1.ヒバクシャ証言の航海

タヒチ、オーストラリア、日本の3カ国で「若者の提言」をつくりました

高校生平和大使によるレポート、第二弾です!
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ピースボートが横浜を出航し、最初の寄港地であるタヒチのパペーテに到着するまでの14日間、洋上で「グローバル・ヒバクシャ・フォーラム」が開かれました。このグローバル・ヒバクシャ・フォーラムでは、日本、オーストラリア、タヒチ(仏領ポリネシア)の3カ国の核被害者と核廃絶への活動意欲を持つ若者が、互いの国での核問題について連日話し合い、共同提言を作成しました。

$    ピースボートのおりづるプロジェクト-アラン
タヒチの現状を語るアラン・グディング(元核実験場労働者の2世)

タヒチの現状

フォーラムはまず、各国の被害状況の報告により、メンバーが互いに核問題の実像を把握することから始まりました。タヒチでは、モルロア環礁やファンガタウファ環礁においてフランスの核実験が行われて続けてきましたが、核実験場の作業員の健康被害など、放射能の被害が深刻になっています。1966年から1996年の30回で行われた核実験は、大気圏内で46回、地下で147回にも上りました。

現地の元作業員はフランス政府に補償を求めて「モルロア・エ・タトゥ」(モルロアと私たち、MET)という団体を立ち上げましたが、フランス政府は核実験場の危険性を否定しています。

しかし、核実験によって幅2メートルもの断層が生じ、また、地下実験が地盤沈下を招いているという事実があります。「この環境の変化は、環礁の崩壊と15メートルの巨大な津波を引き起こすという将来の危険をはらんでいる」--2011年1月27日、フランス国防省はこれを正式に認めました。

それにもかかわらずフランス政府が人体や環境に対する被害を核実験の影響として認めないことは、現在の大きな問題です。

また、タヒチの学校では、核の危険を若者に伝えることがないといいます。METは真実を伝えることを、タヒチの若者は情報の共有を課題としています。

日本からの報告

日本からは被爆者の証言に加え、被爆2世・3世・在外被爆者の補償問題について報告しました。日本政府は被爆者の子孫や日本国外に住む被爆者(外国人を含む)に対して十分な補償を行ってきませんでした。日本の高校生平和大使は核廃絶を求める署名活動を紹介し、共に署名を集めて国連事務総長に届けることを提案しました。

    ピースボートのおりづるプロジェクト-今野英里子
今野英里子

オーストラリアのウラン採掘と先住民族

オーストラリアからも2011年1月26日から29日にかけて、四度の講義がありました。1日目はオーストラリアのウランによる被害について。ウランは核の原料になる物質なのですが、オーストラリアのウラン鉱山でとれるウランの量は、世界中でとれるウランの多くを占めています。

オーストラリアが直面している問題は、ウランから出る放射線の被害ばかりではありません。大量の放射性廃棄物も密封して地下に埋めるしかありません。また、ウラン鉱山として一度採掘してしまった地域では、有害物質が水などに染み出すため、生態系を破壊して、二度と人が住める状態に戻すことができないといいます。被害者は主に、アボリジニ(先住民族)の人々です。ウラン鉱山は約150カ所もあるので、どこで誰が被害にあったのか特定できず、何の補償もないのが現状だといいます。

2日目は、この現状を変えていくために行っている活動について学びました。オーストラリアには、国内外のウラン鉱山に対抗するために4つの団体があり、定期的に環境問題や持続可能エネルギーについて話す会議やワークショップ(研修会)を開いているとのことです。また、地方やアボリジニのところを訪ね、危険性を知らないまま働かされている人にウラン鉱山の危険性を知らせたり、若者向けのイベントを開いて広く賛同者を集めていて、活動の規模は全土におよんでいます。

3日目は、イギリスにより過去3度おこなわれた核実験について学びました。オーストラリアでは、軍事機密として今でも詳細な情報は一般の人々に回ってこないのだといいます。4日目は、お互いの国への質問会でした。

アボリジニたちの願いはただ一つ、「先祖代々の文化や土地を守りたい」ということです。ウラン採掘によって土地や動物を毒まみれにすることや、6万年前から続く文化が消えることを彼らは許したくないのです。オーストラリアで大自然と共存してきた彼らは、魂と土地との関係を切られれば生きていけません。

    ピースボートのおりづるプロジェクト-大神櫻子
大神櫻子

私(大神櫻子)は、高校生平和大使・署名活動のメンバーとして核兵器の廃絶と平和な世界の実現に向けて活動してきましたが、このようなウランの問題について考えたことはありませんでした。ウラン採掘(オーストラリア)→核実験(タヒチ)→原爆投下(日本)というように、各国の問題はバラバラなように見えて実は互いに繋がっていたのだと初めて知りました。世界中で採掘されるウランの多くを占めるオーストラリアの抱えるこの問題は、多くの国にとって、もちろん日本にとっても無関係ではありません。アボリジニの声に耳を傾けよう!地球と共存するために私たちはどの選択をしなければいけないか私たち一人ひとりが考えなくてはなりません。

若者の提言

以上より、3カ国が共通する問題は人体に対する放射線の被害とその補償の欠落でした。放射線はウラン(原子力の資源)やそれから製造されるプルトニウム(発癌性のある核燃料。核兵器に含有される)等の物質から発せられます。見たりかいだり閉じこめたり防いだりすることもできない放射線は体の遺伝子を傷つけるため、発癌性リスクを高め、傷ついた遺伝子(体の設計図)を子に受け継がせることになります。「放射線の被害は後の世代にも降り注ぐ。核がある以上、これから全世代がこの問題に直面せざるを得ない。」その認識のもと話し合いを重ね、3カ国の若者は6つに特定した問題とその解決法を考えました。

グローバル・ヒバクシャ・フォーラムの成果として「若者の提言」を完成させる必要があったため、全員の会議に加え、各国のグループ内での作成作業を連日夜遅くまで続けました。私たちは寝不足のなかで互いを励まし、3カ国から船上に集って核問題を深く話すことの貴重さを再認識し(自分に言い聞かせ)ながら頭を働かせました。以下が、提言の内容(骨子)です。

$    ピースボートのおりづるプロジェクト-若者の議論
「若者の提言」を作る作業

3カ国の若者による提言の骨子





テーマ問題                   解決法

1 核問題に対する共通理解           理解度の地域差       学校や共同体での教育
 情報操作の存在

  2 “核世代”        
   人体・環境への悪影響の        放射能の恐ろしさを伝える
                        継承 

  3 国内外の政治       
   被害の情報の隠蔽や           求める補償を明確にするために   議論を行う                「安全保障」という名前で                        正当化
                      (核の連鎖を続かせている)

  4 病気と環境の問題     
   放射性物質が生態系に影響         清掃を協力して行う
   地震・津波の危険を増幅          被害報告を行う

  5 人々の核問題への関わり
   危険性を知らない人も多い  

   映像・アニメ・マンガ・ウェブサイト

   ・歌・本により核廃絶の必要性を発信。

   楽しい企画を通じてネットワークを広げる。
   メルマガを作り3グループのニュースを書く。

高校生平和大使として参加した私たちですが、日英仏の3言語が飛び交い通訳の方の助けを大いに借りたフォーラムは、さながら国際会議のようでした。日程が詰まって大変だったので皆が働き過ぎを自覚していたという面白い企画でもありました。帰宅したら早速PCで連絡をとろうと思います。

(帰路の機内にて)

(第13代高校生平和大使
今野 英里子 ・ 大神 櫻子)

    ピースボートのおりづるプロジェクト-交流会

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