1.ヒバクシャ証言の航海

【報告】第6回「証言の航海」船内生活①「世代を超えた和解」

10月10日に帰航した第6回「証言の航海」では、「継承」をテーマに、寄港地での活動のほか、船内でも様々な企画を行っていました。今回は「世代を超えた和解」についてご紹介します。

今回の航海には、広島・長崎に原爆を投下した両機の爆撃機に搭乗していた唯一のアメリカ人クルーの孫であるアリ・ビーザーさんがWEBレポーターとして地球一周同行していました。また、途中、中南米区間では、原爆投下を命じたトルーマン元米国大統領の孫である、クリフトン・ダニエル・トルーマンさんがゲストとして区間乗船していました。

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エルサルバドルにて。左から、アリ・ビーザーさん、キャサリン・サリバンさん
駐日エルサルバドル大使、クリフトン・ダニエル・トルーマンさん

「自分たちの存在が被爆者のメンバーに受け入れてもらえるのだろうか…」アリさんも、クリフトンさんも、乗船する際には不安と緊張でいっぱいだったそうです。ところが、実際に参加してみると、航海に参加していた被爆者の皆さんが本当の家族のように温かく受け入れてくれて、驚くと同時にとても嬉しかったと話してくれました。

船内での具体的な活動を紹介すると、アリさんは、WEBレポーターとして常に被爆者の皆さんの側にいて活動の様子をシャッターにおさめては、英語版のホームページで報告していました。彼の写真や動画を見ると、証言の記録としてだけでなく、被爆者の皆さんの些細な心境の変化や、ふとした瞬間の和らいだ表情などを丁寧に捉えている様子がうかがえます。

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船内で行った公開討論会にて自身の活動について話すアリ・ビーザーさん
隣は被爆者の笹森恵子さん(広島被爆、当時13歳)

また、クリフトンさんは、船内でご自身がどうして現在の活動を始めるようになったのか、そのきっかけや想いなどを語ってくれました。また、被爆者の皆さん一人ひとりと個別取材というかたちで向き合ったり、長崎で17歳のときに被爆した大村和子さんとともに、「和解」をテーマに企画を行ったりしました。長年務めていたジャーナリストとしての仕事を退職してから、現在は核のない世界を築くために少しずつ活動を始めているクリフトンさん。被爆者の皆さんと真摯に向き合っている姿がとても印象的でした。

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船内にて「和解」をテーマに企画を実施

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クリフトン・ダニエル・トルーマン氏のウェルカム・パーティにて

彼らの思いを代弁することは出来ませんが、ここで、クルーズ終盤に船内で行った企画の中で、アリ・ビーザーさんが練習に練習を重ね日本語で語ったスピーチの一部をご紹介します。

「2世代前に、最後の一人までという思いでわたしたちは戦っていました。そしてわたしのおじいさんは核時代の始まりに参加していました。ここに、ユダヤ系アメリカ人の若者がいること。そして日本の船でヒバクシャとともに核兵器も原子力エネルギーもない世界のために働いているということ。時間の流れとともに何が起こるのか、考えてみてください。わたしやクリフトンのおじいさんの時代には、こんなことは絶対に起こらなかったでしょう。しかしたった68年経った今、わたしたちは一緒に活動しています。
わたしたちは過去から学ぶことができます。これはわたしたちが一緒に歩いていくためにはとても大きな一歩になりますが、まだ、始まったばかりです。19,000発の核兵器が存在するこの世界で、わたしたちは生き残るために、この学びを深めていくプロセスを間に合わせることができるでしょうか。これは、誰か他の人の問題ではありません。わたしたちみんなの問題です。わたしたち一人ひとりが行動をおこし、声を上げて初めて前進することができるのです。」

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左から、淺海頼子さん(広島被爆、当時17歳)アリ・ビーザーさん、
大村和子さん(長崎被爆、当時17歳)

彼らとの出会いを通して感じたこと、考えたことは、一緒に旅をした被爆者の皆さん9人9様ですが、共に過ごした時間と対話によって築かれた信頼関係は、これからもずっと繋がっていくでしょう。

最後に、クルーズを終えて、アリ・ビーザーさんが毎日新聞で紹介されました。ぜひご一読ください。

ひと:アリ・ビーザーさん 被爆者の証言の旅を世界に発信(毎日新聞:2013年10月25日)

(ピースボート 古賀早織)

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