2024年_ヒバクシャ地球一周(Voyage117)

核保有国フランスで市長、市議、学生と語りました(フランス前編)

小雨が降る少し肌寒い日、画家のモネをはじめるとする「印象派のふるさと」と呼ばれる美しき港町、ル・アーブルへと寄港しました。ここル・アーブルでは、一日を通しておりづるプロジェクト活動をおこないました。

まずは、ル・アーブル市に隣接する、ゴンフレヴィル・ロールシェ市の中学生に向けて証言会を実施するため車に乗り込みました。
市長であり、会の司会を自ら務めてくださったアルバン・ブルーノ市長から歓迎の挨拶と、ゴンフレヴィル・ロールシェ市は長年、核兵器反対を訴え平和の価値観を伝える教育に力を入れて取り組んでいる、という紹介から会が始まりました。

始まりの挨拶をするアルバン・ブルーノ市長

今回は市長だけではなく、市議会議員やル・アーブル平和運動団体のメンバーなど大勢が参加し、平和の根源である外交を扱う委員を代表して、ジャンポール・ルコック議員がスピーチをつなぎます。
核戦争が実際に起きるような世界情勢になっている危惧感、そして核兵器を無くすためのミッションについてお話しいただきました。

また世界中で軍事費が増大していることを懸念し、
・フランスが所有する核弾頭を搭載したミサイルの価格は、約7000人の看護師の年収に相当すること
・戦闘機1機の価格は病院2つ分を建築する金額に相当すること
など、その軍事費をほかの費用に割り当てることができたら、どれほど医療や福祉設備が整うかといった身近なものを例に出しながらの話しは、とても分かりやすく、ここに暮らす学生たちも真剣な表情で耳を傾けていました。

そして、核兵器を保有することが許されている国、許されていない国が存在していることが異常であるという発言もありました。

田中さんと話すジャンポール・ルコック議員

これらのスピーチを受けて、ICANフランス代表のジャンマリ・コリンさんは「フランス議員が、ここまで核兵器を無くすための考えを発言していることを聞いたことがなかったし、ずっと、核兵器廃絶に向けた話し合いはできないと思っていた」と驚きと感動を伝えました。

学生たちへは、現在の核兵器投下はボタン1つで完了すること、核のボタンを押してから実際に投下されるまで、いかに短時間で行われるかを”クッキーを焼いている最中の20分”で完了してしまうという例えを使い、そのボタンひとつで日常があっという間に消し飛ぶことを強調しました。

そして「今日、実際に証言を聞いたり核兵器のことを学んだりして衝撃を受けたのであれば、次はそのことを家族や友達に話すことやSNSで発信することをしてほしい」と、次の行動の一歩についても伝えてくれました。

またジャンポール議員とジャンマリ・コリンさんはともに、フランスをはじめ核保有国による核実験によって被害を受けた世界中のヒバクシャの方々についてもふれ、想いを寄せました。

市長、議員、ICANフランス代表からの挨拶が終わった後に、いよいよおりづるメンバーからの挨拶と証言がはじまりました。
今回の証言会は、被爆当時の記憶を持つ田中稔子さんの被爆証言から始まり、自身の記憶はないけれど被爆者として原爆の日を忘れないように考え「忘れないプロジェクト」を続けている小川忠義さん、そして今現在、その二人とともに世界をめぐり核兵器に関するさまざまな出会いと学びを得ているユースたちの言葉へ繋げる、という流れでした。

この話の流れには、「これから先の未来、当時のことを話せる被爆者がいなくなっても『核兵器を無くす、二度と同じ過ちは繰り返させない』という想いを伝え続けるために、証言を聞き、今を生きる自分たちはこれから何ができるのかを考えるきっかけにしてほしい」との願いを込めました。

被爆者へ質問をする学生

この想いを込めた私達の話を聞いたフランスの学生たちは、事前に原爆に学んでいたということもあり、
・アメリカでも被爆証言をしたことがありますか
・戦後は何を食べていたんですか
・「核兵器は自分の国を守るため」という人になんと伝えますか
・今の広島・長崎に原爆や放射能の影響はありますか
と、数々の疑問を率直に、そして積極的に聞いてくれました。

田中さんと小川さんと記念撮影

証言会終了後も「直接、被爆者に会えた」という貴重な経験を記録に残そうと、田中さんや小川さんに記念撮影を求める学生たちの姿が印象的でした。

 

午後の活動は後半へ分けて記載します。後半の記事はこちら

 

文:橋本舞

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