2019年_パナマ~米国、スペイン~ギリシャ(第102回ピースボート)

キプロスが核なき世界を推進するためにできること

ピレウスのイベントの後、チームは船と別れ、空路でキプロスへ向かいました。目指すはキプロス。トルコ系とギリシャ系住民の間で起きた衝突が隣国トルコを巻き込み大きな紛争に発展。45年経った今もなお、島を横断する中立地帯「グリーンライン」よって国連に加盟し日本を含む各国大使館が置かれた南キプロスとその統治が事実上及ばないトルコ系住民の住む北キプロスに分かれています。ピースボートは過去に何度もキプロスを訪れ、現地の市民団体を様々な交流を行ってきました。2013年にはおりづるプロジェクトで訪問し、紛争被害者らとの交流も行いました。

今回の訪問では、最大野党であり民主的選挙で政権を握った経験のある数少ない共産党であるAKEL(労働人民党)、キプロス平和協議会、そしてトルコ系とギリシャ系国民が共同で運営する環境保護団体・キプロスグリーンアクションらの事務所を訪問、キプロスが核なき世界を推進するためにできることについて話し合いを行いました。

1:AKEL(労働人民進歩党)本部にてミーティング

キプロス最初の面会は同国最大野党であるAKEL、労働人民進歩党の本部にて、同党のハリアス・パシアスさん書記、クリスティーナ・ニコラウ環境長、ベラ・ポリカルプ国際関係および欧州関係長らとの面会でした。暖かく迎えられたおりづるチーム、まずは坂下さんから被爆体験の証言があり、その後の会談で同党出席者は声を合わせて核兵器禁止条約を推進するピースボート とICANの動きを全面的に支持し、またキプロス政府もすぐに署名批准するべきだと述べました。

会談後の帰り際、ポリカルプ国際関係部長は、自身の母親が10歳の時、アウシュビッツに送られ唯一人生き残り、91歳で今年の6月に亡くなられたこと、そしてそれにより国のために尽力することを決意し人生を政治活動に捧げてきたことを坂下さんに告げました。彼女と坂下さんはともに残酷な戦争を生き抜いた経験から、それぞれの活動に使命を感じているという点で心の通う場面がありました。

2:キプロス平和評議会

次の面会はキプロス評議会。AKELでお世話になった前述のハリアス・パシアス書記と、ジャーナリストでキプロス共産党新聞記者のディミトリオス・パルミリスさんらと評議会事務所にて面会をしました。坂下さんの証言を聞いた後、評議会メンバーは核兵器のみならず原子力にも反対であり、このふたつの問題を関連づけて考えることが重要であると語りました。核兵器禁止条約の実現のためにキプロスの署名・批准を訴える坂下さんは、同時に日本が広島・長崎の過去を持ち世界唯一の被爆国でありながら核兵器禁止条約の署名さえしていないことに深く失望している、日本は過ちが繰り返されないための努力を怠っていると意見を述べました。

3:キプロス・グリーンアクション

ふたつの面会のあった南キプロスの首都・ニコシアを後にし、次の会場があるグリーンラインへ。ここは現在も国連平和維持軍が監視を続ける緩衝地帯で、市民団体がよく利用する「協力の家(Home for Cooperation)」という施設に向かいました。ここが次の会場に指定された理由は、今までの二つの団体がギリシャ地区である南キプロス内にあり、南キプロスの市民のみで運営されているのに対し、次の面会団体であるキプロス・グリーンアクションは南北キプロス(つまりギリシャ系とトルコ系双方)が加盟する環境保護団体であるためです。

ここでドーガン・サヒール・キプロス・グリーンアクション書記長、そして再合流したAKELのクリスティーナ・ニコラウ環境部長らと面会しました。坂下さんの被爆証言および核兵器禁止条約賛同への呼びかけに対し、サヒール書記長は団体が核兵器禁止条約を強く支持すると述べ、また緊張が続くキプロスの政治情勢を踏まえ、ピースボートからの平和的支援を引き続き行ってくれるよう述べました。

キプロスで面会した3団体は核兵器禁止条約やICANの活動についての認識がまだ浅く、この訪問で今後の関係づくりの土台となるような交流ができました。またホロコーストの生還者の家族と偶然にも絆が生まれ、戦争の悲惨さを語り継ぐこと、そしてそれを個人でできる平和構築への原動力にすることの大切さについて改めて考えさせられるような旅でした。

文・写真:ピースボート 松村真澄

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