1.ヒバクシャ証言の航海

おりづるプロジェクト2018活動報告会 ~ICANノーベル平和賞受賞後の世界を航海して~

皆さん、こんにちは。

おりづるピースガイド1期生の橋本舞です。

 

去る9月26日に高田馬場にあるピースボートセンターとうきょうにて、第98回クルーズから帰航したおりづるプロジェクトメンバーが報告会を行ないました。

 まずはおりづるプロジェクト担当のピースボートスタッフの野口よりおりづるプロジェクトの説明をしたあと、実際に船に乗った参加者3名のうちの1人、広島で3歳の時に被爆した上田紘治さんと、船内でピースガイドを受講した2名(金子ゆか里さん、大山紗季さん)が登壇しました。

 

3名と対談形式で、クルーズ中に各国や船内で行なった証言会・継承活動として”おりづるピースガイド”について報告を行いました。 

今回乗船した参加者3名に共通する点は「記憶のないヒバクシャ」という点です。
原爆投下当時、産まれていたが、まだ1歳3歳で自分自身としての記憶がなかったり、被爆2世として原爆の悲惨さを語り継いでいます。

今回、第98回クルーズでは、核兵器禁止条約へのさらなる署名と批准を広めるために、また、各国の戦争被害者や核被害者と連携を強めることを目的に15ヶ国18都市にて被爆証言を行ないました。

上田さんは、そんな数ある証言会の中から印象的なことを話してくださいました。

核兵器禁止条約に賛成するイタリアやキューバでは「放射能の苦しみを理解し、核兵器廃絶に向けて頑張る同志がきた」と被爆者の訪問をとても喜んで受け入れてくれたこと。
パナマでは「次の署名式で署名できるように前向きに検討し準備を進めます」と返答してくれたこと。(2018927日の署名式ではまだ非加入)

 

EU圏では「個人的には核兵器禁止条約には賛成だが、国としてはまだ署名することは出来ない」との返答が多かったこと。

そんな中で上田さんは「すぐには署名出来ないと言った国の人々は、個人レベルでは核兵器の怖さや禁止を訴える気持ちに共感してくれた。でも『国レベルで考えたときにはまだ禁止に向けて動くことはできない』とみんな同じようなことを言っていた。また紙を見て返答されるときもあり、まるで口裏を合わせているように感じた。」と発言しました。


各地で行なった証言会のあとは、船内での活動報告に移りました。

今回の第98回クルーズでおりづるピースガイド(ピースガイドとは、後生、被爆証言を語り継げる次世代の人を育てる養成講座のことです)となった金子ゆか里さんと大山紗季さんより、なにがきっかけでピーズガイドになろうと思ったのか、船内ではどんなことを学んだのかを発表してもらいました。

金子ゆか里さんは、「船に乗る前から、人の心を変えてしまう戦争の残忍さや、戦争を無くすためにはなにが出来るのだろうと常に疑問に思っており、心の隅にひっかかっていました。また被爆証言の継承に何かしらの形で関われたらと思っていたので、船内で養成講座があると知り、受講することを決めました」と乗船前の気持ちを語ってくれました。

 

船内の養成講座では、全10回の講座を通して、原爆の基礎知識、乗船しているヒバクシャの証言を聞き原爆についての学びを深めていきます。
そして自分達が学んだことを船内で発表する機会も設けました。
今回は8月6日9日を洋上で過ごすクルーズだったため、
おりづるピースガイドと巡る86日と89日~いのちが大切にされる社会にするために~」と題し二日間発表会を行ないました。

どんな風にまとめれば受講していない人たちにわかりやすく原爆のことが伝わるのか、ピースガイド同士で案を出し合い、発表会を形作っていきました。

今回は、会場を「広島」「長崎」と見立て、ピースガイドが街中や遺構を疑似ガイドするという形になりました。

受講前から発表会までの気持ちの変化を紗季さんに伺いました。
「世界のことを知りたいと思いクルーズに乗船しました。世界のことを知っていくにつれて、自分の国のことについても知らないことが多く興味が沸き、戦争や原爆のことを語り継げる人になりたいと思いピーズガイドを受講しました。実際、原爆や被爆証言は自分の中でも受け入れ理解するのが難しかったです。それを人に伝えるということは、自分が理解しないとできないのでさらに難しいと実感しました。それでも来てくださった方は真剣に私の解説を聞いてくれました。そして自分の意見や相手の意見を話し合うことで新しい発見もありました。
ピースガイドの2人は下船してから一週間掛けて、広島と長崎に実際に学びにいきました。
船の中で学んでから行くと更に理解が深まったと、充実した一週間を過ごしたようです。

最後に被爆者の上田さんより地球一周の航海を通して感じたことを話してくれました。

「一市民団体のNGOでありながら、その国の首相や外務省など政府関係者に会うなんてすごいことです。

一つの目標として2020年までに条約を発効されるというのがあります。

賛成した国の半分もまだ署名していないため2020年までには難しいかも知れません。

それでも、日本に原爆が投下されてから73年でここまできました。

亡くなった方は語ることはできません、生きている私たちが語り継いで行かないといけないと改めて思いました。

 

 

 

日本国内だけの勉強ではなく世界を周り、その国の空気を感じながら過ごす船旅の中での学びだからこそ、短い日数でも、濃い学びになるのではないかと、今回の報告会を聞いた私は改めて思いました。

 

【編集後記・・・】

条約に反対する国に、核兵器の恐ろしさを理解し署名するように変えるにはまだまだ時間がかかりそうです。

しかし活動しなければ何も変わりません。先頭にたって活動している人たちは「条約が出来ただけでは意味がありません。ここからが核兵器廃絶に向けて本当の始まりなんです」とよく言っています。

始まりは市民レベルかも知れませんが、その流れが大きな風を生み、世界中が核兵器廃絶に向けて動き出すように、改めて私も、自分が出来る小さなところから行動していこうと気持ちを新たにしました。

 

おりづるピースガイド1期生 橋本舞

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