2019年_パナマ~米国、スペイン~ギリシャ(第102回ピースボート)

カタルーニャ民謡「鳥の歌」とともに響いた原爆の詩

11月5日は、第102回ピースボート「地球一周の船旅」航海中のオーシャンドリーム号がバルセロナに寄港。現地パートナーである「Mundo sin Guerra y Violencia(戦争と暴力のない世界)」と共催で、船上イベントを行いました。内容は、坂下さんのメッセージに続き、ドキュメンタリー「核兵器の終わりの始まり」 https://www.youtube.com/watch?v=OKOo7xm-YEs を上映するというもの。現地から約80名が参加しました。

船内イベントの 参加者の様子

初めに、坂下さんによるメッセージが送られました。「多くの人々が、逃げ場のない無惨な死を遂げたあの日。みなさんに詩で伝えしたいと思います」。カタルーニャ民謡「鳥の歌」のチェロ生演奏にのせて、「その朝のいのち」を朗読しました。この演奏と朗読は、スペイン内戦という歴史の記憶がまだ鮮明に残るカタルーニャの人々の心を、深く感動させました。https://youtu.be/fb3BBXZsQJc

朗読する坂下さん

ドキュメンタリー上映後、バルセロナ市の「世界の正義と国際連帯部」の部長、ダビ・ジスタルさんが、市長に代わって発言。「いま、バルセロナは大変な局面を迎えているけれど、こういうときこそ世界とつながり連帯すべき」と述べた後、自治体としても核兵器禁止条約批准に向けて、スペイン政府に働きかけをしていくと続けました。現在ヨーロッパで行われている世界行進第2弾のコーディネーターであるラファエル・デラルビアさんは、「来年の広島・長崎原爆投下75年は節目の年となる。ぜひ条約を発効させよう」と呼びかけました。坂下さんは感謝とともに、折り鶴のマークの入った日本被団協のバッジを渡しました。

演説するダビ・ジスタルさん
ラファエルさんにバッジをつける坂下さん

イベント終了後、別のプロジェクトで船旅に参加していたチュービンゲン大学の若者たちと交流の時間を持ちました。「若者たちには分かりやすく、イメージしやすい方法で証言したい」とおっしゃる坂下さん。お母様から聞いた当時の惨状、そこから立ち上がった家族や広島のひとびとの様子を説明しました。そして優しく、「周りの人たちにもぜひ伝えていってね」と語りかけました。涙を浮かべたユリアさんは、「この経験を話すのはつらいと思う、でも、私たちの世代の多くが、この話をきくべき」とコメントしました。

チュービンゲンの学生たちと

坂下さんとパブロ・カザルス

カザルスについて語る坂下さん。記念館に向かう列車で

船上イベントの2日前、坂下さんが唯一行きたいとおっしゃったのが「パブロ・カザルス記念館」でした。カザルスはカタルーニャ地方を代表する音楽家。スペイン内戦中に亡命、その後世界に平和を訴え続けたチェリストです。
数年前から、胸に秘めた原爆体験と向き合った詩をつくりはじめた坂下さん。その詩に曲をつけたのが、旧知の音楽家・平井丈一郎さんでした。平井さんは、カザルス本人に師事し「後継者」として認められた世界的なチェリストであり、その話しを聞いていた坂下さんは、予てからカザルスに想いを寄せていました。

「おまえは人を殺すためにも、人から殺されるためにも生まれてきたのではない。この国から逃げなさい 」

母親からこの言葉をかけられ、亡命を決めたカザルス。苦悩を繰り返し、1945年終戦時から故郷を思って弾き始めたのが、カタルーニャ民謡「鳥の歌」でした。

カタルーニャの平和の象徴であるこの曲にのせての今回の朗読は、いつまでも、聞いた人々の心に残ることでしょう。

カザルスの生涯をたどる

文・写真:ピースボート 松村真澄

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