3月20日スペイン寄港に続き、私たちは3月21日にフランスのマルセイユに寄港しました。今回はおりづるプロジェクトの参加被爆者だけでなく、ピースボートの一般参加者もともにツアーに参加しました。
マルセイユから車で約1時間ほど走ったところにあるのが、エコハウス・ルバタスセンター。ここでは、太陽光などを利用して自家発電をしています。また、食事もすべてオーガニックでここで作られたもの。環境に付加をかけずに生活することを提案しています。普段は近くに住む子どもたちや地域の人々を招いて、食や平和に関する教育なども行っているそうです。ここには毎年、世界各地からボランティアが訪れ、ここの活動のお手伝いをしているとのこと。今回の私たちの訪問をスタッフ全員で歓迎してくださいました。
今回の目的は原発をテーマにした集会への参加。参加者はピースボート参加者も含め40名ほど。参加者のなかには緑の党の方や、この地域の議員の方も参加してくださいました。
集会の前には参加者全員でオーガニック料理をいただきました。お料理は、野菜とレーズンとリンゴのサラダや野菜のスープ、そしてトウモロコシで作られた蒸しパンに豆の入ったクリームソースでした。ひとつひとつ丁寧に心を込めて作られているのを感じる温かなお食事会でした。英語を駆使しながらフランス語と日本語という言葉の壁を乗り越えて、参加者のみなさんは交流をしていました。
地元のひとたちや施設のスタッフとピースボートの参加者らが
一緒になって賑やかな食事会となりました
集会が始まるとプロジェクターを利用し、写真を使いながら各代表が発言をしました。今回の集会のコーディネートをしてくださった反原発団体「Mediane」のドニズ・ブッセルさんからは、ITER(イーター/国際熱核融合実験炉)の説明が行われました。
これは2006年11月に作られた「イーター事業の共同実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定」をもとに作られた実験炉です。この協定に参加しているのが、欧州連合、ロシア、アメリカ、中国、韓国、インドそして日本の7カ国です。この施設では、核分裂ではなく核融合させることでエネルギーを生み出すことを研究しています。現在、この施設がフランス・カラダッシュに存在します。この説明をうけ、多くの参加者が、日本がこの協定に参加していること、こういった施設が存在することに驚いていました。
集会では写真などを利用し、イーターの説明や福島の現状などが話し合われました
今回証言をしてくださったのは、永島三歳さん。永島さんは水力発電所でお仕事をしていたことから、被爆の体験に加えて小水力発電に関しても触れました。永島さんは一時期小水力発電の開発に携わっていたことがあり、電力会社にその可能性について協議したことがあるそうです。しかしその際、電力会社は小水力発電は原発に比べて単価がかかりすぎるということで、取り合ってもらえなかったとお話をされました。しかし、永島さんはその原発の単価というのは事故が起きたときの予算を全く含まず計算された料金であったのではないかと語り、あらためて小水力発電などの自然エネルギーへの転換を訴えました。
今回は質疑応答が少しの時間しかとれなかったことが非常に残念でしたが、そのなかでもやはり福島原発の事故以降の日本がどのような状況であるのかに関心が寄せられていることは明確でした。特にフランスの人たちが熱心に聞いていたのは、「福島原発の事故によりほかの原発のほとんどを停止させたが、日本の生活はどのようにかわったのか」ということ。ピースボートの参加者やおりづる被爆者のメンバーからは、「個人の生活は大きくは変わっていない」「企業には電力15パーセント減が課せられている」などの報告がされました。
集会が終わったあと、今回集まってくださった皆さんにお礼の挨拶をし、最後にイーターの施設を車窓で見学し船へと帰りました。
今回の訪問は脱原発を主たるテーマとしていましたが、この施設訪問により脱原発ができるということが明示された上で、今後日本がどのような方向へ向かうのか改めて問われたように思います。私たちが今後どのようなアクションができるのか、今後の課題が残るツアーとなりました。
(おりづるプロジェクト担当 上泰歩)
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