1.ヒバクシャ証言の航海

ロンドン~核保有国にて~

こんにちは。

おりづるプロジェクトユースの山崎御園です。

10月の3、4日に、イギリスのロンドンにて証言会を行いました。

初めての2日間にわたる証言会だったのですが、たくさんの事が詰め込まれた、とても濃密な時間を過ごすことができました。

まず初めに、イギリスの核事情についての説明をさせて頂きます。

イギリスは、核不拡散条約上の核兵器保有国の1つです。1952年に初めての核実験をオーストラリアで行い、核保有国となりました。イギリスの保有核兵器の数は現在、約215発です。

ロンドンの保有する核兵器は、イギリスの北部のスコットランドの基地に置かれている潜水艦に搭載された核ミサイル、トライデントのみです。

イギリスの持っている唯一の核戦力ですが、

核戦力と言っても40〜50年経てば古くなります。トライデントが老朽化し、古くなってきていることに伴い、更新するかどうかを長年議論を重ねて国内を二分していました。

今年の議会の投票でトライデントの更新をすると賛成多数で可決してしまいましたが、反対の意見も多かったので政府が更新を決めたとしてもまだどうなるか分からないそうです。

また、この時の議会でメイ首相が、「核抑止で重要なのは、敵に我々が核を使用する用意があると知らしめることだ」と発言し、世間を騒がせました。

それでは早速、イギリスでの証言会の報告に移らせて頂きます。

1日目はまず、「フレンズハウス」を訪問しました。「フレンズハウス」とは、平和活動家のグループで活発に活動している「Quakers」という団体の所有する会場です。

そこで行われる、ロンドン周辺の平和首長会議加盟都市の首長が集まるシンポジウムに参加し、パネルディスカッション形式で証言会を行いました。

シンポジウムの参加者の中には、トライデントに反対する人たちも沢山いらっしゃいました。

初めに、司会のRebecca Johnsonさんによる挨拶と川崎哲さんによる挨拶がありました。

お二人とも、ICANのメンバーとして、長く反核運動に向けての活動をしている方です。

シンポジウムにて

初めに、深堀讓治さんによる証言を行いました。

深堀さんは、14歳の時に長崎で、爆心地より3.3km地点の兵器工場内で被爆されました。

深堀さんの証言

続いて、東野真里子さんによる証言を行いました。

東野さんは、当時17歳で被爆されたお母様の被爆証言を、被爆者2世として継承して下さっている方です。

東野さんの証言

証言を行う時、プロジェクターに原爆投下直後を描いた絵を写したのですが、その生々しい絵を見て、ハッと息を呑む音が聞こえたのが印象的でした。

また、会場には若者が非常に少ないように見えましたが、メモを取る人がいたり、広島・長崎を何度も訪問したことがある人がいたり、また二世として継承してくれることに感謝という声も聞こえました。

続きまして、パネルディスカッションを行い、会場からの質問を受け付けました。

「メイ首相が、いつでも核ミサイル発射のスイッチを押すと聞いてどう思ったか?」という質問に東野真理子さんは、「トライデントを発射することは絶対にNO。広島長崎の被爆者のような悲惨な思いは二度と世界中の誰にも味あわないでほしい。これが被爆者の一番の願いです。核を持たないで、使わないでほしい」と、はっきりとした答えを頂きました。

また、今後二度と被爆が起こらないように、イギリスの首相にメッセージを求められました。深堀讓治さんは、「原爆の被害を受けると、体全体が熱くて痛い。鼻からくる臭い、目から入る姿、動き、耳から入る音、すべてが迫ってくる。あの悲劇は実際に体験しないとわからない。今までは忘れるということしか考えていなかった。それほどひどいものだから、戦争には何があっても反対です。ただただ平和を願います」と、被爆者の方だからこそ言える答えを頂きました。
 

イギリスの核兵器廃絶家、Rob Edwardさん

平和市長会議のイギリスの事務局、Sean Morrisさん

証言会の後には、レセプションの時間が長く設けられました。

チップスやドリンク等、軽食をつまみながらシンポジウムの参加者たちである現地のNGOや政治家、市長、医療関係者、一般参加者の方たちとの交流を楽しみました。

レセプションの様子

中には、ロンドンの大学で反核運動のサークルに所属している学生さんがいました。

昔は、イギリスのほとんどの大学に反核サークルがあったが、ほとんど消滅してしまったと言います。ご自身のサークルのメンバーは200人いるのですが実際に活動に参加するのは

10 ~30人な上、メンバーが高齢化しているが、そんな中、戦争反対のデモは若者が多く、実際に若者のメンバーが増えるには実際に事件や事故が起こってからではないと難しい、という現実的なご意見を頂きました。お互いに、事件が起きてしまう前に若者に伝えていきましょうと勇気づけることが出来ました。

2日目は、イギリスの議員と学生に被爆体験を語り、核なき世界を考えるという目的でおりづるプロジェクト以外の一般の参加者の方からもツアーに参加して頂きました。

初めに、イギリスのビッグベンでも有名なウェストミンスター宮殿内にある国会議事堂を訪問し、国会議事堂内のツアーをして頂きました。

ウェストミンスター宮殿にて

その後は、上院議員に向けて、森川高明さんによる証言会を行いました。

森川さんは6歳の時に広島で、黒い雨や放射能汚染された飲食による被爆をされています。

森川さんの英語による堂々とした証言は、政策を作る議員に向けて、とても直接的で核廃絶への近道であるように感じました。

その後はOasis Academyという学校を訪問し、高校生に向けての証言会を行いました。

生徒たちと集合写真

私たちが、クラスごとに5グループに別れて行いました。

私は東野真里子さんとペアになったのですが、担当したクラスは生徒が30人ほどいました。

学校での証言会の様子

 

少人数の前での証言会だったため、より一人一人の顔を見て直接的に伝えられたのではないかと思います。初めは生徒同士でお喋りをしていた子どもたちも、東野さんの証言会が始まると夢中で聞き入っていました。東野さんの抑揚をつけた語り方は、言語が違えど人を惹きつける力があるんだなあと思いました。

証言会の後には、山崎による英語での詩を読む時間を設けさせて頂きました。

自分自身、詩を読んでみての感想は、英語の発音など聞き取りにくい部分もあったかもしれませんが、生徒たちは皆真剣に静かに聞いてくれて最後には大きな拍手をしてくれたので、何か少しでも伝わっていればいいなと思っています。

生徒たちは今回の証言会のために事前準備をしてくれていた様で、質疑応答の時間には次々とたくさんの質問が止まらず、感心しました。

その後は一緒に給食を食べたり、おりづるを折ったり交流の時間が多くありました。

生徒たちと交流

おりづるを教える坂下さん

給食を食べている時も、子供たちからの質問がたくさんあり、本当にいい時間を過ごすことができました。

最後には、一人一人に今回の証言についてのお礼のメッセージカードをプレゼントしてもらい、感動しました。

二日間による証言会はいつもに比べて時間に余裕があり、たくさんの交流を行うことが出来ました。こちらが証言会をしただけでは得られない質問や意見を聞くことができ、話の内容や子どもたちからのメッセージカードは、どんなものよりも大切なお土産となりました。

私たちが証言会を行ったロンドンは、世界的に活動しているNGOが拠点を持っていたり、市民社会団体が積極的に活動を行っております。

核兵器廃絶を訴える私たちおりづるプロジェクトにとって、核を保有する国に直接被爆証言を通して核廃絶を訴えることは本当に意味のあることでした。

今後とも、よろしくお願い致します。

文/おりづるユース 山崎御園 編集/ピースボートインターン 鈴木慧南

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