3.核廃絶へのいろいろな動き

川崎哲が、第33回谷本清平和賞を受賞いたしました

11月14日、広島市中区中島町にある広島工業大学広島校舎にて、第33回谷本清平和賞の贈呈式がありました。公益財団法人ヒロシマ・ピース・センターの鶴衛理事長より、表彰状、平和の盾、目録が川崎に贈呈されました。そして、谷本清牧師の息子である谷本健さんの温かい受賞者紹介があり、牧師の娘・近藤紘子さんより大きくて持ちきれないほどの花束を頂きました。

鶴衛理事長より、表彰状、平和の盾、目録が贈呈されました

近藤紘子さん(左)と谷本健さん(右)と

川崎より受賞記念講演

改めて舞台の真ん中の演題にたった川崎は、この受賞は「身に余る光栄。心から感謝している」と受賞講演を始めました。

これまでお世話になった被爆者のみなさん、行政や議員の方々、市民活動や教育関係、ジャーナリズムで活躍されている方々、そしてメディアが100名以上集まる会場に向けて、少し緊張した川崎の声が響きました。

受賞記念講演をする川崎

戦時中、戦争直後を経験した両親から、空襲や食べ物のない生活の大変さを聞いて育った世代である川崎が、中学2年生の時に父親と広島に来た時のエピソードを話しました。とにかく暑かったこと、ものすごい数の人が集っていたことが強く印象に残っているそうです。また、物理学の教授だった父親から「科学者の社会的責任」という言葉をよく聞いた覚えがある、と。

このような自分の背景と最近の若者たちの活躍を考えあわせて「20 世紀の戦争の恐ろしさを直接に体験している世代と、21 世紀に生を受けこれからの社会を作っていく世代の中間にあたる人間として『過去の戦争に学び、未来の平和を作る』ための道筋を作りなさいというメッセージが込められているのだろう」と今回の受賞への思いを語りました。

『過去の戦争に学び、未来の平和を作る』というのは、他でもないピースボートの設立当時からの理念です。戦争に巻き込まれることで生まれる苦しみや痛みを自ら感じ取り、世界には様々な形で平和のために取り組んでいる人がいることを知ること、これを大切にしています。2017年に国連で採択された核兵器禁止条約がそこに至った背景には、被爆者を始めとする被害者を知り、心を動かされて行動してきたICANに連なるような人々の存在があります。彼ら、私たちが行動したことで「核兵器は悪である」という新しい意識を醸成してきたのです。

2008年から始めた「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」(写真は2015年原爆投下から70周年の時のもの)

「それにもかかわらず、被爆国日本の政府はこの条約に背を向け続けています」と川崎は語気を強めました。広島出身の岸田首相には、核兵器廃絶に向けた真の歩みを進めることを強く望んでいる、とも。そして、会場に集まる広島の人たちに向けて「広島の皆さんは世界的な鍵を握っています。岸田首相は、当然、広島の世論を日々気にしています。広島の人々が、日本も核兵器禁止条約に入ろう、そのための措置をとろうと大きな声を上げれば、それは首相を動かします」と励ましました。

さらに、核兵器廃絶をめざす運動にとって、今日最大の壁は「核抑止論」という根拠のない迷信であること、国際安全保障の議論と称して浅はかな敵味方論がはびこっていることも強く指摘しました。この敵味方論は長い間、国家が統治の道具として使ってきたもので、結局同じパターンの議論によって「敵を自分たちより劣っており、人間ですらないとみなす、差別思想である」と。興味深かったのは「核兵器と差別思想は、表裏一体」と述べたことです。川崎いわく「核兵器のような大量破壊兵器が存在していられるのは、この世界には皆殺しにしても構わない人たちがいるのだという差別思想があるから」であると。

そして、1)地球は繋がっていて、自分と変わらない人間が暮らしていること、2)敵に備えるために軍備や研究が行われて貴重な資源は浪費され、貧困や気候変動、感染症が私たちの生存を脅かしていること、を実感して、生存のための協力を訴えました。

