1.ヒバクシャ証言の航海

“家族”で考える継承のカタチ〜しーちゃんと平和〜

第8回「証言の航海」の船内で、被爆者と出会った“おりづるパートナー”が、被爆者と家族のように関わりながら作った継承のカタチを紹介します。
自身も被爆3世であるピースボートスタッフ、吉村有以さんからのレポートです。
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こんにちは、ピースボートの吉村有以です。
7月7日、クルーズ終盤の船内にて
「おりづる七夕企画 しーちゃんと平和」という企画を作り、平和への思いを三田村シズ子さんとともに考えました。

船内では、<おりづる家族>という企画を行っています。

被爆者の皆さんをおじいちゃん・おばあちゃんに見立て、3世代の家族を募りました。戦争を知らない、1945年以降生まれのシニア世代が“子”に。そして40歳以下の若者世代が“孫”になり、被爆者とより身近に、家族のように食事をしたり、お話をしたりと繋がっています。

三田村さんには4名の「娘」、そして4名のかわいい「孫」ができました。「しーちゃんと平和」の企画は、「孫」たちが共に作り上げました。

おりづる家族の孫の一人である、私・吉村は母方の祖父と父方の祖母を被爆者に持つ3世です。これまでの船内では全くおりづるプロジェクトに関わることができずいたところ、この企画を一緒に作ろう!というお話をいただき、ぜひやりたいとお願いしました。

私自身は被爆3世としてどんな風に生きていくのかはまだ模索する中、おりづるプロジェクトとは何らかの形で関わってみたいと思っていました。しかも母方・父方それぞれに被爆のストーリーがあり、小さい頃から被爆体験や戦争について、小さい頃から何度も何度も話を直接聞いてきました。しかし、そんな体験をしている若者がそう多くはない、と船内では気づかされました。

この企画を行ったのは、クルーズ後半に向けて、そんな自分の立場や経験もシェアしていきたい、という想いが沸いていた頃でした。

三田村さんと初めてのミーティングは2時間以上に及び、尽きない話は三田村さんの日常送ってきた生活の話でした。

わずか3歳8ヶ月で被爆した三田村さんも、看護師になりたいという夢を持ち、恋愛をし、結婚を夢見る。そんな、私と変わらない女の子・女性だったと知りました。私自身が被爆者を特別視していたのかもしれません。

さて、企画の内容は、しーちゃんが過ごしてきた日常を私たち孫の年齢と重ね合わせ、人生を見ていくというもの。

しーちゃんは長崎で生まれ、3歳で被爆し、7歳で看護師になると決めました。孫である小島さんは7歳で漫画家になりたいと思っていました。

16歳で看護学校に行くと決めたしーちゃんと、16歳で真面目な高校生だった田端さん。

しーちゃんは24歳で結婚、26歳で看護婦長さんになります。和田さんは26歳でピースボートに乗船します。

旦那さんと一緒に乗船しているしーちゃん。少し照れながらも、旦那さんを紹介してくれました。

3歳で被爆したしーちゃんは、若い頃は自身を被爆者として意識してこなかったといいます。

しかし、そんなしーちゃんの人生は“放射能という悪魔”によって、一変。2人のお姉さん・実の娘さん・姪っ子さんが亡くなっていくという悲しみが続くのです。

なぜ、当たり前の幸せが、奪われなければならなかったのか・・・?しーちゃんと私たちの人生は今交わりました。

過去を振り返っても、学ぶことや感じることはたくさんありますが、こうして一緒に肩を並べることで、被爆者は特別な存在だけど、特別な存在ではないことに気づくことができました。

一緒にご飯を食べ、一緒に過ごせる船内で出会った私たちはここから、原爆投下そしてその被害を身近に感じることができるのだと改めて感じる良い時間でした。
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三田村さんとおりづるパートナーの繋がりは、他にも紙芝居を一緒に作ったり、核について知るためのクイズを作ったり、一緒に「長崎ぶらぶら節」を踊ったり、平和について語ったり・・・と、本当の家族のように親しい間柄でした。

三田村さんは、若者と語った平和への思いをまとめて、今後の継承活動に生かしていくということです。
これからも温かい三田村さんの思いがもっと広がりますように!

(ピースボート 中田智子)

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