2008年_第1回ヒバクシャ地球一周(第63回ピースボート)

4名の代表団、バルセロナへ カタルーニャの平和施策に感激

ヒバクシャの声や各寄港地の人々の声を国際社会に届けるため、102名を代表して4名のヒバクシャが本船を離れ、ニューヨークに飛び、国連総会に参加することになった。この国連代表団には、節子サーロー、中村キクヨ、森田隆、吉田勲の4名が選ばれた。広島被爆と長崎被爆が2名ずつ、男女2名ずつで、“ベテラン”も“若手”も含み、かつ、カナダとブラジルの在外ヒバクシャも含む人選となった。これにスタッフの川崎哲と白石佳世が加わっている。本ブログではこれから、国連代表団からの報告を川崎哲から発信し、船からは今まで通り竹内滋郎が発信することで、船と陸の両方から随時アップしてく。

 10月19日、代表団はトルコのイズミルを発ち、まずはバルセロナに飛んだ。バルセロナはスペインのカタルーニャ自治州の首都である。同自治州の政府や議会はヒバクシャ100名の来訪を心待ちにしてくれていたが、船の遅延により当初日程での訪問が不可能となっていた。そこで、国連代表団が先回りして訪問することにしたのだ。

 10月20日のカタルーニャ政府および議会は、議会議長自らがヒバクシャ代表団を歓待するなど、熱烈な歓迎ぶりをみせた。代表団はそれに心を打たれたばかりでなく、カタルーニャに根付いた行政・市民社会一体の平和の取り組みに強い感銘を受けた。

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カタルーニャ州議会を訪問した一行。議員たちと

一行はまず、カタルーニャ自治州政府のハビエル・バディア・イ・カルドス平和人権局長と面会した。局長は、同政府が一貫して平和と人権の促進に努めていること、また、地元のNGOと協力しており、自治州政府として国際平和ビューロー(IPB。ノーベル平和賞も受賞したスイスに本部をもつ国際NGO)に加盟していることを説明してくれた。

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カタルーニャ州自治政府・内務省のハビエル・バディア・イ・カルドス平和人権局長

 カタルーニャ地方は、1936年から1939年のスペイン内戦において、ドイツ・イタリアのファシズム政権に支援されたフランコ将軍の反乱に対して、人民戦線として戦った歴史をもつ。独立・自治の気質の高い地方としても知られている。カタルーニャの人々は、スペイン内戦における爆撃をはじめとする多大な犠牲を経験した。さらに、内戦に勝利したフランコが1975年の死没までしいた独裁政治の下で人権侵害に苦しんだ。

 こうした内戦や独裁政権下での被害と人権侵害について、カタルーニャ自治州政府は昨年より本格的な「歴史の記憶発掘」作業に乗り出している。この取り組みについて、自治州政府のイグナシ・サルダ・リコ「歴史記憶部」部長が直接説明をしてくれた。このような歴史発掘を行う部局が現在新設された活動をしているということじたい、ヒバクシャ代表団に大きな驚きと感動を与えた。

 スペイン内戦はファシズムと反ファシズムの戦いという意味において第二次世界大戦の前哨戦ともいえる戦争であった。カタルーニャの人々と日本のヒバクシャの出会いは、第二次世界大戦の「前」と「最後」の犠牲者たちの出会いともいえる。

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カタルーニャ州議会を訪問する代表団

 続いて訪れたカタルーニャ州議会では、まずエルネスト・ベナチ議長が中村キクヨさんと議会の会見場にたち、歓迎の挨拶を述べた。その挨拶は、核兵器の無差別大量殺戮という性格を本質的に批判する力強いものであった。会見場には地元メディアのテレビカメラがずらりと並んだ。

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州議会会見場。おりづるのレイをかけたベナチ州議会議長(中央)。その右が中村キクヨさん

 

 一行はさらに、州議会のなかで国際協力の立案などを担当する「連帯・協力委員会」のホセ・アントニオ・ドナイレ・ベニト委員長以下計6名の議員と会合をもった。そこには、「NOVA(社会革新)」および「平和財団」という地元の有力なNGOメンバーも参加した。当地では、議会の委員会の審議にNGOが参加することが日常的に行われているという。

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カタルーニャ州議会の「連帯・協力委員会」。核兵器禁止の決議が提案された

 会合では、吉田勲さんと節子サーローさんが自らのヒバク体験を証言したのに続いて、ピースボートの川崎哲が、あらかじめこれら地元NGOと共同で起草しておいたカタルーニャ州議会の「核兵器禁止に関する決議案」を提案した。これは、核不拡散条約(NPT)に基づく核軍縮・不拡散努力、NATOやEUによる核軍縮努力、そして、平和市長会議が掲げる「2020年までの核兵器全廃」を支持するよう、カタルーニャ州議会が決議するとともに、スペインの中央政府に対しても同議会が働きかけるように求める内容である。ホセ・アントニオ委員長はこの提案を前向きに受け止め、NGOによる起草作業に感謝の言葉を述べた。

 その後、これら議員たち、NGOメンバーとヒバクシャとの昼食会が2時間近くにわたり議会のなかで行われた。ゆっくりとした昼食のなかで議員たちは、放射線被害の実態、ヒバクシャに対する社会的差別、日本政府の政策などについて、積極的に質問をし、代表団と語り合った。

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昼食会で議員たちに語りかける節子サーローさん(右)と吉田勲さん

 代表団の4名は、この1日だけでカタルーニャの新聞3紙、テレビ2局とラジオ1局の個別インタビューを精力的にこなした。朝8時過ぎから活動を開始して夜には飛行機でマドリッドに移動するという強行軍であったが、夜にバルセロナ空港に向かうタクシーのなかで森田隆さんは「あれ、あなたが日本から来ている原爆の被害者ですか」と声をかけられたという。すでに昼間からテレビで流れていたのである。疲れも吹き飛ぶ瞬間であった。
(マドリッド=川崎哲)

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カタルーニャのテレビ局「TV3」の取材を受ける4名

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