1.ヒバクシャ証言の航海

「加害と被害の受け止め方‐シンガポール‐」

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*第8回おりづるプロジェクトが始まり、はや10日。初めての寄港地プログラムが行われました。今後、寄港地プログラム報告を船から直接お送りします。
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記録ドキュメンタリー映像:『I Was Her Age /過去と今の対話』

2015年4月21日(火) 鈴木慧南

おりづるプロジェクトとしても、私個人としても、初めての寄港地であるシンガポールです。久しぶりに降り立った陸に、懐かしい感じがしました。
背の高いビル、広大な面積を持っている植物園、色とりどりの建物、中国系のマンション、南国をイメージするビーチ、スカーフを被っている人々など。多民族国家を思わせる建物や人々が目に入り、「シンガポール」は表現するのが難しい国という印象を受けました。

マーライオンで集合写真

マーライオン前にて集合写真

着いてからバスに乗り込み、最初に訪れたのはシンガポール国立博物館です。シンガポール誕生の歴史から、現在に至るまで、どのような道のりを歩んで来たのかが、さまざまな展示の中に書かれてありました。展示物が一つのブースのようになっており、項目ごとに背景の色が変わったり、音楽が変わったりと、その出来事を印象付けるような構成になっていたのが興味深かったです。

シンガポール国立博物館

シンガポール国立博物館の様子

ここでの一番のメインはやはり、戦争時のシンガポールについてでしょう。英国の植民地になったあと、日本に侵略されていた時代である「昭南島」時代。あまり強烈な写真はありませんでしたが、日本がシンガポールに対して、アジアの人々に対して、どれだけ悲惨な行為を行い、日本文化を押し付け、彼らをコントロールしようとしていたかが垣間見えました。日本の歴史教育には全く出てこない事実です。高校までの歴史教育は一体何の意味があったのか疑問でしかありません。日本向けの歴史を学んでも、日本政府の言う「グローバル人材」を育成できるとは到底思えません。

その後、日本人会史蹟資料部の方々と意見交換を行いました。そこで、シンガポールの人々が「日本の時代よりも英国に支配されていた時代のほうがマシだった」という意見を改めて聞き、言葉にできない気持ちを抱えました。
おりづるプロジェクトからは、広島出身の廣中正樹さんが、自身の体験を紙芝居にしたものを15分という短い時間で語りました。当時5歳だった廣中さんが、原子爆弾によって大好きなお父さんと別れることになった悲しい体験を涙ながらに語っておられました。大切な人を、大好きな人を、失うということがどれだけ辛く悲しいことなのか、きっとそれは私の想像を遥かに超えるものなのでしょう。それでも、私はできるだけその「痛み」に寄り添って生きていきたいと強く思います。

日本人会での意見交換の後は、旧フォード工場を訪れました。ここは1942年にマレー半島からシンガポールに侵攻してきた日本軍が英軍を追い詰め、無条件降伏文書に署名させたところです。自動車工場→日本軍戦車の部品製造工場→自動車工場の移り変わりを経てきた建物をそのままに、現在では昭南島時代の戦争記念館となっています。国立博物館と異なり、こちらは日本人の残虐な行為の数々が、写真や絵で展示されており、思わず目を背けたくなるようなものばかりでした。同じ血筋を受け継いでいる人間として、申し訳ない気持ちでした。参加したヒバクシャの方々も「あんな写真を見たら、自分の体験をどう伝えたらいいのか分からない。私たちは本当にひどいことを他民族にしたけれど、私たちが原爆によって同じように苦しい思いをしたことも事実だから。」と、自身の胸の葛藤を教えてくれました。

何度も述べていますが、私は「戦争」を知りません。「原爆」も知りません。しかし、だからといって、それを「知らない」と言って終わらせてしまうのは、残酷な行為だと思います。私たちは当事者ではないけれど、歴史に学び、未来を築く責任があります。目を背けるのではなく、真実を見極め、胸の葛藤を超えて、伝え続ける必要があると思います。初めてのシンガポールでしたが、とても濃密な経験ができました。次は、ゆっくりシンガポール文化を吸収するために訪れたいと思います。

船内での証言会
船内で行われた証言会には80名以上の方が参加してくださいました

三宅信雄さんによる証言

三宅信雄さんによる証言
 
(文:おりづるユース 鈴木慧南 写真:おりづるユース 岩本麻奈未)

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