2025年4月出航Voyage120で「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」(通称、おりづるプロジェクト)を実施します。
「改めて被爆者の声に耳を傾け、記憶をつなぐ」をテーマに
2025年、世界は第二次世界大戦の終結から80年を迎えました。それは、広島・長崎への原爆投下からの80年でもあります。二つの世界大戦への反省から、1945年には国連が発足し、国連憲章では武力行使が違法と定められました。それでも、世界で戦争が止むことはありません。核兵器使用の危険性は過去に類を見ないほど高まっています。今この瞬間も、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は続き、ガザでの虐殺と未曽有の人道危機は続いています。
そのような状況で、2024年、核兵器のない世界を目指す草の根からの運動と被爆体験の証言によって核兵器使用の手を抑えてきた並々ならぬ努力が評価され、日本原水爆被害者協議団体(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。この受賞をきっかけに、被爆の実相を世界の多くの人が直接聞き、核兵器と人類が共存できないという国際的な世論を高める大きな機運となるでしょう。そして、被爆者や世界の核実験被害者の経験を中心にして、核兵器禁止条約の世界的な支持も広げてゆかなければなりません。
(今回乗船いただく渡辺淳子さんは日本被団協代表団の一人としてオスロを訪れ、授賞式や晩餐会などの公式イベントに参加しました。
また、倉守照美さん、福島富子さんはピースボートと原水爆禁止日本協議会(原水協)が協力して実施した「祝!日本被団協ノーベル平和賞授賞式行動ツアー」にてオスロを訪れ、授賞式のパブリックビューイングや松明パレードに参加し、日本被団協の受賞をお祝いしました。)
ピースボートは、被爆国・日本を本拠とする国際NGOとして「核兵器の非人道性を世界に訴え、核兵器のない世界を実現する」という使命のもと、戦争の被害を知る世界の人たちとつながりながら、国境をこえて記憶をつなぎ、世代をつなぎ、核兵器のない平和を訴えます。また、核や戦争に頼らない平和の築き方をともに考えます。
5名(2名:地球一周 3名:部分乗船)の被爆者が乗船
伊藤正雄(いとうまさお)さん【横浜〜横浜(クルーズ全期間)】
広島被爆 1941年1月31生まれ 被爆当時4歳
広島県広島市在住
爆心地から3.5km地点の自宅前の道路で三輪車に乗って遊んでいるときに被爆。爆風により吹き飛ばされるも軽傷ですみ、逃げ込んだ防空壕で黒い雨に遭う。
ヒロシマピースボランティアとして活動を開始し現在まで、広島を訪れる世界からの旅行者を資料館に案内し続けている。
倉守照美(くらもりてるみ)さん【横浜〜横浜(クルーズ全期間)】
長崎被爆 1944年1月8日生まれ 被爆当時1歳
長崎県長崎市在住
爆心地から5.8kmの地点で被爆。母親と幼い兄姉と一緒に防空壕へ避難していたため無事。
被爆当時1歳であり記憶はないが「長崎を最後の被爆地に」という想いから、高校生1万人署名の高校生たちや在韓被爆者と被爆証言や交流・意見交換など多くの活動に尽力してきた。
福島富子(ふくしまとみこ)さん【横浜〜シンガポール】
長崎被爆 1945年1月21日生まれ 被爆当時生後6か月半
神奈川県原爆被災者の会(日本被団協の神奈川県組織) 副会長 葉山支部 会長
爆心地より2.5kmの自宅で被爆。自宅と爆心地の間に小高い丘があり直接的な被害を免れる。
被爆当時の記憶はないが、2024年4月より現在94歳の長崎被爆者の交流証言者に認定され、講話活動をおこなっている。
メアリー・ディクソンさん【ベルゲン(ノルウェー)〜ニューヨーク(米国)】
脚本家、風下住民
作家・脚本家・ユタ州ソルトレイクシティ出身の風下住民、甲状腺がんサバイバー。核実験被害者への援助を国際的に訴える活動家。2012年、核実験被害者たちのために行った長年の功績が認められAlliance for Nuclear Accountability(核のアカウンタビリティーための連合)から栄誉を称えられた。
渡辺淳子さん【ニューヨーク(米国)〜プンタレナス(コスタリカ)】
広島被爆 1942年11月28日生まれ 被爆当時2歳
ブラジル在住
広島で爆心地より18km 地点にて黒い雨を浴びて被爆。1967年に結婚を機にブラジルに移住。2013年から被爆証言を盛り込んだ演劇を始め、これまでに57回公演を実施した。
また戦後80年を迎える2025年、ピースボートは「TIME FOR PEACE(今こそ平和を)」と題した特別プロジェクト(https://peaceboat.org/49857.html )を実施し「過去の戦争をみつめ、未来の平和をつくる」というピースボート創設時の理念を掲げ直し、平和構築や紛争予防などで活動する個人やグループに乗船いただきます。
おりづるプロジェクトもその一環として乗船いただいたゲストとともに連帯し、寄港地や船内での被爆証言会や交流などを通して多方面から平和について考えます。
・参加ヒバクシャ略歴
・Voyage120_ プロジェクト概要
(文:渡辺里香)