2008年_第1回ヒバクシャ地球一周(第63回ピースボート)

おりづるデコボコ代表団、ベネズエラでの活動を終了

代表団はエクアドルから戻り、最終日の11月13日もベネズエラで精力的な活動を続けた。

13日午前は、ベネズエラ大統領を代表して国務厚生大臣と面会をした。
被爆者の4人はそれぞれ自分の証言を語ると共に、ベネズエラや南米に核兵器廃絶のために協力を要請した。
また、ピースボートスタッフのグティエレス一郎からは世界一周証言の航海の説明をし、ベネズエラや他の南米の国が積極的に核廃絶に取り組む必要があると話し、ピースボートからの声明を渡した。
大臣からはベネズエラの革命は平和的革命であり、核廃絶の目的に感しては一致していると話した。その他にも被爆者に対して核廃絶や平和に関する理解のある暖かい言葉で語ったので、被爆者の方は思わず感動したようだった。

キャプション ベネズエラ国務厚生大臣と

国務大臣の面会のあと、田中さんと川崎さんは慌ててボリーバル大学に向かった。
会場には最初、数人しかいなく、そのままフォーラムを始めざるを得なかったが、川崎さんと田中さんが証言を始めてから徐々に人が集まってきた。学生達は話を真剣に聞いていた。

キャプション ボリーバル大学で証言する川崎さん

証言を終わったあとは質問がとても多かった。
アメリカが原爆投下に関してどのような正式な説明をしてきたかに対して、田中さんはアメリカはやっと去年、150年前に行っていた奴隷制に対して謝罪をしたことに触れ、原爆に対する謝罪は難しいだろうと言った。また、広島と長崎の原爆がそれぞれウラニウムとプルトニウムで出来ており、原爆投下は人体実験だったことが歴史学者が証明していると話した。そして、原爆投下の時にどの地点にいたかと言う質問に対して、川崎さんは原爆のキノコの下にいたことを説明し、会場の人々は驚いた。また、他の学生が放射能汚染に対する対策と生物や植物への影響に関して質問したところ、そのような対策はなかったと被爆者の二人が答えた。

キャプション ボリーバル大学で質問する参加者

証言会が終わった後、ジャーナリズム専攻の学生は、自分の目指すジャーナリズムはCNNのようではなく、社会派で人々の問題を捉えるものでなくてはならず、まさしく被爆者の証言のようなものを取り上げたいと語った。また、病院の職員である女性は娘を連れて証言を聞きに来ていて、最後に涙ぐみながら娘と同じ年齢で被爆した田中さんの手を握って挨拶した。

国務大臣との面会を終え、井口健さんと渡辺淳子さんはIVIC(イビック:ベネズエラ国立科学技術研究センター)へ。IVICは、物理学、生物学、海洋学など、さまざまな分野の研究施設を備えた総合センターで、科学研究というものを一握りの専門家レベルに留めるのではなく、各地域のコミュニティーや協同組合に科学を役立てていく、という国の方針「ミシオン・シエンシア(科学計画)」に基づいて活動している。
本日2人の証言を聞きに来たのは、IVICの職員と近隣コミュニティーの人々。数日前に、テレビで放映された「おりづるプロジェクト」の紹介を見て遠くからやってきた、という人もいた。
井口さん、渡辺さんともに、当時の記憶を証言し、核廃絶への強い希望を訴えた。

写真 IVICで証言する井口さん

IVICでの証言は、「科学技術」という、使い方によって善にも悪にもなりうる分野に携わる人の倫理に強く訴えるものがあった。「書籍や映像でしか知らなかった情報だけれど、実際に証言を聞くことによって、自分たちが同じような驚異にさらされていることを実感した」「原子力について、きちんと向かい合おうと思う」というコメントがあがった。

「“黒い雨”をあびた」と証言した渡辺淳子さんは、ひとりの女性から贈り物を受け取った。それは、通称“金の雨”と呼ばれるベネズエラ産の輝きを放つ石のネックレスで、「黒い雨でなく、これからは金の雨が貴女を守ってくれる」という言葉が印象的だった。

キャプション 金の雨ネックレスをもらって、感動のハグをする渡辺さん

ボリーバル大学、およびIVICでのイベント終えた4人は、2週間の証言活動をしめくくるべく、ラ・グアイラ市庁舎前にある「ベネズエラ広場」に向かった。ここでは毎週木曜日、市庁舎の主催による講演会が行われ、テーマは国際情勢、人権、女性、貧困問題など多岐にわたる。一般市民、誰でも参加できることになっている。今週は4人のスペシャルゲストを招待し、多くの市民に被爆証言を伝え、ラ・グアイラ市民の核廃絶への意識向上を促した。

先日、「平和市長会議」に署名したアレクシス・トレド市長も同席し、ラ・グアイラ市民が証言を聞く意義を語った後、井口さん、田中さん、渡辺さん、川崎さん4人が、それぞれの想いを発信した。

キャプション ラ・グアイラ市で証言会で原爆投下の瞬間を再現する川崎さん

ラ・グアイラ市は1999年、大洪水に見舞われ、参加者の中には家族や友達を失った経験を持つ人も少なくなかった。その経験を思い出しながらヒバクシャの気持ちを汲む反面、自然災害と核兵器よる意図的な虐殺との違いについて参加者たちは改めて考えたようだった。
参加された市民は、「ベネズエラでヒバクシャを受け入れられたことを名誉に思う」と言い、4人の“おりづる”たちは、「ベネズエラに来て本当に良かった」と語った。

キャプション おりづるで遊ぶ子供

トレド市長は、「ここで市民が聞いた証言は、帰宅と同時に家族に話され、友人たちに共有されなければなりません。証言の記録映像は、各組織、教育機関全てに配布し、上映会をするように促します。また、今日の講演をまとめたものは、冊子としていつでも手にいられるようにします」と約束した。

キャプション 証言を聞くラ・グアイラ市民

井口健さん、田中稔子さん、川崎武彦さん、渡辺淳子さん4人による「デコボコおりづる代表団」のベネズエラ証言活動が幕を閉じた。緊張した面持ちで到着した2週間前とは違う顔をしていたのは、ラテンアメリカの暖かい受け入れに感動し、核廃絶への大きな可能性を見いだしたからだと信じている。本当にお疲れさまでした。

※デコボコ代表団はオリヅル4人の本人達が使っている表現でした。

キャプション デコボコ代表団、活動終了!

(文責・グティエレス一郎・松村真澄)

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