1.ヒバクシャ証言の航海

在韓被爆者との出会い2019.08.10@釜山

8月10日、私たちは韓国の釜山に寄港し、船内で被爆ピアノのコンサートを行いました。 在韓被爆者約45名と釜山の方々約100名が船を訪れました。

はじめに、ピースボート/ICAN国際運営委員の川崎哲より挨拶がありました。 市民間の交流が信頼を生み、そのつながりこそが平和への力になることを述べました。 また、ピースボートがこれまで行ってきた「おりづるプロジェクト(ヒバクシャ地球一周 証言の航海)」では様々な戦争被害者やヒバクシャとの交流を行ってきたことに加え、朝鮮半島の被爆者への支援をささやかながら行ってきたことに触れました。 またこうして釜山や陜川(ハプチョン)の被爆者の方々にお会いできたことの意義深さについて述べました。

被爆ピアノの持ち主であるHOPEプロジェクトの二口とみゑさんは、アメリカで生まれたピアノと河本明子さんがアメリカの手によって落とされた原爆によって殺されたことを述べ、こうして日本からとても近い場所である釜山の方々と被爆ピアノの音色に耳を傾けられることがなんと嬉しいことであるかと述べました。

HOPEプロジェクトの二口とみゑさん

韓国原爆被害者協会の釜山支部長でリュ・ビョンムンさんよりお言葉を頂きました。 韓国人の被爆について話すには1910年から続いた日本による植民地時代について知らなければならないことを念頭に置き、広島と長崎では合わせて10万人の朝鮮人が被爆し、5万人が亡くなり、生き残った5万人のうちの4万3千人が朝鮮半島に帰国し、7000人が日本に残ったといいます。

韓国原爆被害者協会の釜山支部長でリュ・ビョンムンさん

韓国に帰国した被爆者の多くは差別を恐れ、自身が被爆者であるということを明らかにしなかったといいます。 在韓被爆者がおかれてきた日本政府による不寛容な被爆者援護の現実を振り返るとともに、公正な援護を求めて日本の被爆者と共に長年闘ってきたことにも言及しました。 核のない平和な世界が実現することを心から願いますという切実なメッセージで締めくくられました。

そして俳優の斎藤とも子さんがスピーチと朗読をして下さいました。 とも子さんのお父さまは戦時中満州におり、9ヶ月かかって釜山に逃げ、そして無事日本に帰ることができました。途中でたくさんの朝鮮の人々に助けられてきたからこそ、今の自分が有ると涙ながらにあの時助けてくれた朝鮮半島の人々への感謝を述べました。 そして、「私の詠める詩はこれしか見当たらない」と栗原貞子さんの「ヒロシマというとき」を朗読されました。

斉藤とも子さん

そして韓国のヒロシマといわれる陜川出身のキム・オクソさんが原爆手帖の2章と3章を朗読されました。広島と長崎で被爆した朝鮮半島の被爆者らがその後どのような想いで生きてこられたのか、考えざるを得ませんでした

ピアニストであり在日3世の崔善愛さんは植民地支配は人々の心までを分断し、そして今ある分断の力を私たちがはねのけていかなければならないと語りました。そして、最後の曲である「別れの曲」を弾いて下さいました

ピアニストであり在日3世の崔善愛さん

16歳の時広島で被爆した三宅信雄さんは、幼い時からクラスメイトに朝鮮半島出身の子たちがいたことに触れ、8月6日同じ原爆を受け祖国に帰られた方々と長い間会えなかったと述べました。2度訪韓し、交流し戦後の苦労をゆっくりと聞くことができたと振り返りました。政治的な隔たりの中でも、民間人同士が仲良くしていけるようにこれからも努力を続けると締めくくりました。

16歳の時に広島で被爆した三宅さん

原爆投下から74年という年月を経て、こうして釜山という地で被爆者らが集い、亡き明子さんのピアノの音色に耳をかたむけるということの深い意味を肌で感じることのできる時間でした。 そのピアノを在日であるということにアイデンティティの揺らぎを抱えてきた崔善愛さんが奏で、朝鮮半島の方々に父が助けられていなかったら存在しなかった斎藤とも子さんが「ヒロシマというとき」を朗読し、陜川に生まれ育ち「なぜ多くの韓国人が日本の広島で被爆したのか」を見つめ続けてきたキム・オクソさんが手記である原爆手帖を朗読した、それぞれの視点や立場から発せられる強い想いが混じり合った空間だったと思います。

広島に生まれ育ち日本の加害とヒロシマの被害の間で「平和」とはなにかを考えてきた者として、また、朝鮮半島から無事祖母が引き揚げてこなければ存在しなかったものとして、本当に言葉にできないほど心震える瞬間に居合わせることができたと感じています

おりづるユース・安藤真子

<掲載メディア>

2019/08/10 ハンギョレ新聞
부산서 한국인 피폭 피해자 위로 콘서트 열려
http://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/905268.html

2019/08/11 YTN
한국 원폭피해자 위로한 ‘피폭 피아노’
https://www.ytn.co.kr/_ln/0115_201908111308367951

2019/08/11 YTN
한국 원폭피해자 위로한 ‘피폭 피아노’
https://www.ytn.co.kr/_ln/0115_201908111308367951

한국 원폭피해자 위로한 ‘피폭 피아노’
https://www.ytn.co.kr/_ln/0115_201908110207362068

2019/08/11 釜山日報
히로시마 피폭 피아노, 부산을 울리다
http://www.busan.com/view/busan/view.php?code=2019081119200647371

2019/08/11 ニュースフリーゾーン
피스보트, ‘히로시마 피폭 피아노, 한국 원폭피해자를 만나다’ 선상 콘서트 개최
http://www.newsfreezone.co.kr/news/articleView.html?idxno=123846

2019/08/11 西日本新聞
被爆ピアノ「平和」響かせ 釜山で船上演奏会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/534440/

2019/08/12 ハンギョレ新聞(日本語)
釜山で韓国人被爆者を慰労するピアノコンサート開催
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/34080.html


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