3.核廃絶へのいろいろな動き

「軍縮教育 ピースボートの方法論」 が国連から出版されました!

ピースボートの活動を軍縮教育モデルの視点から論じた報告書がこの度国連軍縮部(UNODA)から出版され、それを記念するオンラインイベントが11月2日午前9時(米国東海岸時間)/11月3日午後11時(日本時間)から1時間に渡り、国連軍縮部主催で行われました。

ピースボートの活動を軍縮教育という視点から論じた報告書

国連軍縮部は、市民社会における軍縮教育の取り組みに関する論文を、2010年からほぼ毎年(2011年、2019年を除く)出版しています。軍縮教育と一言で言ってもその内容は多岐に渡り、その年のテーマに沿った軍縮教育活動を行う市民社会団体のメンバーが執筆を行っています。そうしたシリーズの一環で、今回はピースボートがおりづるプロジェクトなど核軍縮に焦点を当てたの軍縮教育視点からの活動について論じました。ピースボートの畠山澄子と川崎哲が執筆を担当、メリ・ジョイスが監修しました。

ピースボートの活動に深く関わってきた軍縮教育の専門家からの発言

出版記念イベントには主催の国連軍縮部スタッフに加え、ピースボートの軍縮活動に関わってきた方々が登壇し発言くださいました。まず国連軍縮担当上級代表の中満泉国連事務次長からイベント開催にあたる挨拶があり、出版を祝う言葉とピースボートの紹介がされました。

次にピースボート共同代表の川崎哲よりピースボートの団体紹介、そしておりづるプロジェクトの紹介がありました。ピースボートの軍縮教育は問題の人道的側面の理解と、それによる他者への共感、現在世界にある脅威の正しい理解、そして軍縮を推進する行動手法の習得の3つの柱の上に成り立っていること、ピースボートは37年の歴史の中で約8万人の人生に触れてきたことなどを紹介しました。例として、核兵器という世界規模の問題について原爆を生き抜いた一人一人の人生の物語を通して学ぶ方式や、核兵器の製造工程で原料の採掘や実験により核被害を受けた人々を被爆者と繋げることで横のネットワークを広げる活動などが取り上げられ紹介されました。

続いて本報告書の主たる執筆者でありピースボート国際部スタッフの畠山澄子がおりづるプロジェクトと軍縮教育の関連性について紹介しました。その中で、プロジェクト参加者が学び感じたことから次の行動を考えて実行していく、という自主性に基づいたピースボートの軍縮教育モデルを紹介。特に若い世代の参加者の自主性を重んじ行動を支援することで、プロジェクト終了後もそれぞれの人生の中で軍縮活動を継続している事例をあげてプロジェクト後に繋がる軍縮教育の成果について紹介しました。

「懸念を共有する少数の市民が世界を変える」 キャスリン・サリバンさん

ピースボートと20年以上核軍縮活動を共に行ってきた軍縮教育家であり国連軍縮顧問のキャスリン・サリバンさんからは、ピースボートの取り組んできた活動について自身の個人的体験を踏まえながら紹介がありました。サリバンさんが2005年にピースボートに参加した際、韓国の元従軍慰安婦らの証言を聞いた体験や、2008年の船旅ではタヒチの核実験被害者がフランスで起こした訴訟をピースボートが支持した経緯に触れました。そして、ピースボートが核軍縮運動において「人と人とのレベルにとどまらず、その上にある(社会レベルの)変革を持たらす動きに貢献したことは大きい」と述べました。またピースボートが核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と共に進めてきた核兵器禁止条約について「核兵器禁止条約自体が軍縮教育プロセスそのもの。この条約はそれまでの(核兵器に対する)軍事的な抑止力という見方を人道的影響という見方に変更させました。これにより、軍縮教育が更に重要視されることになりました。」と述べました。

最後にサリバンさんは核兵器禁止条約が条約発効に必要な50カ国の批准を10月に達成したことを踏まえ「懸念を共有する少数の市民が持つ世界を変える力を疑ってはなりません。事実、今まで世界を変えてきたのはそのような市民たちです。これから生きる新しい歴史の一幕でピースボートは大きな役割を担っています。」と述べました。

「軍縮についてだけでなく、軍縮を推進するために書かれた報告書」 ランディ・ライデルさん

その後、最後の登壇者として元米国上院議員スタッフで国連軍縮部上席政務官を務めた、ランディ・ライデル平和首長会議専門委員からピースボートの軍縮教育について発表がありました。ライデルさんはまずこの報告書と2002年の軍縮教育に関する国連専門家報告書と比較し、「何について考えるか、ではなく、どう考えるかという手法を教授することを目標に置いている点が類似している。そして本報告書は軍縮について語るだけではなく、軍縮という目標にどう達するかという方法について語っている。」と評価。自身のピースボート乗船体験については中東非核地帯化に関する会議に触れ「今までで一番興味深い対話のひとつとなり、また同地での対話における障害について学ぶ機会を頂いた」とピースボートへの感謝の言葉で発表を終えました。

「ピースボート は被爆者同士を引き合わせ結びつける場を共有してきた」 質疑応答

各発表の後は質疑応答の時間が取られ、サリバンさんから著者である畠山澄子と川崎哲両スタッフに対し質問が投げられました。対話の中で畠山はピースボートが個々の被爆者に対して与えた影響に対し「ピースボートのおりづるプロジェクトは様々な被爆者同士が出会い結びつく場を提供してきました。それによって被爆者は核軍縮運動という大きな流れの中で自分の個人的体験の位置を認識することができるようになりました。」と答えました。また「一人一人の人生が違うように、被爆体験も一人一人違う。証言の多様性を学べたことが私個人にとって一番の学びです」と述べました。川崎は「被爆者の高齢化が進む中、出版を急がざるを得ませんでした。彼らの体験やそれを伝える手法をしっかりを受け継いでいかねばなりません」と述べました。

人や地域に根ざしたピースボート 独自の平和構築活動を軍縮教育の視点から解説した報告書 ジョン・エニスさん

最後にジョン・エニス国連軍縮部市民団体窓口担当官から出版に貢献した全ての人々に対する感謝の辞を持って、1時間の出版記念イベントは終了しました。

1983年に発足したピースボートは核兵器や地雷の問題について現地を訪ね、現場に学び、当事者の体験や証言に焦点をあてながら解決策を模索するという独自の方法論で幅広い教育やアドボカシー活動を行ってきました。実体験に基づいたこれらの平和構築活動を軍縮教育という観点から解説したこの報告書は以下のリンクからダウンロードできます(英文のみ)。

『Navigating Disarmament Education: The Peace Boat Model
(「軍縮教育 ピースボートの方法論」 )』
https://www.un.org/disarmament/civil-society-and-disarmament-2020/?fbclid=IwAR0mt19plxEqe9iTTP30kNkPtDNrqzFfhRt26q1nh0TwrJ1p7_hieem40Gs

文:ピースボート ロバートソン石井りこ、渡辺里香

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