1.ヒバクシャ証言の航海

イタリアはローマの大学、図書館、シンポジウムで証言

イタリアのチビタベッキア港には3月23日・24日と二日間にわたって寄港したことから、ローマに一泊して三カ所での証言会を実施しました。今回の証言会をコーディネートしてくださったのは、イタリア人のロベルタ・ティベリさん。彼女は長崎で原爆文学を勉強していたことから、このプロジェクトに非常に関心を持ってくださり、昨年から一緒にイタリアでの証言プログラムを作ってくださっています。日本語が堪能で、熱い思いをもった素敵な女性です。
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今回のプログラムをコーディネートしてくれたロベルタ・ティベリさん(写真右)

ローマ初日の3月23日にはサンピエンツァ・ローマ大学にて200名程度の生徒を対象に証言会を実施しました。今回訪れたキャンパスには東洋学部があり、学生たちのなかには日本語を学んでいる生徒もいました。普段から日本やアジア諸国について学んでいることから、生徒たちの基礎知識があり、証言後も1時間近く質疑応答を行い非常に充実した証言会となりました。
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来場者は200名ほど。会場は満席に

今回証言をしてくださったのは、松長静子さんと増川雅一さん。増川さんは被爆当時4歳と若年被爆であるため、ご自身の記憶は多くはありません。しかし、核問題の概略などを含めながら非常にまとまった証言をしてくださいました。寄港地での証言はもちろんのこと、公の場で証言をするのは今回が初めてという増川さん。周りが思っていた以上に緊張していたようで、証言会が終わるとほっとしたご様子でした。
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熱く証言される増川雅一さん

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質疑応答の時間には次々と手が上がり、充実した会に

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質疑応答では、今回のおりづる被爆者の中で最年少の
小川忠義さんも積極的に回答されています

ローマ二日目の3月24日は午前中に図書館を訪問し、今度は中学生を対象に証言会を行いました。こちらの証言会にも100名ほどの生徒が集まりました。こちらでは、原口貞夫さんと石川律子さんが証言。石川さんも増川さん同様、若年被爆者で当時1歳で被爆された経験を持っています。公式な形での証言は初めてということでしたが、元教員という経験を生かし、人前-とくに子どもたちに対して上手に話をする姿は流石と思わせる証言会でした。中学生たちはとても熱心で、学校で事前学習をしていたこともあり、アメリカに対して報復したいと思ったことはないかなどとの質問が挙げられました。
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中学生に対し、やさしく話をされる石川律子さん

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こちらの会場も約100名の中学生が参加し、図書館はいっぱいに

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生徒たちは熱心に、率直な質問を投げかけてくれました

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子どもたちに分かりやすいように写真などを使いながら質問に答える

最後には中学生たちが折ったという千羽鶴と石川さんが働いていた小学校の生徒たちが作った千羽鶴の交換をし、石川さんは日本の生徒たちに頂いた千羽鶴を届けると約束しお別れをしました。おりづる被爆者のメンバーにとって、中学生たちの熱意を感じ、非常に印象に残る交流ができたようです。

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子どもたちからおりづる被爆者へ千羽鶴の贈呈が

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石川さんが持っていらっしゃった千羽鶴をプレゼント

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すっかり子どもたちと仲良くなった小川忠義さん

午後には緑の党のメンバーらとともにシンポジウムを開催しました。会場は文学カフェ
というちょっと変わった会場。ここでは福島原発の事故の解説から現在の状況、今後の展望などが話されました。ここでは喜多村隆昭がほかのスピーカーとともに登壇し、証言を行いました。

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証言をされる喜多村隆昭さん

二日間にわたり、3カ所で行われた証言会は、様々な年代へ向けての証言会となりました。そのなかでも中学生と大学生へ向けての証言会では、充分な時間をとって相互の意見交換ができたことで、ただ一方的に証言をするだけでなく、被爆者一人一人の体験とその後の人生から発せられるメッセージをきちんと伝えることができたように感じました。後日被爆者のみなさんからいただいた感想の中には、以下のような感想をいただきました。

「写真やドキュメンタリーなど様々な形で被爆証言を学ぶことはできるが、やはり生の声を聞くというのが海外の人々にとって大きなものなのだと再確認した。それは、単なる自分の体験だけではなく、被爆体験を通して過ごしてきた70年、80年という人生を歩んできたからこその言葉なのだと思う」。
(おりづるプロジェクト担当 上泰歩)

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