1.ヒバクシャ証言の航海

いざ、国連へ@ニューヨークPart.3

みなさん、こんにちは。

ピースボートスタッフの野口香澄です。

ニューヨークも3日目となりました。

(初日の報告はこちら:http://ameblo.jp/hibakushaglobal/entry-12288162405.html

2日目の報告:http://ameblo.jp/hibakushaglobal/entry-12288380541.html )

この日は国連へ行った日となりますが、その前にまず、私たちは911メモリアルミュージアムへ行きました。

2001年の9月11日に起きたワールドトレードセンターでの同時多発テロの10周年を祈念してつくられた博物館です。

広島の平和記念資料館や長崎の原爆資料館などでは、被害の様子がよく伝わるような遺品や模型が、工夫を凝らして展示してあります。

この911メモリアルミュージアムでも、広い館内の中に被害者や救済者の写真を通して当時の出来事がわかりやすく展示・解説されていました。

私たちはまずミュージアムの規模に圧倒されました。館内には崩壊したツインタワーのテレビ塔の一部が展示されていたり救援活動に使われたはしご車がそのまま置かれていたりしました。

被爆者のみなさんも「このような実物をみるとスケールの大きさを実感する」としきりにおっしゃっていました。

またこの事件が起きた2011年には、テレビ報道やコックピットや管制塔のボイスレコーダー、携帯電話の留守電機能など、広島・長崎に原爆が落とされた1945年には考えられなかった技術が多くありました。遺品だけでなく映像や音声も活かした展示をみて、特に砂原さんは今後の継承のためにどのような方法があるかに思いを巡らせているようでした。

一方で、愛国心をかきたて対テロ戦争を正当化するような語り口調も多く、被害を記憶し伝えていく方法については深く考えさせられました。

911メモリアルミュージアム

博物館の見学後は国連へ向かいました。

中に入るために国連パスをもらい、少し緊張した面持ちで国連の中に入りました。

パスをさげての集合写真

入館してまずは、国連でのサイドイベントに参加しました。

本イベントはピースボートとマーシャル諸島共和国国連代表部の共催で、「世界へ届けヒバクシャの声:核兵器の禁止と廃絶を人道的視点から見つめる」と題したものでした。

このサイドイベントには核兵器禁止条約の交渉会議に参加する政府代表団や市民団体の代表者らが多数参加し、70名近くの方に参加していただきました。

ここではマーシャル諸島のアマトゥレイン エリザベス・カブア大使の他に、オーストラリアの核実験被害者2世のカリーナ・レスターさんとタヒチの核実験被害者ローラン・オルダムさんにも発言をしていただきました。

また、私たちの他に、被爆者で日赤長崎原爆病院名誉院長の朝長万左男先生にもご参加いただきました。

会の様子

オーストラリアの核実験被害者2世のカリーナさんはアボリジニの伝統的な土地で核実験を行われ、それに対してオーストラリア政府からの支援は何もなかったという話をされていました。

また放射性廃棄物もシドニーなどの都会ではなくアボリジニが住んでいる都心から離れた土地に貯蔵するという計画がこれまで何度も持ち上がっていることに憤りをあらわにしていました。カリーナさんを始め、多くの女性たちが6年もかけて反対運動を行ない、その時は貯蔵施設を誘致しないという決断をオーストラリア政府にさせることが出来たとのことでした。

オーストラリアについて話すカリーナさん

次に、タヒチの核実験被害者のローランドさんのスピーチがありました。ローランドさんからは力強く熱いメッセージをいただくことが出来ました。ローランドさんの住んでいるタヒチはフランス領です。

1966年から1996年までの間に太平洋・仏領ポリネシアのモルロア、ファンガタウファ両環礁にて、大気圏46回と地下147回、計193回の核実験が行われました。この事柄についてローランドさんははっきりと“罪である”と言っていました。大国の人たちが安全だというのであれば、なぜ自分たちの国で核実験を行わないのか。フランス・アメリカ・イギリスは太平洋を核実験のために使った、と。

そのような国が人権大国とみなされていることの矛盾を指摘していました。戦時中広島・長崎に原爆を落とされた日本がなぜ、原発を持っているのか。と私たちに向けて、はっきりを話す姿に、私も含め会場の多くの方々がうなずき、共感をしました。

