3.核廃絶へのいろいろな動き

核兵器の全面的廃絶のための国際デー記念イベント

みなさん、こんにちは。

ピースボートスタッフであり、おりづるピースガイドの橋本舞です。

今回は9月23日に国連大学で行われたイベント

「核兵器の全面的廃絶のための国際デー記念イベント

     核なき世界に向けて〜転換点で考える」

に行ってきました。

この国際デーを記念したイベントは今回が3回目。

核軍縮をイメージした国連平和ポスターの展示

今年は「核兵器禁止条約採択」という節目の年となり、国連で9月20日から核兵器禁止条約の署名も始まったということもあり約140名の方にご参加頂きました。

まず前半部分はNPOガイア・イニシアティブ代表の野中ともよさんに「いのちに勝る正義なし」と題した基調講演をしていただきました。

笑顔の素敵な方でした。

その中でも印象に残っているのは、

「相手がいるからバランスを保っていられる」という言葉でした。

陰と陽、空と大地、異性が好き同性が好き、賛成派と反対派、色々な違いがあります。

その違いは、正中線できっちりと分けられたものではなく、陰陽論のように「自分の頭が相手のしっぽを追いかける」ようなもの。

様々な違いはあるけれど「好きな人と一緒にいたい、相手を守りたい」と思うことは自分たちの命に組み込まれた想い。

一つの命がいかに大切か、それをどう守るかをもう一度考えてほしい、と仰いました。

相手と比べることができるのも一つの幸せで、相手と違うときこそ討議ではなく対話をもって話し合うべき、そして大切な命を守るべく、強いものに巻かれるのではなく「しっかりと言葉には出来ないけど、それは良くないよ」という意見をもつことの大切さを感じました。

力強く話をされる野中さん

後半部分は、元国連事務次長(軍縮担当)の阿部信泰さんによる「核兵器をめぐる世界情勢」。核兵器誕生から今に至るまでの簡単な歴史や、核兵器禁止条約が採択された今後はどのように日本は振る舞っていくべきなのかをお話し頂きました。

元国連核軍縮大使の阿部さん

「戦争被爆国」として、核兵器禁止の先頭に立つべきである。

そして、核兵器による抑止力を唱える時代はもう終わりがくる。
核保有国が反対しようとも、世界の大多数が賛成している条約を破れば、国際的な批判を浴びることはあきらか。

そして、相手に核兵器を使えば、自分にも返ってくるしその代償の大きさを皆は知っている、と仰いました。

そしてパネリストを招いてのパネルディスカッションです。

外務省 軍縮不拡散・科学部 審議官である川崎方哲さん、日本原水爆被害者団体協議会事務局次長の和田征子さん、明治学院大学で元ユース非核特使である鈴木慧南さん、そして進行役には国連大学広報センター所長の根本かおるさん、そして、コメンテーターには元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤さんが招かれました。

左から川崎さん・和田さん・鈴木さん

1歳10ヶ月で被爆した、日本原水爆被害者団体協議会事務局の

和田征子さんは、なぜ被爆者が語り継ぐのかを教えて下さいました。

「被爆者が当時のことを思い出して話すのは、考えている以上にしんどくて負担がかかる。それでも語り継ぐのは、自分たちと同じ思いを二度としてほしくないから。

それは自分達の孫だけではなく、元は敵国として戦争した全世界の人に対して想っている」

その言葉からは、相手が自分に対してどう思っていても、核兵器によるあの苦しみは、二度と誰にも味わってほしくないという想いが伝わってきました。

和田さんの一言一言が心に響きます。

ピースボート94回クルーズに、非核特使ユースとして乗船した鈴木慧南さんは
「アジアの方々との歴史の認識の違いから『なぜ自分たちの加害の部分は認めずに、被害の部分ばかり語るのか』と言われることがあった。ただ核兵器の怖さを伝えたいだけなのに、なぜ被爆者の人がこんなことを言われて傷つかなければいけないのか」と葛藤した、という船内での出来事を交え発言しました。

船内での出来事を話す鈴木慧南さん


その後も質疑応答でも、時間を超過するほどたくさんのご意見、質問を頂き、とても有意義な時間となりました。

そんな質問の中に「電磁パルス爆弾への危険性を、もっと詳しく政府は国民へ説明するべきではないか」との内容がありました。
「電磁パルス爆弾」とは、爆弾の威力による破壊を目的としたものではなく、強力な電磁波により電波や電力などの通信機能を麻痺させることを目的とした爆弾です。
直接的な被害としては、通信被害から国内外問わず、連絡が遮断され物資の運搬が出来なくなります。
また電力供給もできなくなるため、食材の保管などにも影響を及ぼし、最終的には飢餓が起こると想定されています。
そんな爆弾が開発されていると情報が入り、被害まで想定できているのに、なぜ政府はもっと危機感を訴えかけないのか。

その質問に対し、コメンテーターとして登壇されていた堀潤さんは
「政府側だけでなく、情報を発信していくメディアの人間として、しっかり情報を仕入れてまとめ、発信していきます」と付け加えて返答されていました。

堀潤さんは、登壇者皆さんの意見をしっかりと聞き、アナウンサーとしての鋭い視点から物事を判断し、共感をされていました。
そんな姿を拝見し、真剣ゆえに熱くなり過ぎがちな討論を
冷静に、そして的確に意見できる人がいることによって、対話が成立できるのだなと学びました。


「あの日、名前も分からずに死者の数にだけ数えられた人々のためにも、語ることが、核兵器使用の抑止力になると信じて語り続けてきた。
今回、核兵器禁止条約の採択は、被爆証言をしてきた人々にとって錆び付いた重い重い扉がやっと少し開いた。」
和田さんがすべてのヒバクシャの想いを代弁してくださいました。



争い合っていた人々の孫世代は、世界中の人と繋がり仲良くなれる時代に生きています。
戦争が生んだ憎しみや悲しみは簡単に消えるものではありません。
それでもこれからの時代は、それぞれの歴史を知り、違いを受け止め、二度と非人道的な兵器が使われることのないよう、今こそ手を取り合い対話する時がきたのではないでしょうか。

多くの方がご参加下さいました。

編集後記:

私自身、2017年4月から7月のピースボートの船旅の後半から、ピースガイドとしておりづるプロジェクトに関わりました。そして、鈴木さんが指摘されたアジアの方からの言葉を聞いて心が痛みました。
なぜ、傷ついてる人を攻撃する言葉を言うの?
加害の部分があれば、どんな非道なことをされても黙っていないといけないの?
そんな疑問の数々が浮かびました。

その言葉を聞いた時、被爆者の一人は「ただ核の怖さを伝えたいだけだったのに、そんなことを言われるとは思いもしなかった。こんな思いをしなきゃいけないなんて、証言するのが怖くなる」と仰いました。
その言葉を発言したアジアの方も、本当は仲良くなってもっと話が聞きたかったはず。
でも、その気持ちをどう伝えていいか分からずに出た言葉は、相手を傷つけ、溝を深くする言葉でした。

たくさんの疑問があとからあとから出てきました。 

その疑問について知り、相手の気持ちや知っていることをより学ぶことが国による認識の違いを埋めていく一歩になるのかなと感じました。

ピースガイド:橋本舞

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