1.ヒバクシャ証言の航海

おりづるプロジェクト ~2025年の歩み~

広島・長崎の被爆から80年を目前に発表されたのは、日本被団協のノーベル平和賞受賞でした。その機運を得て被爆80年の2025年は、改めて原爆の悲惨さ、被爆の証言をより多くの人々が聞き考えました。日本国内でも世界でも、被爆者のみなさんがこれまで以上に被爆の実相を語り、核兵器への危機感と関心の高まりを感じた一年でした。

「TIME FOR PEACE(今こそ平和を)」の一環でおりづるプロジェクトを実施

ピースボートも「過去の戦争をみつめ、未来の平和をつくる」というピースボート創設時の理念を掲げ直し、「TIME FOR PEACE(今こそ平和を)」と題した特別プロジェクトを行いました。今回はこのTIME FOR PEACEの一環としておりづるプロジェクトも行い、広島・長崎の被爆者4名と核実験被害者が乗船しました。今も戦禍を生きるたくさんの人たちがいることに目を向けながら、世界の平和と核兵器廃絶を改めて希求する取り組みとなりました。
記録映像はこちら:https://youtu.be/n0OjkY7KDwE

ノーベル平和賞洋上特別展「A Message to Humanity」

また、ノルウェーのノーベル平和センターと提携協定を結び、2024年のノーベル平和賞受賞団体である日本被団協の活動を紹介するノーベル平和賞洋上特別展「A Message to Humanity」をピースボートの船で実施しています。

そして2026年1月には核兵器禁止条約が発効から5年を迎えます。この条約は、被爆者、世界の核実験被害者、市民社会が地道に作り上げてきたものが、2017年に採択、2021年に国際法として発効したものと言えます。そして、この5年で世界の半分以上の国が加わるところまできました。2026年は、核廃絶に向けた国際的な進展が問われる重要な一年となります。4-5月の第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議、そして11-12月の第1回核兵器禁止条約再検討会議を生かして、世界の過半数の国とともに、盛り上げていかなければなりません。

ピースボートはこれまでのべ180人の被爆者のみなさんと航海し、核兵器禁止条約を作り上げ、発展・展開させる一助を担ってきました。これからは地球一周を通してのプロジェクトではなく、部分乗船を基本として新たな形を模索しながら続けていきます。

 

【2025年国内外での取り組み】

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)や核兵器をなくす日本キャンペーンなどと連携し、広島、長崎、東京にて様々な活動を行いました。昨年の日本被団協のノーベル平和賞受賞という後押しもあり、各地で注目され、新たな連携が生まれた年となりました。

被爆80年核兵器をなくす国際市民フォーラム

・2月8~9日、東京の聖心女子大学で「被爆80年核兵器をなくす国際市民フォーラム」が一般社団法人核兵器をなくす日本キャンペーン主催で開かれ、ピースボートも様々な形で運営に協力しました。約900人が参加して、核兵器禁止条約の普及、東アジアの緊張緩和、被爆や核実験被害の継承、環境への影響、市民社会の役割などが議論されました。日本被団協代表の田中煕巳さんが基調講演を行い、このフォーラムから作成された提言書は核兵器禁止条約第3回締約国会議に提出されました。

・3月3~7日、ニューヨーク国連本部で核兵器禁止条約(TPNW)第3回締約国会議が開催され、ピースボートも参加しました。会議では核兵器を明確に否定し、核抑止力の正当性に挑戦する政治宣言が採択され、条約の実効性を強化する決定がなされました。世界各国の政府関係者や市民社会が集まり、被害者支援や条約普及に関する文書も提出されました。日本からは与野党議員が参加し、被爆者と市民社会の声を国際的な運動につなげる活動が行われました。

国連パビリオンとの共催で「TIME FOR PEACE」レセプション

・8月10日、大阪・関西万博の国連パビリオンとの共催で「TIME FOR PEACE」レセプションを開催しました。これは、第二次世界大戦終結と国連創設から80周年を記念し、万博テーマ「平和と人権」の一環として実施されたものです。60以上の国・地域から650名以上の方が、大阪港に停泊中のピースボートに集まりました。参加者は紛争地での人道支援や核軍縮の必要性について確認し、日本被団協代表委員の田中煕巳さんの被爆証言に耳を傾けました。「平和は理想ではなく権利であり、日々守り育むべきもの」という強いメッセージを世界に発信する場となりました。

