2025年_ヒバクシャ地球一周(Voyage120)

ニューヨークの観光地の顔とは別の、学び深い一日

世界の中心とも言える都市の1つ、ニューヨーク。
寄港中の一日、私たちはこの街で、観光とは一味違った学びのスタディツアーを行いました。

 

午前中に訪れたのは国連本部。厳重なチェックインと荷物検査を経て、国際的な協議の場であるその内部へと足を踏み入れました。ビジター・ロビーでは、海洋保護や核廃絶など国連の取り組みを紹介する展示に出迎えられ、すでにその場に立っているだけで“世界の未来”を感じる空気が流れていました。

国連内部にあるモニュメント前で記念撮影

予約時間になると、ガイドツアーがスタート。最初に案内されたのは、国連内にある「平和の鐘」。平和の象徴としてそこに在り続ける鐘の存在に、私たちの思いも重なります。

通路に飾られた数々の絵画は、国連設立の理念や第二次世界大戦からの歴史の変遷を表現したもの。さらにホロコーストを伝えるパネルやポスターが並び、展示の充実ぶりに、まるで美術館を訪れたような感覚です。

その後、実際に会議が行われている会議室を見学し、通訳ブースから多言語に同時通訳されて開催されていることや、壁模様には互いの対話を象徴するという三角形が並ぶデザインが施されていることなど、細部まで説明を受けました。

また、プラスチックごみ問題に関する動画や取り組みも紹介されました。プラごみを再利用して作った“レンガ”を実際に手に取り、その重さと強度に驚きつつ、持続可能な社会に向けた希望も感じました。

そして見学の最後には、広島・長崎・核兵器に関する展示スペースへ。軍事費の現状、過去の核実験の記録、長崎から贈られた被爆像などに触れながら、核廃絶への想いを新たにしました。
被爆者・山口仙二さんの「ノーモアヒバクシャ」のスピーチにも話が及び、同行していたピースボートの共同代表の吉岡達也は、おりづるプロジェクトで乗船している被爆者に向けて「いつかみなさんや私たち自身が、この場で声を届けたいですね」と声をかけました。

国連見学中の会議室にて

午後は、国連軍縮部スタッフとのブリーフィングを実施。これまでの活動報告や今後の方針についての共有がありました。
国連でも若い世代をどのように巻き込み、育成し継承していくのかという課題に関して、SNSを用いた拡散やアカデミーでの学びなどを提供していることを知りました。

昼食後は市内へ移動し、市庁舎前の公園へ。ここは市民運動が盛んに行われた歴史ある場所で、社会活動家のドロシー・デイやバヤード・ラスティンなどの存在について学びました。ガイドから「みなさんの活動のきっかけになった人物は?」という問いかけに、参加者それぞれが自身のストーリーを語り合い、互いの想いを深く知る時間にもなりました。

お互いの活動のきっかけを共有

最後はカフェで今日一日の学びや感想をシェア。
そんなひとときに印象深い出来事がありました。サーブしてくれたお礼にと、被爆者の渡辺さんが自身が折った折り鶴をカフェスタッフへと手渡ししに行きました。「私は被爆者です。今日はサーブしてくれてありがとう」、そのように声をかけるとカフェスタッフからは「私たちの国がひどいことをしました、ごめんなさい」と返ってきたのです。
それを聞き渡辺さんは「あなたのせいじゃないから謝らないでください。原爆が存在していることがいけないのです」と伝えます。
「それでも私は謝りたいのです」、そう言うカフェスタッフを優しく抱きしめました。そして「これを私だと思って一緒に持って帰ってください」と折り鶴を渡しました。「あなたの優しい気持ちと一緒に持ち帰ります」と受け取ったその言葉ややりとりに、見守っていた一同は胸が温かくなりました。

カフェの店員を抱きしめる被爆者の渡辺淳子さん

 

ニューヨークという大都市で、世界を動かす場所で学び、人と想いを通わせた1日。その価値は、何よりも大きな“おみやげ”となりました。

(文:橋本舞)

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