今回の103回オセアニアクルーズで、報告を書いてきた私、鄭銀貞(チョン・ウンジョン)は、広島被爆をした祖母を持つ被爆三世コリアンです。それだけでなく、アーティストとして絵を描くことで表現活動もしています。船内で、オーストラリア区間で行ったICANワークショップや船内の講座を経て感じたことを表現する機会を得ました。それが、「生命の誕生、そして死。全ての生き物は繋がっている」ことをテーマにした、絵と写真集の展示会です。
作品は4つの構成になっていて、
1)水の中の生命体を通して、海は偉大なる命の母であることを伝える「循環」、
2)戦争や原爆、ホローコスト、自殺に至るまで、人間による死によって道を失った魂が、新たな命へと生まれ変わってほしいという願いを込めた「輪廻」、
3)命の誕生と命の終焉を記録した「片岡和志写真集つむぐ」をコラボで展示しました。
そして、4番目の作品は「1024滴の涙」。
これは、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の活動と船内のアートワークショップを通して生まれたコラージュ作品です。一人の命が生まれるためには、両親、祖父母、そこからどんどん遡ると、10世代だけでも1024人の命が繋がっています。中には被爆者や戦争の時代を生き抜いた方もいらっしゃるでしょう。そう考えると、自分の命がいかに大事なものか、自分は多くの人に支えられていて、決して一人ではないと気付くはずです。
この作品は、ビキニ環礁の被爆者の写真展を行なった水案の岡村啓佐(けいすけ)さんとの会話から始まり、アートワークショップを通して、約70人が参加して涙の部分を作ってくれました。1回目のワークショップは、ICANの共同設立者のデーブ・スウィーニーさんのパートナーでありながら、またオーストラリアで広く使われている反核ロゴのデザインをしたアーティストのキャサリンさんと共に行い、非常に有意義な時間でした。
午後には、展示物との写真撮影とオーストラリアの森林火災への寄付金集めを行い、多くの参加者の方から命について考える時間が持てたと、直接声をいただきました。集まった寄付金は、オーストラリアの被災地の中でも、脆弱性の高い先住民コミュニティを支援するため、オーストラリア・コミュニティ財団(ACF) を通じて、Fire Relief Fund for First Nation Communities (先住民コミュニティ火災救援基金)の活動に役立てます。
写真:ピースボート 片岡和志
文・写真:ピースボート 鄭銀貞(シルビー)
編集:ピースボート 渡辺里香