3.核廃絶へのいろいろな動き

3月5日「平和・核廃絶にむけたオンラインフォーラム」

ピースボートはパルシステムと共催で、3月5日「平和・核廃絶にむけたオンラインフォーラム」を開催しました。足元の平和や環境を求めるところから、世界規模の視野を持って核廃絶を求める団体や個人が数多く揃い、多岐にわたる広範囲な議論が展開されました。
ヒバクシャ国際署名を24万8,216筆集めたパルシステムと一緒に、核廃絶への思いを運動につなげ、現在のウクライナをめぐる情勢にも思いをめぐらせて、世界へ発信する貴重な機会となったことは、ピースボートにとっても大変嬉しいフォーラムとなりました。

<基調講演>

ピースボート共同代表/ICAN国際運営委員の川崎哲による基調講演は、「今回のフォーラムが企画された当初は、核兵器禁止から廃絶に向けての動きを前向きに話そうと思っていたのですが、ウクライナで起こっていることを踏まえて考えると、『核兵器の終わりか、私たちの終わりか』そんな局面に来ているのです」と始まりました。

昨年(2021年)12月に開催した「世界核被害者フォーラム」(アーカイブ映像はページの最後)の報告をする川崎

核兵器を維持、作り続ける過程で多くの人が傷ついてきたこと、これを放っておけばいずれまた核兵器は使われ、次の犠牲者、次の被爆者を生み出すことを改めて考えたく、そうした状況が間もなくくるかもしれない、と。

キーワードして「人道上の危機」と「国際関係上の危機」を上げながら、国際条約や国際関係の前に、この危機によって人々が傷ついているということを常に念頭に置くべきことも強調しました。そして、被爆者が今まで語ってきたことは、国際関係のロジックでは語り切れない人間としてのストーリーであることも。

今回の戦争のように、大国が小国を武力によって制しようとする行為は許されませんが、様々な紛争で見られてきました。しかし今回は、東西冷戦時のブロック間衝突が復活しようとしているという大きな危険性があります。(ヨーロッパによるNATO対ロシアという大きな構図)。戦争開始の少し前には他の核保有国と共に「核戦争に勝者はいない」と表明していたのに。

ウクライナで続く戦争の意味を共に考えました

ICANはノーベル平和賞受賞時に「核兵器は、戦争を防ぐどころか、冷戦期の間何回にもわたり私たちを崖っぷちに追い込んできました。そして今世紀においても、核兵器は私たちを戦争や紛争につき進めようとしています。・・・核兵器は私たちを安全にするどころか、紛争を生み出しています」と訴えました。まさにこれを、私たちは目撃しています。

核兵器禁止条約は、どのような条件であっても使用を禁止し、NPT(核不拡散条約)と相互補完するものであることも説明しました。本来は、3月下旬に予定されていましたが、6月下旬に変わった第一回締約国会議では、禁止された核兵器を廃絶するための道筋が語られます。また、核被害者援助、環境回復が重要視されているので、本来、日本政府はこの議論に関わっていく必要あります。政府の参加がないのであれば、市民社会が積極的に関わることが責任を果たすということです、と。

この数日の間に、「核共有」という議論が出てきていますが、非核三原則にも、NPTにも違反しており、根本的に被爆国日本の存在意義を揺るがすことであると主張しました。

最後に川崎が力強く語ったのは、「『結局力に対して力なんだ』という空気が危険。過去の世界大戦から学んで国連ができた。国際ルールを守る世界秩序に戻そう、という意思を市民として声を上げることが社会的制裁になる。これこそが真の解決策。」ということ。そして最後に「私たち人類の生存を脅かしている、気候変動や感染症にこそ資源を使わなければいけない。」と。

<3つのセッションとリレートーク>

その後、300名の参加者が3つのセッション(分科会)に分かれて、核兵器禁止条約締約国会議への日本の参加を求める動きとともに、戦争以外の核被害を知り、市民の活動を世代を超えて広げる方法を話し合いました。ピースボートからは川崎哲がセッション①のコーディネーターを、渡辺里香がセッション②でコーディネーターを務めました。

各セッションのテーマと登壇者は以下の通り:

