1.ヒバクシャ証言の航海

アニメで伝えたい被爆体験『父子の別れ』

「被爆体験をどんな風に伝えたら、より多くの人に感じて貰えるだろう・・・」
被爆者自身はもちろん、体験を受け継いでいく若者として、証言の航海を通して何度も考えたテーマです。
そんな課題の一つの表現として、昨年行った第8回の航海にて制作した、ユースと被爆者の思いが詰まったひとつの作品をご紹介します。

航海の乗船前に出会った芸術を学ぶユース・岩本麻奈未さんと、自身の体験をマンガに描いている被爆者・廣中正樹さん。

廣中さん自身が描いたマンガ

芸術を通して被爆体験を伝えたいという2人の思いは共鳴し、岩本さんの「廣中さんの体験を動くアニメーションにして、より沢山の人に伝え感じて貰いたい」という思いから作品を制作することとなりました。

被爆や戦争を伝えるアニメというと「はだしのゲン」や「ほたるの墓」など沢山の作品がありますが、
岩本さんは、怖いシーンだけでなく情景を想像して貰うことや、絵が得意ではない船内参加者と共に制作ができることなどを重視して≪クレイアニメ(粘土をコマ撮りして作るアニメ)≫という手法を選びました。
日本中・世界中の方にも伝えられる手段で、後生にも残していく表現に挑戦したといいます。


第8回おりづるユース 岩本麻奈未さん

そんな岩本さん自身も、クレイアニメ制作は初めて。
船内でアニメ制作チームを募り、廣中さんの証言を聞き取りながら表現を考えていきます。


制作風景。1コマずつ、少しずつ粘土を動かし写真を撮影してアニメに。

制作チームには10代から30代まで、若いメンバーが揃いました。
「廣中さんの証言に心打たれて」「自分にも何かできるかと思って」「アニメで伝えることに興味をもって」など、アニメ制作に携わった理由は様々。

そんな若者たちは、廣中さんとの聞き取りを深めるにつれて、証言だけでは伺いきれない廣中さんの当時の情景を知ることになります。


何度も行った被爆体験の聞き取り。制作チーム以外の方も参加。

廣中さんはアニメ制作の現場に何度も足を運び「この時の父はこんな表情だった、もっとこんな風に」「とっても暗い所で、父の背中に刺さったガラスを抜いて・・・光はこちらから当てるといいね」など、アニメの表現がより体験に近づくようにとアドバイスをしながら、一緒に制作を手助けして下さいました。

洋上という限られた時間や材料の中で、アニメ制作自体はもちろん、廣中さんの証言をサポートしたり、紙芝居の朗読を若者が行ってみたりと、廣中さん率いるアニメチームは地球一周を通して交流を深め、作品を作り上げました。

廣中正樹さんは語ります。

「人の命は地球より重い、という言葉があります。
人の命は計り知れないものなのです。
戦争で原爆で、一瞬のうちに沢山の方がなくなられましたが、
私のお父さんもその一人なのです。
国にとっては、何十万人の中の一人でしょうが、
私たち自分にとっては本当に”全て”だったのです。
親から頂いた大切な命を、みなさんもどうぞ大切にして下さい。」

クレイアニメ『廣中正樹 体験記~父子の別れ~』

表現方法のみならず、被爆者と若者がともに協力しながら挑戦したことにも、伝えることの可能性を感じます。
小さな子どもから大人まで見られる作品となっています。
是非、大切な人のことを思いながらご覧ください。

■廣中さんの体験の詳細はこちら

(朝日新聞 ヒロシマ・ナガサキの記憶 聞きたかったこと より)

■船内でのアニメを使った証言発表の様子はこちら

(ピースボートスタッフ 中田智子)

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