3.核廃絶へのいろいろな動き

「核の今」がわかる本

みなさん、こんにちは。

今年7月21日、講談社から『「核の今」がわかる本』が出版されました。これは共同通信編集委員の太田昌克さんと共同通信核取材班が書きまとめたものです。このなかには、2009年夏に第3回おりづる被爆者の兒玉光雄さんを取り上げた共同通信の記事も載っています。

    ピースボートのおりづるプロジェクト-核本
タイトル:「核の今」がわかる本
著者: 太田昌克・共同通信核取材班
価格: 880円(税込み)
講談社BOOK倶楽部などからご購入いただけます。

『「核の今」がわかる本』書評
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2009年6月からの約2年間、共同通信社が核を巡る様々なテーマで世界20カ国にわたり行った調査・取材の集大成とも言える一冊。「核なき世界―人類の岐路」とのタイトルで地方紙に連載されたシリーズをまとめたものです。

チェルノブイリやスリーマイル原発の関係者・米国やインドのウラン採掘現場で健康被害に悩む人々・サハラ砂漠で行われたフランスの核実験で後遺症に苦しみながら何の補償も受けられない元仏軍人らへのインタビュー等々、現代の「核」にまつわる課題が幅広く網羅されており、大変読み応えのある著作です。

筆者の太田昌克さんは共同通信入社後に広島支局で原爆関連の取材を担当し、これを機に20年近く「核」をテーマに取材を続けて来たそうで、日米核密約についての調査報道では「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した日本きっての核ジャーナリスト。本作のほかに『アトミック・ゴースト』や『盟約の闇』などの著作もあります。

2009年4月、オバマ米大統領のプラハでの「核なき世界」スピーチに大きな期待を寄せながら、昨年から今年にかけて3度の未臨界核実験を行った同大統領に失望した人も多いと思いますが、この本によるとオバマ氏は1980年代から既に核問題について大変熱心な学生だったことが分かり、必ずしも「口だけ」ではなかったことが確認できます。

また、唯一の被爆国で表向きは核廃絶を訴える日本ですが、その日本の企業がパキスタンを通じてイランや北朝鮮への核拡散に加担していたとの事実や、米国の「核の傘」に依存し続けたい日本政府高官など、この国の矛盾点も指摘されています。

国際政治に影響を与えるヒバクシャの例として、昨年の第3回おりづるプロジェクトに参加した兒玉光雄さんも紹介されています。この時、ピースボート第69回クルーズ船上で核兵器禁止条約洋上会議が行われ、英仏の国会議員や国連高官が出席しましたが、兒玉さんをはじめとする被爆者たちが、この機会を利用し国連軍縮部のランディ・ライデルさんに、国連事務総長宛の手紙を託しました。

2ヵ月後、広島の平和記念式典に出席した潘基文事務総長は「核兵器のない世界という夢を実現しよう」と呼びかけ、兒玉さんたちが手紙に書いた「広島から世界に核廃絶を訴えて」くださいという要望に答えてくれたそうです。

洋上会議の模様
兒玉さんたちの手紙

「核」について、多方面から深く考えさせてくれる一冊です。是非ご一読ください。
(シュミットひろこ)
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また、第1回おりづる被爆者の浅野雅彦さんからもご推薦をいただきました。ぜひ、書店に行った際には手に取ってみてください。

(上 泰歩)

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