<現在クルーズに乗船されている方からの報告です。>
先日アウシュビッツの報告レポートをみなさんにお届けしましたが、
船内にてその報告会が行われました。
被爆者とともにアウシュビッツを訪れた若い一般参加者からのレポートです。
カナリア諸島ラスパルマスを離れ、被爆者の皆さんとともにアウシュビッツ収容所を訪問した。季節は冬。天気も曇り空ということで、収容所近くの宿泊施設に着いたとき、一気に緊張感が高まった。実際施設の中はとても温かい雰囲気で、案内をしてくれたシスターも愛に満ち溢れた、とても素敵な方だった。宿泊施設にはヨーロッパを中心にあらゆる国からの訪問者を受け入れている。今回、僕たちの他にドイツ・スペイン・フランスの学生、またイスラエル軍の兵士らもいた。
二日間を通してアウシュビッツとビルケナウ収容所を見学した。ホロコーストの実態。僕たちと同じ人間が理不尽にも殺さなければならなかったという現実。人間にここまで残虐な行為ができるのかということを思うといたたまれない気持ちになった。僕の生まれた国、日本においても戦争に勝つために国民皆兵制度というものがあったし、アジアを中心に侵略をして残虐な行為を繰り返してきた歴史があった。戦争というものが、または国全体が、人間にとって大切なものを見失わせているといることを感じた。世界には未だに国家間の戦争や内戦がある。日本でも犯罪はあるし、年間三万人以上が自殺するという考えられない事態が起こっている。僕はこのアウシュビッツ収容所訪問ツアー全体を通して、改めて日本について考えるきっかけとなったと同時に、命について深く考えさせられることとなった。
その後、参加者それぞれが色々な思いを抱え、ピースボートに帰船をした。そしてピースボートの船内で報告会を行った。宿泊施設での交流の話なども含め、自分が感じたことを思い思いに発言した。そんな中でも特に衝撃的だったのが、一般参加者の1人、Kさんの感想だった。僕たちがアウシュビッツ収容所を訪問した二日間、日本では東北関東大震災が起こった。その影響から福島で原発事故が起こり、今まで国全体としては安全とみなされていた原発に世界中から疑問の声が上がった。
Kさんも原発はクリーンで安全なエネルギーだと信じていた一人であった。しかし、今回の事故と被爆者とともに訪れたアウシュビッツ収容所を通して、如何に自分が日本のメディアに左右されてきたか、そして今原発に対する考えが変わったということを多くの聴衆の前で述べられた。Kさんだけでなく、アウシュビッツを通して参加者がみな、自分の生き方について再考するきっかけになったのではないかと、報告会を通して感じた。
(72回乗船者・加藤将広)
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