■セッション①「核兵器禁止条約締約国会議に向けた課題~日本の批准と参加を実現するためには~」
登壇者:
秋葉忠利さん(前広島市長)
田中熙巳さん(日本被団協代表委員)
田中美穂さん(カクワカ広島)
セッションコーディネーター:川崎哲

■セッション②「世界における核被害と環境問題~戦争以外の核被害を知る~」
登壇者:
竹峰誠一郎さん(明星大学教授)
奥野華子さん(Fridays for future Hiroshima)
木戸季市さん(日本被団協事務局長)
セッションコーディネーター:渡辺里香(ピースボート)

■セッション③「市民の活動を拡げるためには~世代を超えて想いをつなぐ~」
登壇者:
スティーブン・リーパーさん(広島平和文化センター元理事長)
岡村幸宣さん(丸木美術館学芸員・専務理事)
濱住治郎さん(日本被団協事務局次長)
高橋悠太さん(議員ウォッチ)
セッションコーディネーター:賀川一枝さん(パルシステム山梨理事)

■リレートーク
セッション①から③の登壇者に、児玉三智子さん(日本被団協事務局次長)、杉本 汐音(すぎもと しおね)さん(第五福竜丸展示館 ボランティア)も加わり、各セクションの報告やメッセージ。

<フォーラムアピールと緊急声明>

以下の二つを最後に参加者と共に発表しました。
・フォーラムアピール「今こそ核兵器の『禁止・廃絶』を実現しよう」

・緊急声明「ロシア政府によるウクライナへの軍事進攻に強く抗議します」

<参加者からの反応>

参加した方々から200件以上のコメントが寄せられました。
・このフォーラムがロシアのウクライナ侵攻というタイミングに重なったことは、登壇者の皆さんの言葉に想像以上の重みが加わったように感じました。平和で公正な世界を築くことのいかに難しいかということを思い知らされると同時に、日頃から歩みを止めずに動き続ければ、困難な事案に遭遇した時にもしっかりと向き合うことができるという確信もまた持つことが出来ました。
・若い世代の方々がさまざまな場で活動されていることも知り、心強かったです。意見がみずみずしく、共感しました。
・スティーブ・リーパーさんがおっしゃるように、私も核廃絶は日本から発信して進めて行くべきだと感じました。まずは私たちにできることをということで、今日学んだことを身近な人たちに発信していきたいと思います。
・歴史はリーダーが作るものではない。ひとりひとりが作っていくものなのだ、という当たり前のことを改めて感じました。今日、知ったこと、学んだことをさらに深めて、小さき者のひとりとして声を上げたいと思います。
・地域を超え、世代を超えた連帯に可能性を感じました。
・核廃絶は日本が鍵、日本がやらずして核廃絶には至らない。一歩でも前へ進むべく自分のやれることをやるだけですね。
・核兵器がある限り今回のウクライナ侵攻の様に脅しに使われるので、廃絶しかありません。まず足元から核兵器禁止条約のオブザーバー参加、国連常任理事国でもNATOでもない日本から粘り強く発信・交渉していきましょう。
・被爆された方々のおはなしを聞く機会がもっと必要かと改めて思いました。

<メディア掲載>

◆NHK(広島) 3月5日
ロシアのウクライナ軍事侵攻 シンポジウムで抗議の声明
https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20220305/4000016638.html
◆NHK(首都圏)3月5日
ウクライナ侵攻 被爆者「今こそ核廃絶の思いを1つに行動を」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220305/k10013516171000.html
◆朝日新聞 3月7日
非核地帯つくるべき」 ウクライナ侵攻めぐりICAN委員ら議論
https://www.asahi.com/articles/ASQ367VTSQ36PITB001.html

<アーカイブ映像>

■3/5 開催 ピースボート共催「平和・核廃絶に向けたフォーラム」(基調講演+リレートーク+アピール文の宣言)

■セッション①
核兵器禁止条約 締約国会議に向けた課題~日本の批准と参加を実現するためには~

■セッション②
世界における核被害と環境問題~戦争以外の核被害を知る~

■セッション③
市民の活動を拡げるためには~世代を超えて想いをつなぐ~


■世界核被害者フォーラム(ダイジェスト映像)

文:渡辺里香

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