3.核廃絶へのいろいろな動き

【報告】3月19日オスロ会議報告会@明治学院大学

3月上旬にノルウェーのオスロで開かれた「核兵器の非人道性に焦点を当てた国際会議」の報告会が、3月19日に明治学院大学で行われました!

報告者と報告概要は次の通りです。

1)大久保賢一さん(日本反核法律家協会)「国際政治における“非人道性”」
2)川崎哲(ピースボート)「オスロ後のNGOのストラテジー」
3)河合公明さん(創価学会平和委員会事務局長)「日本政府の核軍縮政策」
4)メリ・ジョイス(ピースボート)「世界のNGOの動き」
5)金マリアさん(ピースデポ)「オスロ会議におけるユース」
6)田中熙巳さん(日本被団協)「クロージングリマーク」

報告内容をずらっと並べてみると、堅いテーマに頭が痛くなってしまいそうですが…実際に聞いてみると、核をめぐる国際社会の流れや、日本の立場、世界中の市民の動きなど、どの内容も興味深く、報告も分かりやすかったです。目から鱗の事実や、市民フォーラム・国際会議の裏話など、出席者ならではの話が盛りだくさん!とても貴重な2時間半となりました。ここでは、少しだけポイントを紹介します!

    ピースボートのおりづるプロジェクト
市民団体のメンバーや法律家、記者、学生など、
多様な参加者で、すぐに席は埋まってしまいました!

まず最初の報告は、大久保賢一さん(日本反核法律家協会)による「国際政治における“非人道性”」。国際法では、戦争に勝つためであっても、戦闘手段として民間人を無差別に攻撃したり、不必要な苦痛を与える兵器を使用することは禁止されています。ここから、広島・長崎への原爆投下は、人道と正義の観点から国際法に違反していると大久保さんら日本反核法律家協会のメンバーは考えています。

そもそも法の役割とは、「~をしてはいけない」というルールを人々が意識できるようにすること(=規範意識を養うこと)にあります。核兵器の非人道性が明らかである以上、核なき世界へ向けた始めの一歩として、まずは核兵器を禁止する条約をつくるべきであると会場へ呼びかけました。

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「オスロ会議後のNGOのストラテジー」について話す
ICAN共同代表 兼 ピースボート共同代表の川崎哲

次に登壇したのは、ピースボート共同代表の川崎哲。川崎は、今回のオスロ会議の意義は、国際会議の場で「真面目に」核の非人道性が話し合われたことにあると指摘しました。とりわけ、核がひとたび使用されると、どんな優秀な国際機関であっても救援することは不可能である、ということを全体認識として共有できたことは、とても大きな成果であったと言います。この結論を導く上で「福島」というキーワードがかなり頻繁に出てきたという話に、思わず会場から大きなため息がこぼれました。

今回のオスロ会議には、核兵器保有国であるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国は出席していません。この事実を、川崎は「むしろ良かったのではないか」と肯定的にとらえています。大国が参加しないことで、ある意味、気兼ねすることなく“みんな”で「核は危ない!」と話し合うことができたのはないか。今回の会議が、これまでのように核兵器保有国が自分たちに有利なルールを作り核を管理する時代から、非核保有国が新しいルールをつくっていく時代へと転換する大きなきっかけになるのではー。そんな期待からか、会議中は会場が熱気で包まれていたそうです。

新しいルールづくりをする上で、今こそ広島・長崎の被爆者の声を世界に届ける必要がある!とピースボートのおりづるプロジェクトの活動も紹介していました(ちゃっかり!)。

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オスロ会議にてプロジェクトメンバーと(写真中央、川崎哲)

続いて登壇したのは、河合公明さん(創価学会平和委員会事務局長)。「日本政府の核軍縮政策」について、分かりやすくまとめてくださいました。

日本は、昨年末、核兵器の非合法化を目指した声明案への署名を拒否したことで、スイスやノルウェーなど核兵器の非人道性を訴える国々を落胆させました。アメリカの核の傘下にある以上、核の非合法化は目指せない、というのが日本政府の主張です。世界で唯一核爆弾を投下された国の政府が、核の非人道性を強調する意見表明に同調しなかったーこの事実は、日本国内ではあまり大きく取り上げられませんでしたが、国際社会は厳しくとらえています。

この日本の姿勢について、河合さんは「日本政府は、少なくとも核兵器の非人道性については他の国々と認識を共有している」と言います。ただ、東アジアの情勢や北朝鮮の存在を考えると、核兵器を使用させない為には、ある程度の核の脅威が必要だと考えているのでは、と分析しています。つまり「核兵器を使用させない世界」と「核兵器のない世界」はイコールではないというのです。

うーん、難しい…。

そんな日本政府の立場に対して、日本の市民やNGOは「核兵器の使用は、どんな状況であっても許されない」という方向へ持って行く必要があると河合さんは主張します。まずは互いの共通認識である「核兵器は危ない」という事実を共有した上で、現実的に「核の被害を0」にするためにはどうしたらいいか、丁寧に議論を積み重ねていく必要があると主張しました。

    ピースボートのおりづるプロジェクト

以上、頭をたくさん使う前半が終了。後半は、写真をたくさん使いながらオスロ会議の様子を報告してもらいました。

トップバッターは、ピースボートのメリ・ジョイスによる「世界のNGOの動き」。ICAN主催の市民社会フォーラムには、60カ国から約500名の市民が参加しました。今回のフォーラムには、核問題だけでなくいろんな問題に取り組んでいる団体のメンバーが集まり、様々な角度から議論がなされたそうです。