歌手の加藤登紀子さんによる詩「広島 愛の川」の朗読

・8月17日、横浜港に停泊中のピースボートに、日本被団協のメンバーを含む約300名が集まり、ノーベル平和賞洋上特別展「A Message to Humanity」とVoyage120の報告会を開催しました。船でつくられた歌「TIME FOR PEACE」の演奏と、歌手の加藤登紀子さんによる漫画『はだしのゲン』の作者である中沢啓治さんが亡くなる数年前に残した詩「広島 愛の川」の朗読も行われました。

子ども平和メモリアル

・8月全般 原爆投下から80年を迎え、特に8月から10月にかけて集中的にピースボートはICANや国内外の団体と連携し、広島・長崎・東京で核兵器廃絶に向けた多様な活動を展開しました。記者会見や国会議員討論会、原水禁世界大会での発言、オンライン配信などを通じて被爆者の声を広め、核抑止論の危険性や東アジアの緊張緩和の必要性を訴えました。さらに「子ども平和メモリアル」(被爆死した子どもたちの存在とストーリーを集め、核兵器がもたらす重大かつ増大する脅威について、世界中の人々の意識を高めるウェブサイト)など新たな取り組みも紹介され、若い世代への継承と市民社会の役割強化が強調されました。

国連本部での「核兵器廃絶国際デー」

・9月26日、国連本部で「核兵器廃絶国際デー」に合わせたハイレベル会合が開かれ、日本被団協代表理事の田中聡司氏が発言しました。田中さんは「人類は核兵器と共存できない」と訴え、被爆者の声に耳を傾ける重要性を強調しました。この日、キルギスとガーナが核兵器禁止条約に新たに参加し、加盟国は世界の過半数に達しました。ピースボートやICANも協力し、被爆者の証言を国際社会へ届け、核兵器廃絶に向けた市民社会の役割を示しました。

沖縄で被爆証言をする小谷孝子さん

・10月、旅行会社たびせん・つなぐと共催で「沖縄証言ツアー」を実施し、関東や九州から参加した中学生から80代までの15名が沖縄戦の戦跡や米軍基地の現状を学びました。広島被爆者・小谷孝子さんによる証言会も行われ、沖縄の人々に原爆被害を伝える機会となりました。参加者は摩文仁の丘や首里城跡、恩納村の核ミサイル発射台跡などを訪問し、戦争の爪痕と現在の基地問題を体感。証言会では「悲劇を繰り返さないため戦争をしてはならない」との強いメッセージが共有されました。

広島-ICANアカデミー2025の参加者、平和公園でのフィールドワーク

・7月から10月にかけて「変革の時代に平和を築く」をテーマに、「広島-ICANアカデミー2025」が開催されました。オンライン学習と広島での対面セッションを通じ、約300名が核兵器の人道的影響や核抑止論、軍縮の課題を学びました。広島・長崎の被爆者や核実験被害者の証言、専門家による講義、国際機関との対話を通じて、参加者は核兵器廃絶と平和構築に向けた新たな視点を得ました。最終日には行動計画が発表され、次世代の平和担い手育成の場となりました。

・10月、長崎で第24回核戦争防止国際医師会議(IPPNW)世界大会が開催され、「核なき世界―長崎を最後の被爆地に」をテーマに、医師や学生が核兵器廃絶と被爆80年の意義を議論しました。続く11月には広島で第63回パグウォッシュ会議世界大会が開かれ、科学者や研究者が「被爆から80年―今こそ平和、対話と核軍縮を」をテーマに核抑止からの脱却と安全保障の新たな道を探り、「広島宣言」を発表しました。ピースボート共同代表であり、おりづるプロジェクト前ディレクターの川崎哲が参加しました。

防衛省前での要請行動

・12月、総理官邸の幹部の「日本は核兵器を保有すべき」との発言に対して、この発言に強く抗議し、日本の核兵器禁止条約への参加を求める声明を出しました。https://peaceboat.org/53074.html

「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」を通して、これまでに180人の被爆者の方々とともに核兵器の恐ろしさと人道に反する被害の実態を世界の人々に伝えてきたピースボートとして、決して容認できません。

また、12月23日には外務省と防衛省に要請書を手渡し要請行動もしました。

文:渡辺里香

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