2008年_第1回ヒバクシャ地球一周(第63回ピースボート)

ニュージーランド先住民族マオリとヒバクシャとの交歓

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-1

(歓迎式で代表を務める三戸さん)
12月25日、ニュージーランド北島のオークランドに入港。先住民族マオリの言葉で、アオテアロア(長く白い雲のたなびく地)と呼ばれるこの島でクリスマスを迎えることになったのだが、25日当日はほぼ国全体が休暇になるため、当初予定していたツアーを遂行するのが困難な状態になっていた。しかし幸運なことに、先住民族マオリとの交流が決まった。受け入れてくれたのは過去ピースボートとの親交があるワータラ・ブラックさんという女性。ワータラさんは、ヒバクシャが来訪するならと休日返上で尽力してくれたのである。そのためクリスマスでキャンセルとなった他のツアーの参加者も合流し、総勢150名を超える大所帯でのマラエ(マオリの会議や式典など、重要なことが行われる集会所)訪問となった。

オークランドから北へバスを走らせると、左右の車窓から羊や牛がのんびりと草をはんでいる光景が続き、1時間ほどでカイアウアという海沿いの町に到着。目的の「ファレカワ」マラエはこの人口1000人ほどの町にある。

 バスを降りた一行は、マオリの伝統にしたがい、「ポウフィリ」という歓迎式を行う。マオリの戦士に扮した男性が威嚇しながら近づいてきて、木の葉を地面に落とす。三戸伸晃さんが友好を示す葉を拾いあげる動作を行うと、集会所に入ることが許された。その後、いくつかのしきたりどおり進行し、最後に、その場にいる歓迎側と訪問側が次々にお互いの鼻と額をくっつけて挨拶を交わし、歓迎式が終わる。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-2

(額と鼻を付けるマオリの伝統的な挨拶)

昼食後は、マオリ文化体験と交流プログラムが行われた。屋外では「ンガー・ラカウ」と呼ばれるスティックゲームが行われ、大きな輪や一列になった参加者が、お互いが持つ棒を投げたり、叩き合ったりして遊ぶ。元々は戦いや狩りに必要な視覚と手をいかに同調させるかという訓練に用いられたという。また屋内では、ダンスの時に女性が使い、多産の象徴とされる「ポイ」というボール作りのワークショップを行う。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-3

(スティックゲームを楽しむ参加者たち)

文化体験が終わり、ヒバクシャを代表して川上紘一郎さんがヒバク証言を兼ねた挨拶を行う。まず大切なクリスマスにもかかわらず、最大級のもてなしをしてくれたマオリの人々に感謝の意を表し、広島で2歳でヒバクした体験を身振り手振りを交えて語った。そして今日のような穏やかで幸せな日が核爆弾1発でメチャメチャになってしまうことがいかに恐ろしいことか、核廃絶に向けて行動していこうと訴えた。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-4

(身振りを交えて証言する川上さん)

それを受けたワータラさんが、過去30年間、マオリの権利獲得と環境問題をテーマにした自分たちの活動を紹介。「ニュージーランドは現在、アメリカを含むすべての国の核搭載鑑の入港を拒否しており、太平洋で最も強硬に核に対して異を唱えてきた。兄弟である太平洋の島々のひとつ、モルロア環礁でのフランス核実験にも抵抗してきた」と述べた。また自分の父も第二次大戦の生き残りであるため、同じ時代を生き抜いたヒバクシャにも強く共感すると付け加えた。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-5
(マオリの女性闘士、ワータラさん)

最後に、歌と踊りが披露され、ラグビー・ニュージーランド代表のオールブラックスが試合の前に必ず行う儀式「カ・マテ」ハカを男性陣が踊った。踊る前にメンバーが「オールブラックスがハカを有名にしたのではなく、ハカがオールブラックスを有名にした」と言って笑わせるなど、終始和やかな交流ムードで進んだ。

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-6

(「ポイ」を腰に付けて踊る女性たち)

ヒバクシャ地球一周 証言の航海-7(勇壮な「カ・マテ」ハカを披露する男性陣)

 帰り際、感謝の意を込め『上を向いて歩こう』のメロディーに乗せたマオリ語の歌詞で別れの歌をうたい、マラエを後にした。川上さんは「十分に話す時間はなかったけど、ワータラさんの挨拶から反核の思いがある人たちだということがわかり、気持ちが伝わったと感じた」と振り返った。

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