最後に、日本国憲法、国連憲章、国際人道法にも触れ、「無差別殺戮兵器である核兵器にしがみついていることはおかしい」と。そして「理性を取り戻し、日本をはじめとする全ての国が核兵器禁止条約に加わるよう、共に歩みを進めましょう。核兵器は必ずなくせます 」と締めくくりました。

会場で聞いていた方々は緊張した声から、どんどん感情が入っていく講演に、聞き入っていました。そして、敬意と賛同、これからの協力を約束するかのように拍手で答えていました。

被爆バイオリンとピアノの平和コンサート

広島の中学3年生・安塚かのんさんによる被爆バイオリンと、安塚さんを小さな頃より知る久貞祐子さんによる被爆ピアノの演奏でした。長年お互いを知る二人の演奏は息がぴったりで、受賞を祝う賛歌がバイオリンとピアノの音色で響きました。

安塚かのんさん(バイオリン)と、久貞祐子さん(ピアノ)による演奏

このバイオリンは、2019年にピースボートの日本・アジア周遊の船旅でも演奏されたもので、ロシア革命を逃れて来日し広島女学院の音楽教師になったセルゲイ・パルチコフさんのものです。ピアノは爆心地から1.8㎞のところで原爆の被害をうけたミサコさんのピアノ。ガラスの傷がたくさんありました。

被爆ピアノとバイオリンを紹介する二口とみゑさん(2019年ピースボート「平和と音楽の船旅」にも乗船されました)

バイオリン奏者の安塚かのんさんの語りで進んだコンサートでしたが、小学生の時にドイツ平和村のことを知り母親に連れて行ってもらったことや、被爆者たちの思いを歌った「原爆を許しまじ」をリクエストして演目に入れたことなど、会場中の大人が感心と感動をしました。特に、かのんさんが「原爆を許しまじ」を演奏すると、被爆者が各々口ずさんでいたのが印象的でした。

演奏の興奮さめやらぬ川崎(中央)

ピースボートでも、特にこの数年、被爆ピアノやバイオリンによる語り継ぎを大切なテーマにしてきました。今回は、同じ場所に集った被爆者、戦争経験を共有するもの、直接は戦争や原爆を知らないが聞いて思いを寄せるものを音楽が繋いでくれたように思います。

閉会の挨拶

鈴木俊哉理事からの閉会の言葉は、「始まったものには終わりがある。どう終わらせるかが問われている」というものでした。

そして「一人のスーパースターが現れて原爆をなくして平和にしてくれるわけではない。今日の受賞者の川崎さんのように、演奏者のお二人のように、それぞれの立場からできることをやっていくことが大切ですね」と。

それぞれの立場からこれからも行動への思いを強くした会でした。お集まりいただきました方、お手伝い頂いた方、ありがとうございました。今回は会場の人数の都合上、その場にお誘いできなかった方からもたくさんの祝辞を頂きました。ありがとうございます。

川崎の息子さん(左)も駆け付けて、一緒に祝いました

多くの被爆者の方々にもお集まりいただきました

バラICAN(アイキャン)のハガキも配られました。

<メディア掲載>

2021.11.14 テレビ新広島 核兵器廃絶へ向けて活動 ICAN川崎哲さん 谷本清平和賞を受賞

2021.11.15 NHK(広島) 川崎哲さんに谷本清平和賞贈呈

2021.11.15 広島テレビ ICAN川崎哲氏が谷本清平和賞受賞

2021.11.16 中国新聞 被爆の惨状 世界に伝える 谷本清平和賞 川崎さんに贈呈

 

<川崎のブログ>

第33回谷本清平和賞を受賞いたしました

スピーチの全文はこちら:https://kawasakiakira.files.wordpress.com/2021/11/20211114_akawasaki_lecture.pdf

写真:中奥岳生、ピースボート   文:渡辺里香

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