1.ヒバクシャ証言の航海

核軍縮プロセスの出発点となった町@アイスランド

みなさんこんにちは。
ピースボートインターンの鈴木慧南です。

6月9日(金)にアイスランドのレイキャビクに寄港したので、その時の様子をお伝えします。

レイキャビクは、核軍縮を語るうえでとても重要な土地です。
1986年10月、アメリカのレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が冷戦終結のための会談を行いました。
実際に会談が行われたホフディ・ハウスは、現在もそのままの状態で保存されており、当時の様子が展示され特別な場合のみ公開されているとのことです。
当時米ソは、お互いに弾道弾迎撃システムを制限するABM条約などを巡り対立していましたが、この会談の中で「すべての種類の核兵器を全廃する」という提案が議論されました。このとき、この提案の合意には至りませんでしたが、この議論が翌年の中距離核戦力全廃条約(INF条約)の調印へつながりました。
そして、1989年に冷戦終結後の米ロ間の戦略兵器削減交渉(START)という核軍縮のプロセスの出発点となったのです。

アイスランドは1949年にNATOの原加盟国となり、以後アイスランドの安全保障はアメリカを中心とするNATOに依存しています。
沿岸警備隊はあるものの独自の軍隊は持たず、徴兵制も施行したことがありません。
1951年よりアメリカ軍を中心とする「アイスランド防衛隊」の基地がありましたが、2006年には駐留部隊を撤退させています。
NATO加盟国としてアメリカの核の傘のもとにある国ではありますが、その中でも核兵器の非人道性に関する共同声明に賛同している数少ない国です。
しかし、昨年の核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議には反対し、3月の交渉会議には参加していません。


アイスランドの街並み

寄港当日は気持ちのよい晴天で、ドライバーさん曰く、今年で3番目に天気がよい日だそうです。
証言会場に行く前に、少し市内観光してから向かいました。
中でもみなさんが興奮していたのはホフディ・ハウスの訪問です。


ホフディ・ハウスの前で記念撮影

冒頭でも説明した通り、特別なことがない限り公開されていませんが、日本から被爆者の方々が来るということで、特別に入場させてもらえました。
歴史的な場所だけあって、みなさんわくわくしながら建物内に入っていきました。

もともとは1909年にフランス領事館として建てられたもので、アイスランドが所有するまでにさまざまな国がこの建物を所有していました。
当時会談が行われた机や椅子はそのまま保存されており、かわるがわる座って記念撮影をしていました。
また、当時のメディアをまとめたものの写真など、数々の重要な資料がきれいに展示されています。


中に展示されている資料など

わたしは2年前の第8回おりづるプロジェクトの際にもここを訪れており、その時はホフディハウスで証言会を行ったので懐かしさを感じながら見学をしました。
まさか再び訪問できるとは思っていなかったので、不思議な感覚です。

その後、国会議事堂よりも大きい市役所に移動し、メインホールで証言会を行いました。

最初に市議会議長のリーフさん(Ms. Líf Magneudóttir)から、被爆者の方の平均年齢が80歳を超えた今、生の声を聞けることはとても貴重であり、また重要であるという言葉を頂くとともに、証言会がスタートしました。

次に在アイスランド日本国大使館の北川靖彦大使より、日本は唯一の戦争被爆国であり、被爆者の証言を聞くことによって知識と理解が深まり、核廃絶への道が開かれるという旨のご挨拶を頂きました。

そして、被爆証言として最初に、広島の被爆二世の山村法恵さんが証言をしました。
言葉に抑揚をつけて話すことがとても得意な山村さんは、緊張しながらも想いをこめて話していました。


証言をする山村さん

そして2人目の証言者として、長崎で被爆した三瀬清一朗さんが証言をお話しました。
寄港地での証言会を重ねていくたびに、力強さが増す三瀬さんは今回も力強く話をされていました。


証言をする三瀬さん

今回の証言は、日本語を現地のアイスランドの方に英語で読んでもらったのですが、市議会議員でありアイスランドの有名な女優であるイルムルさん(Ilmur Kristjánsdóttir)が自ら「証言を読みたい」と急きょ橋渡し役をやってくださいました。

時間の関係で質疑応答の時間は取れませんでしたが、被爆者の方の想いが届いたのか、聴きに来てくださった方のほとんどの方がヒバクシャ国際署名に賛同し、署名してくださいました。

そして証言会の終わりには、カラカス市民オーケストラの方々が温かい音楽を披露してくれました。
証言会としては短い時間だったものの、来ていただいた方には伝わる証言会にできたのでは、と感じています。


イルムルさんと一緒に

午後はペルトランという場所の展望台に上り、緑豊かなアイスランドの景色をみんなで眺めながら、アイスランドのエネルギーについて学びました。
アイスランドは再生可能エネルギーの先進国としても知られ(一次エネルギー利用の約85%)、特に、そのうちの66%を占める地熱は総電力生産の25%を担うとともに、全国の住宅の約9割に暖房を供給しているそうです。

いかにアイスランドが環境に配慮したエネルギーを利用しているかがわかります。


ペルトランからの景色

環境にも配慮し、軍隊を持つ選
択をしていないアイスランドには、わたしたち日本も学ぶべきことが多くあると思います。
今回の寄港で北欧も終わり、これから大西洋へと入っていきます。
次の寄港地まで少し洋上が続きますが、少し身体を休めつつ、ヨーロッパとは異なったスタンスを持つ中南米へむけてチーム一丸となって頑張っていきます。


集合写真

ピースボートインターン 鈴木慧南

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なお、証言会後には在アイスランド大使の北川靖彦大使が、大使館の大丸さんとともに本船の見学にお越しくださいました。 (ピースボート 佐久間)

写真中央が北川大使、一番右側が大丸さん 於オーシャンドリーム号

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