3.核廃絶へのいろいろな動き

2021年夏 子どもたちと平和を考える ~被爆を生き抜いた2つの楽器とともに~

この夏ピースボートでは、日本の多くの子どもたちが、原爆投下の歴史に触れ、平和について考える機会をつくろうと、いくつかの企画を行いました。広島で被爆を生き抜いた「明子さんのピアノ」「パルチコフさんのバイオリン」の演奏会を通じて、感想文を募集するというものです。楽器の物語を「自分ごと」として受け止め、考えたことを文章で表し、今度は自分が伝える側となる。被爆の歴史と平和の音色を、次世代に響かせ続けていく取り組みです。

8月6日「被爆を生き抜いた2つの楽器」物語と共演

河本明子さん(左)、セルゲイ・パルチコフさん(右)と2人が愛用した楽器

レストハウスからの配信の様子

8月6日の夜、オンライン・イベント「奏で継ぐヒロシマ~被爆を生き抜いた2つの楽器~」を行いました。広島平和記念公園レストハウスから、被爆を生き抜いた「明子さんのピアノ」と「パルチコフさんのバイオリン」のお話と共演を配信。それぞれの楽器を、広島にゆかりのあるお二人の演奏家、三原有紀さん(ピアノ)と坂直さん(バイオリン)が演奏しました。広島市立牛田中学校PC放送部が製作した「ショパンを愛したピアノ」(2017年)と「パルチコフさんのヴァイオリン」(2021年)を放映し、番組製作に関わった牛田中学校2年生の中野愛実さんに加え、HOPEプロジェクトの二口とみゑさん、廣谷明人さんのお話も伺い、多くの方に視聴いただきました。

音色を聞いて、子どもたちが感じたこと

感想文コンクール 大賞授賞式

このオンライン・イベントを一過性のものに終わらせないために、視聴した子どもたちから感想文を募集し、コンクールを行いました。

「2つの楽器の音色を聞くと、まるで生きているように感じました」

「この楽器は、平和の大切さを私たちに教えているのだと思います」

「核兵器のない世界を、これから私たちが作っていきます」

応募作品には、このような強い思いが書かれていました。

選考は非常に困難でしたが、大賞には、兵庫県三宮市にお住まいの、桂菜奈さん(10歳)が選ばれました。桂さんの作品「奇跡のピアノとバイオリン」には、被爆を「自分ごと」として捉え、2つの楽器が生き残ったこと、自分がいま生きているということはいずれも奇跡だと感謝し、平和の大切さを後世に伝えていこうという決意が記されていました。

大賞賞品として「広島への旅」が贈られました。コロナ感染状況を踏まえ、実施される予定です。

クラウドファンディングの実施

オンライン・イベントと感想文コンクールの実施、また、老朽化した「明子さんのピアノ」の維持費を集めるため、クラウドファンディングを行いました。80名のご参加で目標の60万円を達成し、643,835円のご支援をいただきました。約1か月の取り組みの間、多くのメッセージもいただきました。

ある男性は、「被爆者手帳保持者の母がピアノを買い与えてくれましたが、子どもたちは誰もその期待に応えることなく、ピアノから離れました。昔を思い出し、昨年からまたピアノを習い始めましたが、そんなときにこのプロジェクトのことを知る機会に接し参加させていただくことになりました」と語ってくださいました。いつか、クラウドファンディングで「明子さんのピアノ」を知った方々も、広島で実際に音色を聞ける機会を持てるといいな、と感じました。

8月21日「被爆の記憶を伝える~音楽で、そして世界で~」

「つまづきの石」に灯されたキャンドルと説明をする中村真人さん(右上)

