1.ヒバクシャ証言の航海

ニューヨーク報告① 高校生に思いを伝える

5月17日、第3回ヒバクシャ証言の航海・ニューヨーク代表団の2人が、カイロから空路ニューヨークJFK空港に降り立ちました。外気温45度のカイロ空港から約11時間の長旅を終えて、到着したニューヨークの気温は5月も半ばだというのになんと8℃!2人のヒバクシャ、塚本美知子さんと盆子原国彦さんは戦後、広島からそれぞれ東京とブラジル・サンパウロに移住されたのですが、さすがにここまでの温度差にはびっくりされていました。こうして、約10日間にわたるニューヨーク各地での証言活動が始まりました。

今回のニューヨーク滞在期間中、証言活動をおこなった2件の高校訪問について報告します。これらの学校訪問は、ピースボートにも水先案内人として乗船したことのあるアメリカの軍縮教育家、キャスリン・サリバンさんとロバート・クルンキストさんらが主催するヒバクシャ・ストーリーズ・プロジェクトによって企画されました。キャスリンさんは過去10年以上にわたり、ニューヨークの高校生たちに原爆や核について伝える平和教育活動を行っており、今年5月の一ヶ月で25校をまわりました。各学校で、入れ替わり立ち代るクラスを対象に一日に何回も証言を行うこともあります。

まず19日には、ジャマイカ・ハイスクールの9年生(日本の中学3年生)約50名と1日を過ごしました。

ピースボート ヒバクシャ地球一周 証言の航海-NY1
ジャマイカ・ハイスクールに到着したヒバクシャの皆さん(第1回「ヒバクシャ地球一周」の卒業生たちも一緒に)

最初に全体で自己紹介をしたあと、現在地球上にある核兵器の数を聴覚で実感し、その脅威についてグループで共有しました。その後、少人数に分かれて被爆証言をおこないました。説明によると、この学校は貧しい地域にある公立校ということでしたが、14・15歳の生徒たちは熱心に証言に聞き入り、被爆者に質問をしたりと正面から向き合う姿が凛としていました。

ピースボート ヒバクシャ地球一周 証言の航海-NY3
小グループに分かれて証言

今回のプログラムのユニークな点は、わたしたちが愛しみ、しかし核兵器によって奪われてしまう平安についても考えようという切り口で、日本の茶道体験と一緒になっていたところです。証言と前後して、少人数グループがニューヨーク裏千家の和室のお茶室に移動し、着物姿のお茶の先生から本格的なお手前をいただきました。中庭もしつらえられており、ニューヨークの街のど真ん中とは信じられないほど、静謐な和の空間でした。生徒たちは、これまでになかった経験に戸惑いながらも、「おさきに」とお辞儀をし、あわ立つお抹茶を飲み干していました。

塚本さんは、峠三吉の「ちちをかえせ」の歌を英語で披露され、生徒全員も合唱しました。また、ピースボートからの千羽鶴を贈り物として手渡し、大きな拍手をうけました。

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塚本美知子さん(中央)と盆子原国彦さん(右)

翌20日は、イーストサイド・コミュニティ・ハイスクールの図書館にて3セッションの証言活動を行いました。これらの学校訪問は、学校側に平和活動に熱心な先生方がおられることがきっかけになることが多いのですが、イーストサイド・コミュニティ・ハイスクールは校長先生が率先して社会問題に取り組んでおられます。貧しい地域から来る生徒たちによりよい学校環境を提供したいという熱意が、校舎中にあふれたきもちのいい学校でした。生徒たちも10年生から12年生(高校1年から3年)まで、事前にHIROSHIMA/NAGASAKIについてよく学習していた様子で、情報を重ねあわせながら証言を聞いているのが手に取るように見えました。盆子原さんの証言は、5歳で被爆したことから体が弱く、長くは生きられないと思っていたからこそブラジルに20歳で移住したと続き、これから自分の未来を切り開いて行く高校生たちには特に感慨深かったようでした。

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イーストサイド・コミュニティ・ハイスクールの学生たちが、船からのポスターに寄せ書きをしてくれた

これら学校で証言活動をするとき、生徒や先生方から様々な質問が挙げられます。今回投げかけられた質問は、以下のとおりです。

• 広島の街は復興していますか?
• あなたが大切にしている思い出はなんですか?
• 未来に希望はありますか?
• あなたは今、しあわせですか?

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イーストサイド・コミュニティ・ハイスクールで証言が終わって記念撮影

これらの質問から、生徒たちがヒロシマ・ナガサキの出来事を、65年前の過去の出来事としてのみではなく、現在とむすびつけて捉えようとしている事が分かります。そしてそれは、他人事ではなく、自分のことでもあるのです。最後のコメントでまっすぐ手をあげた高校3年生が、「去年クラスで、原爆投下の是非を問うディベートをしたとき、自分は原爆を落としたことが正しかったという立場をとっていました。今日のお話を聞いて、それが間違ったことだったと気付いたの。自分がはずかしい。」と発言しました。

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高校生たちは何を感じてくれただろうか

(小松真理子)

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