2019年_パナマ~米国、スペイン~ギリシャ(第102回ピースボート)

モナコでは高校生と出会い、大公に温かく迎えていただきました

11月7日、地中海を巡るヨーロッパ証言の旅のハイライト、モナコ公国を訪問しました。

モナコ公国は、バチカン市国に次ぐ世界で2番目に小さな国。リゾート、カジノなど、富裕層が暮らすイメージが強いですが、どんな人々が暮らしているのだろう、と興味も高まりました。公国では、「公(prince)」、つまり貴族が国家元首。この日は宮殿にて、その大公・アルベール2世との面会する予定です。

坂下さんはこの日のために、お母さまへの想いが詰まった着物をリメイクした洋服を持ってきていました。やわらかな正絹に、品の良いピンクで描かれた花。坂下さんを優しくつつみ、今日もお母さまが空から応援しているように思えました。

モンテカルロの街をバックに

午前中は、南仏全体をカバーする主要紙「ニース・マタン」によるインタビューに答えました。取材に訪れたロバートさんは、日本に住んだことがあり、広島・長崎も訪問している記者でした。お母さまの着物を身にまとっていることを知った記者は、坂下さんのお母さまへの気持ちに興味を持っていました。自分を救い、大変な思いをしながらも育ててくれたお母さんを喜ばせたいと、常に考えていた坂下さん。努力の末、ライターになり、よい記事を書くたびにお母さんが喜んでくれた、本を出版すると心から祝ってくれた、と話しました。記者としてのつながりを感じたに違いありません。

取材を受ける坂下さん

取材を終えると街中に向かって出発。

午後は、石畳の街の中心部に位置する、「アルベール1世」高校を訪ねました。ここでは約40名の生徒、先生を対象に証言を行いました。坂下さんが静かに話し始めると、生徒たちは引き寄せられるように身を乗り出し、当時の様子を想像しながら聞いているようでした。ここからは、ピースボートの共同代表・吉岡達也も加わり、私たちは被爆者の声が聞ける貴重な世代。だから、ぜひ活かしていこう、とメッセージを送りました。最後に、生徒のみなさんから「アルベール1世」高校の名誉訪問者の証としてメダルが授与されました。一昨年に広島に訪問し、 佐々木禎子 さんの千羽鶴のストーリーに心を打たれた、という女の子は、涙を流しながら坂下さんに感謝の気持ちを伝えていました。

語りかける坂下さん
真剣に耳を傾ける生徒たち
生徒たちと一緒に

高校を後にし歩いて5分、モナコ大公の待つ宮殿に到着しました。セキュリティーの観点から、人数は4名までということで、私(松村)は宮殿近くで待つことになりました。面会時間は1時間。大公はどんな人なのか、しっかりと話しを聞いて、理解してくれるだろうか・・・。坂下さんは少し緊張した面持ちでしたが、いつものように目を見て話せば、きっと分かってくれる、そんな気持ちで見送りました。日が沈み、冷たい雨が降り出しましたが、ちょうどその雨が上がる頃、面会を終えた坂下さんが宮殿から出てきました。

面会が行われた宮殿

大成功!面会は終始和やか、大公も常に好意的だった、とのことでした。

「私の証言を、ずっと目をみて、うなずき、ときに目に涙を浮かべながら聞いてくださった」というのが、坂下さんの第一声。核保有大国フランスが近くに存在する難しさもありますが、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のことも核兵器禁止条約にも理解してくれたそうです。大きなミッション達成、坂下さんも肩の荷が下り、ほっとした様子がうかがえました。

アルベール2世と一緒に

翌日、マルセイユ、モナコ2日間の充実したプログラムを担ってくれたICANフランスのジャンマリー・コリンさんと、ニースの街を歩きました。お住まいのリヨン、ICANフランスの会合が行われるパリ、本部のジュネーブ、各地での国際会議など、日々飛び回っているジャンマリーさんは、一年の半分を自宅外で過ごされるそうです。

ICANのベアトリス・フィン事務局長が、「原爆を一番よく知るのは被爆者のみなさん。落とされたときの色もにおいも威力も被害も、残された人の苦痛も悲しみもすべてを知っている」と言っていましたが、それは他のメンバーみんなの理解であると実感します。ジャンマリーさんも、坂下さんから学ぶ、謙虚で誠実な姿勢で対応してくださいました。心から感謝したいです。

ジャンマリーさんとニースの街を歩いて

文・写真:ピースボート 松村真澄

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