クラウドファンディングのリターン賞品の中に、岩波ブックレット「明子のピアノ~被爆をこえて奏で継ぐ」を入れせていただきました。8月21日、その著者である中村真人さん(ドイツ在住フリーランスライター)を招いて、オンライン・イベント「被爆の記憶を伝える~音楽で、そして世界で~」を行いました。音楽をテーマに「明子さんのピアノ」について、戦争の記憶継承をテーマにドイツの「つまづきの石」プロジェクトについてお話いただきました。この「つまづきの石」プロジェクトは、「世界最大の分散型記念碑」と呼ばれています。戦争被害の象徴的な場所に行かずとも、日常生活において、記憶を継承していくという試みです。被爆地でなくても、被爆を継承していく可能性について、大きなヒントを得ることができました。

8月29日「子どもも大人もよくわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?」

新刊「絵で見てわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?」と監修者の川崎哲

もう一つのリターン賞品『絵で見てわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?』(旬報社、2021年)を取り上げ、その監修を担ったピースボートの川崎哲とともに、オンライン・イベント「子どもも大人もよくわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?」を行いました。3組の親子、教育現場で平和学習を行っている現役教員お2人に出演いただき、質問をぶつけてもらい、この本を使って答えていきました。核兵器の問題を、難しいことと遠のけてしまうのではなく、子どもとおとなが一緒に考えていく方法を探りました。

東京都内の小学校で教える武藤先生は、「学校で被爆のことを話し、子どもたちがそれを家に持ち帰る。そのときのご家族の反応次第で、子どもの平和意識が全く変わってくる」と、家族でできる平和教育について語りました。

参加してくれた中学生から、「いま世界にこんなに核兵器があるけど、その責任は誰にあるの?(誰のせいで、こんなにたくさんになってしまったの?)」という質問がありました。そう問いたくなるのは当然です。だからこそ、核兵器をなくす責任は大人の私たちにある、と実感させられた鋭い発言でした。

この夏を振り返って~これからの私たちの挑戦~

仲間と一緒に配信を見てくれた子どもたち

どの時代に生まれても、そこから76年前のことを自分に起きかえることは困難です。私の幼少期の76年前は日露戦争をやっていましたが、教科書に載っていた2~3枚の写真を覚えているだけです。子どものころは、めまぐるしく変わる環境についていくのがやっとですし、学ばなければならない歴史は他にもたくさんあります。

そんな中で、なぜ76年経っても、将来たとえ核兵器が廃絶がされても、広島・長崎を伝えていくのが大事なのか。それは人間社会の根本である、尊厳という価値観を守っていくためだと思います。残忍な形で多くの命を奪った原爆、重なる死を見て「何も感じなくなった自分」が怖かった、と語る被爆者の方もいます。人間性を失ってはいけない、だから非人道性を指摘する核兵器禁止条約ができたのだと思います。

子どもたちは素直な感性で受け止めてくれる。そして、その保護者や指導者の方々もその感性を羽ばたかせたいと思っている。この夏、それが本当によく理解できました。あとは、中央型(広島・長崎で直接学ぶ)でも、分散型(被爆地以外で取り上げる)でも、世界中の子どもたちがその歴史に触れる機会を多種多様に作っていく活動が、私たちのこれからの挑戦なのだと思います。

 

これらのイベントの詳しい報告は、「被爆を生き抜いた「明子さんのピアノ」を次世代に響かせたい!」ということで行ったクラウドファンディングのページにも掲載しています。

合わせてご覧ください。

◆オンラインイベント「奏で継ぐヒロシマ~被爆を生き抜いた2つの楽器」行いました!:https://camp-fire.jp/projects/142370/activities/295719#main

◆感想文コンクール大賞決定!「奏でる継ぐヒロシマ~被爆を活きた2つの楽器」を視聴して:https://camp-fire.jp/projects/142370/activities/306989#main

◆感想文コンクール 大賞授賞式を行いました!:https://camp-fire.jp/projects/142370/activities/310623#main

◆被爆の記憶を伝える~音楽で、そして世界で~: https://camp-fire.jp/projects/142370/activities/300121#main

(ピースボート 松村真澄)

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