3ヶ月間以上の長きにわたって、船上と寄港地で活動を繰り広げてきたおりづるプロジェクト。その航海は決していつも平坦ではなく、ときには大荒れ、もしくは海が蒸発したかのように感じる日もありました。被爆の実相をどうすれば聞いてもらえるのか、心に届くように伝えることができるのか、正確さと、世界中にいる大勢のヒバクシャの思いを代表することも意識しながら、ヒバクシャもスタッフも、そしておりづるパートナーたちもいっしょに悩み、話し合いながらの、長いようで短い時間でした。これまでの想いの集大成を7月21日(水)、『しあわせのたね~100年後の未来をデザインする~』と題し、一日かけてピースボート参加者全員と共有しました。
洋上で開講していた地球大学の卒業生たちのプロジェクト、「地球小学校夏期講習最終日」では、「日本と戦争-知られざる真実」をテーマに、日本が関わった戦争を掘り下げて丁寧に伝えました。これに関連して、「韓日しゃべり場」では、「ヒバクシャ」と「日本」そして「過去の戦争責任」や「これからのおりづるプロジェクト」について、一般参加者とおりパが国籍を交えて輪になり、熱く語り合いました。
「ヒバクシャ」は日本人だけではないという事実を改めて確認
「戦争はなくならない?!・・・にしないための5人の発言」では、パネルディスカッション形式で、ヒバクシャと沖縄戦生存者、韓日の若者という構成で、どうすれば平和を形にしてゆくことが出来るのかについて具体的な議論が行われました。
遠くても、ピースボートで会えた仲間と決してあきらめないで進み続ける
また、ヒバクシャを代表して、最後の船内被爆証言は兒玉光雄さんが「命の記録」を伝えました。
これからもご夫婦で証言活動を続けてゆかれるそうです
同日開催された「原爆投下の真っ赤なウソ」の講座は、被爆2世としておりづるプロジェクトに参加した中谷悦子さんによるもので、立ち見が連なるほどの盛況ぶりでした。多くの人にとって、戦争や核兵器について改めて考える機会となったようで「原爆投下について理解が整理できました。」「後でみんなで戦争や原爆について話し合いをしたんですよ。」という声があがっていました。
多くの資料を用いた明解な説明に、参加者は引き込まれていた
「胎内ヒバクシャ健さんと喋ろう!」は5回シリーズ最終回を迎え、「生きる喜びとは」というテーマで集い話しました。第4回目の前回、「自殺って身近だよ。遠い世界の話じゃない」というテーマで語り合ったとき、「『死にたい』という言葉は『生きたい』という思いの裏返しだ」という発言がありました。それをうけて今回は、「なぜ生きるのか」「どのように生きてゆくのか」について考えるに当たり、阪神淡路大震災を生き抜いてきた参加者、切畑輝子さんをゲストに迎えました。
切畑さんは、阪神大震災で自宅が全壊、そしてご自身も重症を負いながら、罹災市民の支援活動に関わり続けてこられた方です。「自分の気持ちを伝える人や場所が少ないことが、自殺につながっているのではないか。一分後の世界、近い将来に希望をもって生きることが大切だと思う。」という意見に、参加者からは「阪神淡路大震災を生きぬいたなかでの反骨精神に非常に感動した」という言葉がありました。
田中健二さんは、「自分たちの住む世界について考えるのは、次世代を担う若者だ。生きる喜びは、身近なところに存在している」という言葉で、若者を励まして印象的に締めくくりました。企画者の一人、おりづるパートナーの庄子友希江さんは、「証言を伝えることに重きをおくことも大事だけど、しゃべり場をの企画を共に考えて形をつくってきたことで被爆者の方と、思いのキャッチボールをすることができた。会話することや対話することの大切さを再認識した。」と話していました。
最後に、「ヒバクシャ×若者 ~おりづるプロジェクトから未来へ」では、ヒバクシャ9名とおりづるパートナーの若者、そして一般参加者が集まって、おりづるプロジェクトをふりかえりました。乗船の動機、最も印象的だった出来事、そして下船後にしようと思っていることをそれぞれの立場から共有しました。
地球を一周して、共に平和について考えた仲間たち
このほかにも、沖縄基地問題やサステイナビリティ(持続可能性)について掘り下げてきた自主企画の発表や、参加者の中から、今回のクルーズで得た今後のビジョンについての共有もあり、クルーズ全体を包括するテーマ、「100年後の未来をデザインする」を実際におこなってみる貴重な一日になりました。
この盛りだくさんの一日でつかんだ「しあわせのたね」を、参加者のひとりひとりが下船後に、それぞれ戻ってゆく地面に埋めてほしいと思います。第69回地球一周の船旅を通して得たものが、広く根を張り、大きな木になって、うつくしい平和の花を咲かせますように。
(佐々野桜・小松真理子)
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