです。
今、私は小谷さんと証言の航海へ出てから1ヵ月という月日を一緒に船内で過ごしました。
たくさん笑って、たくさん泣いて、一緒に支えあって、お部屋でお話しして、一緒に悩んで、一緒に何かを作り。
今、私は心の底から思います。
小谷さんは、自分のことより人のことを考えられるとても心の優しい女性です。
小谷さんのお母さんが、小谷さんに言った言葉は今も消えずに小谷さんの心の中でずっと残っていること。
私は小谷さんの証言を聴くたび、とても心が温かくなります。

証言が終わるとき、小谷さんは被爆者の方が書かれた詩を読まれました。

“広島、長崎を訪れた人 アスファルトの道をそっと歩いて下さい
この下でたくさんの人が死んでいったのです“

この詩を読み終わった直後、おりづるパートナーや協力してくれた方々が席を立ち、口々に普段の日常生活についてを口にしながらステージに上がりました。
「元気?」「昨日何してた?」「あ~明日なにしようかな~」
客席はみんなびっくりしていましたがこれは、演出です。
ここからステージは「未来にツナグ」と言うテーマに沿った歌「土は覚えている」へ繋げます。

(歌の中、ユース鈴木さんが朗読をしながら登場)

ステージの上では、たくさんの人たちが普段の日常会話を繰り広げています。
その中に一人、今回おりづるユースである鈴木慧南さんが登場し、「土は覚えている」の詩の部分を朗読し、曲がはじまりました。作曲を担当した岩本がピアノを演奏しています。

(被爆者の皆さんも共に歌いました)

客席も、ステージ上の方も、涙を流していました。
どれだけ時が経とうと、被爆の記憶から消えてしまっても、
ずっとずっとこの土は覚えています。

わたしたちはそのことを「未来にツナグ」必要があります。

忘れてはいけない理由があります。

“被爆者”ではなく、たった一人の大切な“人間”として彼ら、8名。
そして日本や世界中にいる、原子爆弾の被爆者の方々の声を届けるために私達の活動は続きます。
私達の声は、きっと届くと信じて。
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「土は覚えている」:
第7回おりづるユースの福岡奈織さんが執筆した同タイトルの詩を福岡さんから直接預かり、帰国後の岩本の企画<Salon Project Part2『まるのなか』>のために岩本を含む企画メンバーで作曲。詩は講談社出版の「NO NUKES」に掲載。

また、この広島の町を歌った「土は覚えている」という曲を聴いて関心を持って下さった方々が、乗船されている長崎の参加ヒバクシャである三田村さん、 森田さん、そして長崎を愛する鈴木慧南さんの三人の詩を、船内の方々と一緒に作曲できるように動いていきます!

(おりづるユース特使 岩本麻奈未)

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