5.おりづる全国証言会

おりづる全国証言会⑥新島の子どもたちと考える戦争と平和、そして命

少し時間が経ってしまいましたが、9月の連休中(6日・7日)に行ったおりづる全国証言会第6弾について報告します。
今回証言会が行われたのはなんと新島です。新島村在住の元ピースボートスタッフの伊藤雅恵さんが「ぜひ新島で証言会をやりたい!」と新島小学校と新島中学校に掛け合ってくれ、小学校では4~6年生向けの平和学習の一環として、中学校では保護者や地域の住民向けの公開授業日(9月7日[土])に行われた道徳地区公開講座として、それぞれ証言会が実現しました。証言者は田中煕巳さん。長崎で被爆し、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)で長く活動されてきた方です。田中煕巳さんには2泊3日の行程で新島を訪れてもらい、ピースボートからはスタッフの小鍋匠が同行しました。

小学校での証言会は授業一コマ45分間ということで、かなり時間が限られます。そこで今回は、田中さんの証言が少しでも児童にとって理解しやすくなるようにと、伊藤さんが事前学習のために同校を訪れました。この事前学習では、担任の先生から「平和って何だろう?」を導入として、児童に「平和」と聞いて思い浮かぶことを挙げてもらいました。「戦争がないこと」というある児童の答えをさらに深め、「戦争って何だろう?」ということについても考えました。それらを踏まえ、伊藤さんは戦時中に日本が経験したことのひとつである広島、長崎での原爆投下、原爆とは何か、どんな被害があったのかということ、そしてこれだけの被害をもたらした原爆と同じ兵器である核兵器が世界中に15000発くらい存在すること、そしてその核兵器の中には広島や長崎の1000倍もの威力があるものがあるということなどを、スライドや映像を使いながら話しました。またこれに合わせてピースボートが所有する『ミニミニ原爆展』も開催しました。これは広島、長崎の22枚の原爆ポスターから成るもので、これを会場の外の廊下に展示し、原爆の威力や被害について視覚的にも理解してもらうようにしました。

小学校での事前学習会の様子

9月6日(金)の田中さんの証言は、「どうやったら戦争がなく、みんなが仲良く、平和な世の中になると思う?」という質問から始まりました。その後田中さんは、中学生だった13歳の時に爆心地から3.2kmの長崎の自宅で被爆した時のことを話してくれました。地図を見ながら当時田中さんがいた場所や街の様子などを説明し、親戚の多くが爆心地のすぐ近くにいたこと、3日後にやっと親戚を探しに爆心地付近に入った時の様子や、家屋がほとんど崩壊し焼き尽くされていたために何も目印がなく、長い間歩き回りやっとのことで親戚を見つけたこと、やっと見つけたけれど、5人の親戚を亡くしたことなどを話してくれました。また、現在、世界中には14000発以上の核兵器があることや、それを禁止する決まりができたこと、そのために一生懸命に活動をしていることを伝えてくれました。子どもたちが田中さんの体験を聞き、今の核兵器の現状を知ることで、どういう世界を望むのかを考えるきっかけになったと思います。証言の最後に田中さんは、国と国が、お互い憎しみ合うのではなく、仲良くしていくことで戦争は起こらないはず、だから、みんなも友だちと仲良くしてください、というメッセージを伝えてくれました。

小学校での様子

小学校での証言会に続く翌9月7日(土)は、新島中学校の1年生から3年生の全校生徒約50名を対象に証言会を行いました。参加してくれた中学生はこの日、証言会の前に、道徳の授業として「命」をテーマにマザーテレサなどについて学んでいました。また、証言会の会場の壁には、原子爆弾やきのこ雲、広島・長崎の被災状況などがわかる原爆パネルを展示しました。

証言会の冒頭に、導入として「原爆(核兵器)って何だろう?」と「今、何が問題なのか?(なぜ原爆投下から70年以上経っても証言を行っているのか)」の2つのテーマを軸にピースボートの小鍋が説明しました。田中さんの証言にでてくる言葉のなかで、事前に説明しておいた方がより理解が深まるであろうものを選定し、導入の部分に盛り込みました。また、原爆とはどのようなものかを知ってもらい、その後にそこに実際に人々が住んでいて、暮らしや人生があったということを理解してもらうための導入でもありました。中学校での証言は、当時生徒らと同じ年齢だった田中さんがどんなことを考えながら戦時中を過ごしていたかの話から始まりました。中学生向けにより具体的だった田中さんの証言は、淡々とありながら、絵だけでは伝わりきらないリアリティがありました。友達、家族、親戚、近所の知りあい、そこにいた誰もに、救えなかった誰かがいるという現実が伝わってきました。田中さんが被爆した年齢と証言を聞いていた生徒の年齢が近かったこともあり、生徒らはしっかりと証言に耳を傾けてくれました。また、親を失うより子を失うことの方が悲しいという言葉は、保護者の方にも強烈に響いたのではないかと思います。

中学校の証言会の様子

今回は、普段はなかなか証言を届けられないところに証言を届けることができ、まさにおりづる全国証言会のめざすところにぴったりな開催地となったのではないかと思います。参加してくれた児童・生徒は、ピースボートのおりづるプロジェクトの事も知り、日本の経験を世界に伝えていくということについても考えた子が多かったようでした。田中さんには体力的にも決して楽ではない行程でのお願いとなりましたが、今回の証言の旅を快諾してくださったことを改めてお礼申し上げます。

文責:伊藤雅恵、小鍋匠、畠山澄子

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