力強く話すローランドさん

私自身、核実験の被害にかかわる方々の話を直接聞くのは初めてでした。2人のスピーチは心に突き刺さるものがあり、この問題は、普段の生活の中ではなかなか自分事に持っていくことは難しいものの、こうして知ったことを多くの人たちに伝えることはできるので、船内に戻っても多くの人たちに、自分たちの生活にも放射能という目に見えない物質の影響を受ける可能性があるということを伝えていきたいと思います。

サイドイベントでは次に三瀬さんが核廃絶に向けてスピーチを行い、そして田中さんが証言を行いました。短い時間の中で2人とも自分の想いをしっかりと話をしてくださり、会場にいる方々からも多くの拍手が起こりました。

スピーチする三瀬さん

証言を行なう田中さん

このイベントの後は、中満泉国連事務次長(軍縮担当上級代表)と面会しました。中満さんは、2017年5月、国連の軍縮部門のトップである軍縮担当上級代表に日本人女性として初めて就任された方です。今回は日本のNGOや被爆者団体との面会ということで、私たちの他、多くのNGOの方々と一緒に面会をすることが出来ました。

最初はみなさんとても緊張した面持ちで、中満さんがいらっしゃるまでは会議室が静まり返っていました。しかし中満さんがいらっしゃった際には、とても素敵な笑顔でお越しになり、緊張していた皆さんの表情がほぐれました。

「核兵器禁止条約を実行するために、核兵器を持っている国すべてが一緒に考えていくこと、そして、核軍縮に抜け道がないように作っていってほしい、加盟をすれば拘束力があるようにしてほしいということを、どのくらいの国が承認していくかわからないが、効力を持たせることが出来るのは市民社会の力である」といった話をしてくださいました。

もともと短い時間の予定だった面会ですが、話が盛り上がったこともありあっという間に感じられました。

中満さんと集合写真

その後、いよいよ国連で開催中の核兵器禁止条約の交渉会議の傍聴をしました。様々な国の方々やメディアが多く詰めかけ、条約の内容に注目が集まっていました。

その中で、NGOなど市民団体が発言できる時間となり、ピースボートより川崎哲が発言をしました。「まずは包括的な禁止と、核廃絶の義務を、明確に定めるべきだ。」と簡潔な条約案をまとめるように各国に働きかけました。

ピースボートとして発言する川崎

そして夜には、サイドイベントで発言したローランドさんやカリーナさんと夕食を共にしました。1日の最後にも様々な意見交換が行われ、お互いの国の話からたわいのない話まで、有意義な時間を過ごすことができました。

素敵な夕食

(ピースボート 野口香澄)

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この3日めの活動についても、多数のメディアに報道されています。

国連内サイドイベントについて
東京新聞:『「すべての核兵器禁止を」 国連演説で被爆者が訴え』(6/20)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017062002000257.html

時事通信:『被爆者らが制定呼び掛け=核禁止条約関連イベント-国連』(6/20)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062000725&g=soc  (Yahoo!ニュース、BIGLOBEニュース、gooニュースにも転載)

中国新聞:『被爆者が72年前語り条約締結訴え』(6/21)

http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=351286&comment_sub_id=0&category_id=112

ヨコハマ経済新聞:『被爆者らが制定呼び掛け』(6/20)

中満事務次長との面会
NHK(映像含):『被爆者ら 国連軍縮トップに“核禁止条約の橋渡しを”』(6/20)

時事通信:『「橋渡しになり声伝えたい」=中満国連次長、被爆者らと会談』(6/20)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062000406&g=soc

核兵器禁止条約交渉会議での発言

朝日新聞:『被爆者ら国連で演説 核兵器禁止条約の早期成立訴え』(6/20)

http://digital.asahi.com/articles/ASK6N23WYK6NUHBI005.html?iref=comtop_latestnews_02

NHK(映像含):『長崎の被爆者 核保有国や日本は核兵器禁止条約に参加を』(6/20)

また、ピースボートの公式ホームページにも、核兵器禁止条約交渉会議へのピースボートの取り組みについてまとめた記事をアップしております。
宜しければ、あわせてご覧ください。
▼核兵器禁止条約の制定に向けて-交渉会議にピースボートが参加しています

http://peaceboat.org/19899.html

(ピースボート 佐久間)

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