2024年_ヒバクシャ地球一周(Voyage117)

誰もがみんな、放射能を浴びる風下住民

ニューヨークからメキシコのマンサニージョまでの約2週間、水先案内人でありおりづるプロジェクトの新たなメンバーとしてメアリー・ディクソンさんが乗船しました。

※水先案内人とは、講座やワークショップなどを通して環境や社会問題などを教えてくれる先生役を担ってくれたり、時にはともに旅をする仲間として語り合ったりと、クルーズがより充実したものになるようナビゲートしてくれるピースボートクルーズの洋上ゲストのことです。

ニューヨークでの証言会終了後のメアリー・ディクソンさん

メアリー・ディクソンさんは、脚本家/劇作家として活躍するほか、長年、アメリカネバダ州で行われた核実験被害者への支援を政府へ訴える活動をしています。またユタ州ソルトレイクシティ出身のメアリーさん自身も、核実験地域の風下住民(かみしもじゅうみん)として被曝しているグローバルヒバクシャです。自分自身や家族、友人などの被曝状況を40年にわたって調べ、被害状況を調査してきました。

メアリーさん紹介企画

1950年代から60年代にかけてネバダ州では900回を超える核実験が行われており、400㎞離れたラスベガスでは核爆発によるきのこ雲見学を売りにした「核実験ツーリズム」によって観光客が押し寄せるほどでした。

しかし核実験により舞い上がった放射性降下物は3200㎞離れたニューヨークにまで届き、アメリカ全土が汚染されていることは長い間隠されてきました。
今もなおアメリカ国民のほとんどが知らないこの事実を伝えるべく、日本人監督の伊東英朗氏によるドキュメンタリー映画「サイレント・フォールアウト~乳歯が語る大陸汚染~」が制作されました。伊東監督はビキニ環礁で行われた核実験により被曝した漁船員をテーマにした映画を発表しており、この「サイレントフォールアウト」は「放射線を浴びたX年後」の第三部作目にあたります。

船内でのサイレントフォールアウト上映会

映画の中では、伊東監督の詳細な資料の分析と丹念な取材で、核兵器をもつことがどれだけ大きなリスクと引き替えなのかを浮き彫りにし、核実験により被ばくをしたアメリカ国民やその影響を研究する研究者らが登場し、当時の様子、その後を生々しく語っています。

実はこの映画にはメアリー・ディクソンさんも出演しており、伊東監督とSILENT FALLOUT PROJECTにお借りしたDVDにて船内上映し、その後メアリーさんよる上映後トークとして伊東監督との出会いのきっかけや撮影にまつわるエピソードを話していただきました。
現在この映画は、より多くの国民に観てもらうためアメリカ各地で上映するための資金集めをしていることも呼びかけました。

映画上映後のスペシャルトーク

 

「被爆者」のことを知っている人でも、核実験や核製造のためのウラン採掘などによって世界中にヒバクシャがいることはあまり知られていません。

メアリーさんは話します。
「アメリカは自国民を守るために核兵器を持つ、と言って、核実験によって自国民を常に被曝させていたのです。そして私たちは、地球のどこにいても風下住民でヒバクシャなのです。放射能被害は決して他人事ではありません」

 

(文:橋本舞)

関連記事

  1. 核が開発されたニューヨークで核廃絶について考える
  2. 田中稔子さんと小川忠義さん、ピースボートで証言の航海へ
  3. 核保有国フランスでル・アーブル副市長とも面会(フランス後編)
  4. NO NUKES -ビキニの海は忘れない- 船内写真展
  5. 2024年春の地球一周の船旅Voyage117にて再開
  6. 忘れてはいけない『あの日』への想いを伝える
  7. 9条の碑のあるラスパルマスへ
  8. バンクーバーで人道的軍縮について考える
PAGE TOP