1.ヒバクシャ証言の航海

3月28日、スリランカで証言会を行いました!

こんにちは。おりづるユース特使の福岡奈織です。

洋上生活もそろそろ三週間が経とうとしています。
3月28日には、「ほほえみの国」スリランカのコロンボに行ってきました!すごく暑かったです。

ほほえみの国 スリランカ

コロンボは、スリランカの中でもとても大きな都市です。
スリランカは2009年まで内戦があり、とても戦争の記憶が新しい国であるので、わたしたちも船内で事前にスリランカについて勉強してから証言会にのぞみました。

スリランカで人権問題に取り組むマリオ・ゴメス氏(弁護士)に
スリランカの内戦の歴史について教えていただきました

今回、証言会を企画してくださったのは、南アジア全体の安全保障の研究や提言を行っている「地域戦略研究センター(RCSS)」という団体です。ピースボートとRCSSは、世界的なNGOネットワーク「武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)」の中で共に活動しており、インド・パキスタンの核競争の停止や南アジア非核地帯などを提言してきました。

会場の様子

証言会には、政府関係者、外交官、各界の専門家、知識人、ジャーナリスト、学生など30人ほど集まってくださいました。会全体の司会・進行は、スリランカ出身の元国連事務次長のジャヤンタ・ダナパラ・パグウォッシュ氏です。

ジャヤンタ・ダナパラ・パグウォッシュ氏
1995年にはNPT再検討会議の議長を務めています

今回証言したのは、広島で15歳の時に被爆した坂田尚也さん。被爆当時の様子や、その後の人生についてお話ししたうえで、「お互いに手をとりあって核兵器や戦争のない世界を一緒につくりましょう」というメッセージを伝えました。

証言をする坂田尚也さん

みなさん真剣に話を聞いてくれていました。
今回、わたしは坂田さんの証言の前後に英語でお話ししました。証言の前には原爆の被害の概要について、証言の後にはユースが被爆者の皆さんと共に活動する意義についてスピーチしました(後半のスピーチ前文を文末に掲載します)。

英語でスピーチする福岡奈織さん

証言後の1時間ほど行った質疑応答の時間には、会場から活発に質問が出ました。

「日本がアメリカの核の傘のしたにあることや、核抑止力によって戦争が防がれていることについて、どう思うか?」
「日本は広島と長崎が原爆を落とされていることに加えて、福島の原発の事故もあったのにもかかわらず、原発をもっているのはなぜか?」

日本人とスリランカ人とダブルであるという学生さん
日本語で質問していただきました

一つ一つの質問に被爆者として思うことを丁寧に答えていきました

証言会が終わってからも、学生のみなさんと話をすることができて有意義な時間でした。

寄港地での証言会は今回が2回目でしたが、やはり被爆者の生の声で当時の様子を証言することは世界で求められているし、多くの人に訴えかける大きな力を持っているように感じています。

集合写真

次は、ヨルダンでの証言会になりますが、おりづるプロジェクトのみんなでしっかり準備をしていきたいと思います!

(おりづるユース特使 福岡奈織)

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※坂田尚也さんの証言のあとに行った福岡さんのスピーチ全文(日本語訳)を掲載します。

【福岡奈織さんスピーチ】
「私がこうしてユース特使として被爆者と旅をしようと思った理由は、被爆者の声が忘れられてしまうことに焦りを覚えたからです。日本で暮らしていても、原子爆弾が広島と長崎に投下されたことは学校でも教えられますが、被害の実相というのはなかなか伝わっていない印象を受けます。

核兵器が人類に対してはじめて使われた広島出身の若者として、被爆者の声をきき、核兵器の実相を知らなければならないと思っています。そして、次の世代へと語り継いでいかなくてはいけないと思っています。

今、被爆者の平均年齢は78歳を超えています。私たちの世代は、被爆者の声を聴くことのできる最後の世代です。私たちが引き継がなければ、彼らの声が忘れられてしまうかもしれません。そうして、もう一度同じ惨禍を繰り返してしまうことが、私には耐えられません。

しかし、世界では、核兵器の開発のために核実験が行われ、それによって被爆をしている人たちもいます。数十年も前に行われた核実験によって、今でも身体的・精神的な苦痛を抱えながら生きている人たちがいます。核兵器を使うことでどんな影響があるかということは、人体への影響や、被害の規模など、数字で表せるものだけでは語れません。亡くなった人々には、家族があり、友達があり、そこでの暮らしがありました。愛する人がいて、愛する人を亡くしています。たった一発の爆弾が、街と、人々のすべてを奪います。このようなことは、二度とあってはいけません。
今、核兵器の非人道性に対して関心が高まっています。そして、昨月のメキシコでの「核兵器の非人道性に関する国際会議」では、核兵器廃絶の国際的な動きへの第一歩が見られたように思います。メキシコでの国際会議の中でも、被爆者の証言セッションが大きな影響力をもっていたと聞いています。

核兵器廃絶化への流れは、市民の声がつながって、今実現しようとしています。核兵器の問題は、核保有国だけの問題ではなく、非核保有国や核の傘下の国にも関係のあることとして、多くの市民、多くの国家が手を結んでいるため、いま大きな動きが生まれています。

世界に核兵器があること、世界に戦争があることは、みんなの問題です。私たち市民は、1人1人の活動は微力だけれども、それぞれに、それぞれの活動を続けていくこと、そして多くの人と連帯して行動にうつしていくことに、大きな意義があるはずです。
原子爆弾は、過去の歴史としてとどまり、過去の出来事として忘れられてはいけません。今だからこそ、わたしたちが被爆者の証言を聞き、過去を知り、語り継いでいく必要があります。

被爆者のみなさんが、思い出すにも辛いことをこうして語り継いでいることには、大きな理由があると感じています。その理由は、もう二度とこのような惨事を繰り返してほしくないと願っているということです。私は彼らから、自分たちの子どもや孫たちに、同じような悲しい経験はさせてはいけないという、経験者としての責任感を感じています。そして、その想いを、たくさんの人に届けたいと思います。

わたしたちは、核兵器が使われることによって起こる被害の実相を、今、被爆者から聞き、後世に伝え、同じ悲劇を繰り返さないように訴えていかなくてはなりません。そして、核兵器の使われる脅威を減らすためにも、戦争も繰り返してはならないと訴えていきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。」

菩提樹

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