1.ヒバクシャ証言の航海

平和の先進国@スウェーデン

みなさんこんにちは。
ピースボートインターンの鈴木慧南です。

6月2日(金)にスウェーデンのストックホルムに寄港したので、その時の様子をお伝えします。

スウェーデンは高福祉国家や平和の先進国として知られています。
19世紀のナポレオン戦争以降、200年以上に渡って戦争には参加せず、今日においても北大西洋条約機構(NATO)に加盟しておりません。
欧州安全保障協力機構(OSCE)などの多国間協力に力を入れており、国連PKOなどの平和協力活動に積極的に参加しています。
核兵器禁止条約の推進グループとは一定の距離を保ってきましたが、それでも昨年の国連決議には賛成票を投じ、今年3月の交渉会議にも参加しています。
また、昨年から政府に25年ぶりに軍縮大使という役職ができ、貿易などの外交を担当していた女性のエバ・バルダー(Eva Walder)氏が務めています。
このように、平和に前向きな国においての証言活動となりました。

まず、Didaktus高校に訪問し、歴史の授業の一環として被爆証言を行いました。
スウェーデンは移民や難民の受け入れが多い国でもあるので、その高校もまた、多国籍でした。
この高校は大学に進学するためだけに授業をするだけではなく、自分で起業をする学生を育てることにも力を入れている学校でした。


Didaktus高校

ここで証言を行ったのは、広島の被爆二世である山村法恵さんです。
約80名の学生を前にして、はじめは緊張していましたが、徐々に自分のペースを取り戻し、次第にいつも通りの証言をされていたと思います。
証言を聞いた学生たちからは、
・アメリカに対して何を思っているのか?
・二世への放射能影響をどういうときに感じたのか?
・原発を持っていることについてどう思うか?
など、答えるのに一苦労するような質問が飛び交いました。


証言をしている山村さん


証言を聞いている生徒たち

その後、残ってくれる学生を集めて、2つのグループに分かれてディスカッションを行いました。
そこではさらに突っ込んだ細かい議論ができていたため、被爆証言を聞いた後だからこそ、考えられたことなのではないかと思います。
特に印象的だと思ったのが、「なぜ日本は核の被害を受けていながら、核に関する教育が遅れているのか?」という質問でした。
確かに私の学生時代を振り返ってみても、「核」というものについてしっかり勉強したのは、大学で自発的に受講した授業が初めてでした。
それに対してはメンバーの中でも「政府が過去のことを清算しようとしている」や「現在原発が日本にはあるから都合の悪いことは教えたくなかったのでは?」などの回答がありました。
個人的にはもっとそういったことについて幼い時から教えて欲しかったと感じています。


生徒さんたちとの記念写真

次に、冒頭でも紹介した外務省の軍縮大使であるエバ・バルダー大使と面会しました。
65歳の彼女はとても穏やか雰囲気で迎え入れてくださり、その気遣いによって私たちの緊張もほぐれたと感じています。

ヒバクシャ国際署名の署名用紙に目をこらすエバ・バルダー大使

ここで証言を行ったのは広島で被爆された田中稔子さんです。
稔子さんは自身の被爆体験も丁寧に話した後に、日本の核兵禁止条約に対する態度も正直に話し、積極的に周りの国から核兵器禁止条約を締結し、それをプレッシャーとして日本も賛同するように呼びかけたいと訴えました。


証言をする田中さん

エバ大使からは、核兵器禁止条約の必要性や現在出ている草案のことなどを踏まえて、前向きに積極的に締結へ向けて国として動いている旨を話していただきました。
そして、6月15日から行われる第2回目の核兵器禁止条約の交渉会議の場で再会しましょう、と約束してくださいました。


エバ大使との記念写真

一国の重要な役職にある方に、証言を直接伝えられたことは意味のあることだと思っています。
もともとスウェーデンは核廃絶に積極的な国ですが、武器産業として武器の輸出を行っているという矛盾もあります。
この出会いがきっかけとなって、武器産業の廃止にも繋がっていったらと思います。

ピースボートの船旅もあっという間に半分を終え、ヨーロッパの寄港地ラッシュも残り2寄港地だけとなりました。
振り返る暇もないほど忙しい日々から抜け少し洋上が続くので、今までの寄港地の証言会を振り返りつつ、残りの寄港地での出会いも大切にしていきたいと思います。

ピースボートインターン 鈴木慧南

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