4月24日(火)、悪天候のため少し遅れてシンガポールに寄港しました。それまで降っていた雨も上がり、学生らが待つアンダーソン高校へとむかいました。国土約700㎢しかないシンガポールは、中華街やリトルインディア、アラブストリートなど様々な文化が尊重し合いながら共存する多国籍国家で、賑やかな町並みが印象的です。そんな中心地から30分ほど車を走らせたところにあるのが、今回の証言会場であるアンダーソン高校。第3回おりづるプロジェクトでは同高校を訪れ、水先案内人の郭貴勲さんとおりづる被爆者の田中健二さんが証言をしました。その証言会では被爆の事実を伝えるだけでなく、日本が犯した加害の歴史についても触れる事ができ、非常に意味のあるものになりました。そんな実績から、今回もぜひ証言会をしてほしいとのご要望をいただき、この会が実現しました。
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シンガポールの高校生と真剣に意見交換
学校に到着すると、私たちの到着を待ちわびていた高校生320名が大きな拍手で大歓迎をしてくださいました。今回はアンダーソン高校以外に他6校からも参加しているとのこと。おりづる被爆者らはこの歓迎ぶりに非常に驚くと同時に感激したようすでした。
今回証言をしてくださったのは、在韓被爆者の李鐘根さんと第5回おりづる最年少被爆者の小川忠義さん。小川さんはインドに引き続き寄港地2回目の証言となりました。証言会は全体で1時間15分程度と少し短かったため、意見交換があまりできなかったことが少し残念な形となってしまいました。
しかし、会の終了後には多くの学生が残って被爆者一人一人と交流をすることができました。交流時間には、被爆者の増川雅一さんと石川律子さんは日本が犯した侵略と加害について申し訳ないと話したそうです。すると17歳の男子生徒は、「現在そのことについて学んでいる最中だが、それは歴史上のことであり、今のあなたが謝る必要はない」と答えたとのこと。このことについて増川さんは、「ただ一人の意見ではあるが、時間の流れと教育の変化を感じた。また国家間の友好関係などを考慮しているのではないか」と振り返りました。
たくさんの高校生に囲まれて写真やメッセージなどをせがまれた交流会は無事に終了しました。バスの中で被爆者らは「こんなに歓迎してもらえると思わなかった」「自分たちに感心をもってくれていることが嬉しかった」「感動した」などと喜びを口にしながら港へとむかいました。
クルーズも残すところあとわずかとなったところでのシンガポールの証言会は、充分な意見交換ができなかった事が悔やまれるものの、被爆者にとって思い出に残る証言交流会になったようです。
(おりづるプロジェクト担当 上泰歩)
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