2025年_ヒバクシャ地球一周(Voyage120)

美しい島、モーリシャスでの交流と学び

4つ目の寄港地、ポートルイスに到着しました!
からっとした気候の中、涼しい風が吹き抜けていてとても過ごしやすい一日となりました。

港のすぐ近くにはショッピングモールがあり、買い物や散策を楽しみながらモーリシャスの雰囲気をみんなで満喫!
昼食にはビリヤニをはじめ色んなローカルフードをいただき、旅の楽しみの一つでもある「食」の魅力も感じることができました。

美味しいローカルフードに心も体も満たされました

午後は船に戻り、夕方から始まる交流セッションに備えました。
このセッションには、モーリシャス大学農学部のNadeem Nazurally准教授と学生たち、ピースボート災害支援センター(PBV)の現地パートナーである環境保護団体EPCOのDakshさん、そして同団体のインターンの皆さんが参加してくださいました。参加者は十数名で、国籍や立場の違いを越えた貴重な対話の場となりました。

まず最初に、ピースボート共同代表であり核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営委員でもある川崎哲による「ノーベル平和賞洋上特別展」の案内がおこなわれました。
皆さんとても真剣な表情で展示を見学されていたのが印象的でした。多くの参加者がメッセージブックに感想を書いてくださり、それぞれの思いが記録として残りました。

「ノーベル平和賞洋上特別展」を見学するゲストたち

その後は、被爆者による証言会が開かれました。
まずは長崎被爆者である倉守照美さんのお話です。放射能は長期に渡り身体に影響を与えること、父親を原爆症で亡くしたこと、そして家族から笑顔が消えてしまった日々について語り「家族が健康で笑顔で過ごせる日常こそが平和なのです」という言葉がとても心に残りました。
また、2020年にポートルイス沖で日本の貨物船から重油が流れ出た座礁事故についても触れ「核兵器の使用や実験も環境を破壊する行為。核兵器をなくすことは、自然を守ることにもつながる」と力強く伝えました。

次にお話しいただいたのは、広島被爆者の伊藤正雄さん。4歳で被爆したため当時の記憶は曖昧ですが、避難してきた人々が自宅で亡くなり、その遺体を空き地に運んで石油をかけて焼くという日々が一週間続いたことは、今でも嫌な記憶として脳裏に焼き付いていると語られました。現在は、広島平和記念資料館でボランティアガイドや被爆伝承者としての活動に力を入れています。
2017年に核兵器禁止条約が国連で採択された際、「世界中に核廃絶を願う仲間がいると知って涙があふれた」と語られる姿がとても印象的でした。まだ条約に批准していない日本政府に対しても、署名活動を続けていきたいと強い意志を示されていました。

証言会の様子

Q&Aセッションでは、Nadeemさんから「皆さんにお会いできて大変光栄です。核廃絶に向けた力強いメッセージ、勇気を持ってシェアしてくださりありがとうございました」との言葉がありました。
「原爆が投下された場所を訪れるとき、どのような感情を抱きますか?」という質問に伊藤さんは「街はとても綺麗に再建されていますが、心の中に癒えない傷を抱えている人はまだたくさんいます」と静かに答えられました。

また、EPCOのDakshさんは「(体験者から)実際の証言を聞けたことは非常に意義深く、平和を守るためにも、戦争を阻止するためにも大きな意味がある。今まさに核兵器を使おうとしている国々への抑止力になると感じた」と話してくださいました。

ゲストの皆さんにプレゼントした9条プレートと共に

 

セッション終了後には自由に交流を楽しむ時間があり、参加者同士で話したり感想を共有したりしました。
モーリシャスの方々からは
「被爆者の証言を直接聞くことができたのは初めてで、とても感動した」
「政治的な目線ではなく、人としての目線で核兵器について考える貴重な時間だった」との感想をいただきました。
また、Nadeemさんは過去にピースボートに水先案内人として乗船された経験があり、今回は嬉しい再会にもなりました。短い時間ではありましたが、草の根の交流を通じて新しい繋がりが生まれた、かけがえのないひとときとなりました。

モーリシャスの自然はとても美しく、青く広がる海と穏やかな風が私たちの心を癒してくれました。この美しい自然、そして地球を守るためにも、核のない世界を目指してこれからも一歩ずつ行動を続けていきたいと強く感じた一日でした。

(文:高尾桃子)

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