4名のベネズエラ代表団は11月9日、空路でエクアドルの首都キト入りし、エクアドル副大統領をはじめとする政府高官への訪問を行った。エクアドルでの滞在は3日間におよんだ。

11月10日、代表団はエクアドル外務省を訪問し、外務次官ホセ・バランシア氏とミーティングを行った後、外務省アカデミーの方を対象に、1時間の証言活動を行った。渡辺淳子さんは「アメリカ軍が撮影したフィルムの中に見た被爆直後の光景が忘れることができない。母を捜しながらさまよう子どもの姿が自分に重なり、とても悲しくなった」と涙ながらに語った。川崎武彦さんは「50年間ヒバクシャであることを忘れよう忘れようとしたが、忘れることができなかった。友達の中には、いまだに結婚できないものもいる。目に見えない放射能に今もなお苦しめ続けられている」と力強く語った。4人の心のこもった証言を、在エクアドル日本大使も含んだ、70名のエクアドルの外交関係者が聞き入っていた。


広島の平和式典に参加した経験をもつ外務次官ホセ氏は、ヒバクシャが「悲劇から平和のメッセージを構築していること」に共感を示し、「核兵器は非人道的であり、無害の人々に影響を与え、好ましくない武力の形だ」と述べた。またエクアドル新憲法には「核兵器を拒否し、国際社会の中で核廃絶を追求する」ことが記載されていることに触れ、核のない世の中を目指して、協力していくことを述べた。ピースボート共同代表の吉岡達也は、「国境を超えて、国と政府の枠組みを超えて、核廃絶を追及することが重要な時代になっている」と呼びかけた。
証言活動後、メディアの取材を受けた代表団は、世界遺産に登録されているキトの中心街を観光した。古い建物が残る静かな町並みに、一同感激していた。セントドミンゴ寺院のステンドグラスは、ラテンアメリカらしくカラフルな色使いで、見るものを魅了した。


市内観光後、代表団はホテルに戻り、「キトの折り紙クラブ」と面々と交流した。エクアドルでは、折り紙が盛んで、彼らは南米で折り紙フォーラムも開催している。これまで折り紙で鶴を折って、世界中で交流してきたおりづるメンバーだが、キトのおりづるを見て、度肝を抜かれていた。普通の鶴ではなく、羽に皺があり、首に動きがあり、生命の躍動感を感じさせるのである。代表団一同は、折り紙クラブの青年たちに、折り紙細工を教えてもらい、楽しい文化交流の時間を過ごした。

翌11日、エクアドル代表団はエクアドルの副大統領に面会した。
4名それぞれが短い証言をした後、ヒバクシャとピースボートスタッフは、エクアドルの新憲法が憲法9条の精神と大きく通じるところがあるということを伝えた。
具体的には、国民投票を経て今年の9月末に制定したエクアドル共和国新憲法に含まれている、「国際紛争における武力行使の否定」と、「大量破壊兵器の開発・利用の否定」と、「外国の軍事基地を国内に設けることの否定」という文言である。


両国の憲法に共通点があることから、将来的に平和憲法に関して議論できる国際会議を開催できればすばらしいという話題で意気統合した。副大統領は全世界の人々が平和を目指しているので、平和に関しては国家として取り組む姿勢があることを明らかにした。副大統領の平和に対する姿勢と人柄に、代表団一同も感銘を受けていた。川崎武彦さんは、「50年間言えなかったことを、南米で言えて、すうっとした」と面会後語った。



代表団一同はその後、赤道をまたぎに行き、現地のお店でショッピングを楽しむなど、リラックスした時間を過ごした。

なお、エクアドルへのヒバクシャ訪問は、地元で大きく報道された。いくつか、報道へのリンクを下に付けた。 http://www.soitu.es/soitu/2008/11/11/info/1226434650_208899.html http://www.ecuavisa.com/Desktop.aspx?Id=958&e=4055 http://es.noticias.yahoo.com/9/20081111/tso-sobrevivientes-de-hiroshima-y-nagasa-64bc860.html 他多社にて掲載 (記事要約) レニン・モレノ・エクアドル副大統領は本日、1945年ヒロシマ・ナガサキで原爆 の被害に合いながらも生き延びた、日本の「ヒバクシャ」を受け入れた。彼ら は、核兵器のない世界を目指し、日本のNGOが主催するプロジェクトに参加し ている。 モレノ副大統領は、このプロジェクトが行っていることは“核兵器を作っている 人を含む、世界の全ての人々にとって価値がある”と述べ、「ピースボート・ヒ バクシャプロジェクト」のイニシアティブに賛同する意志を示した。 このヒバクシャたちは、先月9月にピースボートに乗船。核兵器反対のメッセー ジを広めるために船出した。 この船は、世界を巡るNGOで、25周年記念を迎えた63回クルーズでは、この ヒバクシャたちの他600名の参加者とともに、24都市を回り12月18日に帰国す る予定。 副大統領はこの訪問者たちに言った。「平和な世界、連帯する世界、全ての武器 が廃絶される世界を熱望する」 そして、ガンジーの言葉を引用し、「平和への 道はない。平和そのものが道である//////」と続けた。