2025年_ヒバクシャ地球一周(Voyage120)

戦争の記憶から平和の対話へ 〜戦争も核もない未来をともに描く〜

6月7日、ピースボート船内で、中文スピーカーに向けた被爆証言会を実施しました。
タイトルは「戦争の記憶から平和の対話へ 〜戦争も核もない未来をともに描く〜」
登壇したのは、おりづるプロジェクトで乗船中の倉守照美さん(長崎被爆者)と、伊藤正雄さん(広島被爆者)。証言会はスタッフと被爆者から次のような挨拶で始めました。
「日本はかつて、アジア諸国を中心に植民地支配や侵略を行いました。その中で広島や長崎にも、多くのアジア出身の方々が労働のため強制的に連行され、原爆の犠牲となったという事実があります。私たちはこの日本の加害の歴史にもしっかりと向き合いながら、二度と同じことが繰り返されないように、被爆の実相を伝え、国籍や民族を超えて平和を願う仲間を広げていきたいと考えています。」

被爆者による証言の様子

 

倉守さんは、原爆投下当時の直接的な記憶がありませんが、自身が感じている放射能の人体への影響や、差別の体験を静かに話します。
「私は被爆者であることで、娘までが結婚のときに差別を受けた」と語るその声に、参加者は真剣に耳を傾けました。放射能は、世代を越えて人の尊厳を脅かし続ける。倉守さんはその現実を改めて伝えてくれました。
「長崎を最後の被爆地に。戦争も核兵器もない、明るい地球を子どもたちに残したい」
彼女が最後に語った言葉は、私たち一人ひとりの心に響きました。

一方、伊藤さんは、4歳のときに体験した原爆投下の記憶を語りました。
腐敗した遺体の異臭や、遺体が火葬される時の嫌な匂い。「その時の光景だけは私の脳裏に焼き付き、未だに離れることはありません」
伊藤さんは現在、原発の運転差し止めを求める裁判にも関わっています。核兵器も原発も、人間のコントロールを超えた脅威であることは共通していると語りました。そして最後に、「核のない世界を目指して、一緒に声を上げていきましょう」と呼びかけました。

真剣に耳を傾ける参加者たち

 

証言の後に設けられた感想共有の時間では、参加者から次々と平和を願う温かな言葉が溢れました。
「被爆者の証言に深く心を動かされた。日本からのお詫びの言葉を聞けて嬉しかった。これからは、ともに美しく平和な世界をつくっていきたい」
「戦争はいつも権力者から始まる。一人ひとりは小さな存在かもしれないけれど、民意を広げることが大切」
「核の研究が進む今だからこそ、声を上げる必要がある。共に働きかけていきたい」

この時間を通して感じたのは、「対話は、分断を乗り越える力を持っている」ということです。
「被害の記憶」と「加害の歴史」の間には確かに深い断絶があります。けれど、その溝を少しずつ埋めていくのが、まさにこうした対話の積み重ねなのだと実感しました。

温かい感想を共有してくださった参加者たち

 

最後に、参加者の皆さんと手を取り合い、集合写真を撮影しました。笑顔にあふれたその瞬間、そこにあったのは確かに「平和な空間」でした。
また、今回の企画には、中文CC(コミュニケーション・コーディネーター)の仲間が多くのサポートをしてくれました。対話が建設的かつ温かいものになるよう進行してくれた彼らに感謝しています。
戦争も核もない未来を描くために、必要なのは「記憶を語ること」と「耳を傾けること」。そして「対話を続けること」です。

過去の痛みを共有し、未来の平和をともに願う仲間がまた一人、また一人と増えていくこと。それこそが、平和の第一歩だと信じています。

最後に皆で手を取り合って記念撮影

 

(文:高尾桃子)

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