たとえば、「核兵器を禁止する条約をつくるためにはどうしたらいいの?」というテーマでは、市民主導で条約を作ることに成功した、クラスター爆弾禁止条約や地雷廃絶のための条約、気候変動に関する条約など、具体例を挙げながら議論したそうです。また「若者を巻き込むにはどうしたらいいか?」「ソーシャルネットワークを使う利点は?」など多岐にわたるテーマについて、時にレクチャー形式で、時にワークショップを交えながら、楽しく活発に意見を出し合ったそうです。

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「世界のNGOの動き」について報告する
ピースボートスタッフのメリ・ジョイス

続いては、ピースデポの金マリアさんより「オスロ会議におけるユース」について報告でした。今回のオスロ会議に向けた世界中のユースの活動について、準備から実際のアクションまで、写真を使いながら紹介してもらいました。もちろん話の中身も興味深かったのですが、それ以上に報告者のマリアさんのキャラクターがとてもチャーミング!彼女の周りを巻き込む力に、この日一番と言っていいほど会場が一つになりました。(笑)

具体的な活動として、対話の方法や、ワークショップ、メディアの活用、各国の代表者へのアプローチなど。写真を通して楽しそうに活動している様子がうかがえて、とても参考になりました。最近でこそ少し身近になったものの、日本で「運動」「デモ」というと、なんとなく近寄りがたいイメージがあります。実際にその場に参加してみても、やはりどこか受容性や創造性に欠けているような気がしてしまいます。

例えばこのオスロ会議を通した世界の若者のように「まずは自分たちが楽しむところからスタートする」「頭で考えながらも、まずは動いてみる」といったところに、わたしたちも学ぶ事は多いのではないでしょうか。

最後に「若いという事は、“特権”“希望のエネルギー”“責任”です!心が若い皆さん、一緒に頑張って行きましょう!」というマリアさんの呼びかけに、会場が大きな拍手で答えました。

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「オスロ会議におけるユース」の活動について報告する
ピースデポの金マリアさん

そして最後に、日本代表団の一員としてオスロ会議に出席した日本被団協代表の田中煕巳さんより締めくくりの挨拶が。

自身が原爆の被爆者である田中さんは、今回の国際会議で、各国代表者に向けて2~3分スピーチをする機会を与えられたそうです。2~3分という短い時間で何を伝えられるのか…悩んだ末に、田中さんが選んだのは次のような言葉でした。

「きのこ雲の下でどのような非人道的なことが起きたのか、想像することから出発してほしい。そして想像するために、まずは被爆者の証言を聞いてほしい。」

そもそも「なぜ核なき世界を目指すべきなのか」根本的な問いを投げかけられた気がします。

「日本政府の立場をどう変えていくかが、これからの私たちの課題です。日本の政府の立場、すなわち外務省の考え方を変えるためには、政治家を変える必要があります。政治家の考え方を変えるためには、私たち市民が動いていく必要があります。皆さんでがんばっていきましょう!」

そんな田中さんの言葉で、今回の報告会は閉幕しました。

$    ピースボートのおりづるプロジェクト
市民社会フォーラムで被爆体験を証言する日本被団協の田中煕巳氏

これまで核兵器に関する国際会議の場では、核兵器保有国(米、露、英、仏、中)を中心に「これ以上(自分たちの他に)核兵器を持つ国を増やさないためにどうするか」というように、あくまで「政治的」に話し合われる事がほとんどでした。

ところが今回のオスロ会議では、UNHCRや赤十字国際委員会など専門機関が率先して会議に参加したこと、そして、医学的、科学的な客観的データに基づいて、真っ正面から「核の非人道性」に向き合ったことに、大きな意義があります。全体会の総括として「原因を問わず、核兵器の爆発の結果は、国境を越え、地域的にも世界的にも国家や市民に重大な影響を及ぼす」と明言したことは、これまでの大国中心主義の流れを大きく変えるものとなりました。この「原因を問わず」というところに、「チェルノブイリ」「福島」を意識していることが伺えます。

そして何より、世界中から核問題にとどまらず様々な課題に取り組む専門家や市民が集まったこと、とりわけ若い世代が大きな存在感を示したことは、とても意味のあることだと思います。

このような国際社会の流れの中で、なお「核の傘」に依存する日本をどう見るか。これから私たちは、どのように日本の存在感をアピールしていくのか。

意見は様々だと思いますが、やはり、広島・長崎、第五福竜丸、福島と、幾度となく核の被害に晒され、その非人道性と現在進行形で向き合っている日本だからこそ、発信すべきメッセージがあるのではないでしょうか。国として、地域として、私たち個人として。それぞれの立場から、それぞれの言葉で、何を発信するかが問われています。

ここで、一つ報告が!今回のオスロ会議のフォローアップ会合を、今年~来年中にメキシコで行うことが発表されています。…メキシコといえば、この夏に出航する第6回「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」の最後の寄港地!しかも、寄港日はなんと「国際平和デー」である9月21日!!

おりづるプロジェクトとしても、メキシコの市民の皆さんへ被爆者のメッセージを届けると同時に、このフォローアップ会議の実施に向けた後押しができればと強く思っています。

    ピースボートのおりづるプロジェクト
ピースボートのプロジェクトも紹介させてもらいました

最後に、今回の報告会に関する記事を紹介
します。

□■関連記事■□
「核廃絶 世界の動き学ぶ 東京でオスロ会議報告会」中国新聞(2013年3月21日)

「「核の非人道性」共感呼ぶ オスロ国際会議 被団協・田中事務局長に聞く」中国新聞(2013年3月18日)

(ピースボート 古賀早織)

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