7.おりづるプロジェクト・オンライン

豪州フリーマントル市長「核兵器禁止条約が発効し、今日が始まりです」

2021年1月22日ピースボートの「おりづるプロジェクト・オンライン」第11回目の証言会は、西オーストラリアのフリーマントル市にて開催しました。
ブラッド・ペティット市長、並びに副市長、平和首長会議加盟都市・コックバーン市のラ・フレネ市長、在パース日本領事館の領事代理、国連人権委員会の関係者、元市議会議員、学校の先生とおよそ30名に向けての証言会でした。
受け入れてくださったのは、平和首長会議・フリーマントル市のエリザベス・ポーさん、エイドリアン・グラモーガンさん、そしてフリーマントル市のレベッカ・ボーデンさんです。

私たちは孤独の中に住んでいる —立ち向かい学びましょう

受け入れをしてくださったエリザベス・ポーさんは、『いま私たちは感染症のパンデミックによって孤独の中に住んでいます。この脅威に立ち向かわなければいけません、核兵器にも立ち向かわなければなりません。条約が出来たこの歴史的な日に人間が何をしてしまったのか皆で学びましょう。』と参加者の皆さんに向け呼びて会を始めました。

司会のエリザベスさん

過ちは繰り返しませぬから —伊藤正雄さんによる松原美代子さんの被爆証言

2015年に地球一周の旅を通して戦争の悲惨さを目の当たりにした伊藤さん。
しかし、広島や長崎の悲劇は桁はずれの違いがあると感じたそうです。
それは「放射線被害」。広島や長崎での悲劇は75年も前の出来事ですが、その苦しみから今だに解放されてない方がいるのです。

松原さんの経験を伝える伊藤さん

伊藤さんは被爆時4歳で当時の状況をあまり覚えていません。今回は被爆当時12歳だった松原美代子さんの証言を中心にお話しいただきました。
被爆による吐き気や下痢の急性障害だけでなく、後遺症や差別・偏見にも苦しみました。
20歳の時、牧師との出逢いをきっかけに目の不自由な子どもたちの保母として働き、平和への思いが募りました。
『私たちのような原爆被爆者の苦しみや悲惨さを世界の誰にもしてほしくない。私たちだけで十分だ』という思いから、英語を学びアメリカやヨーロッパ・国連へ出向き核兵器廃絶の訴え、脳梗塞で倒れるまで続けられました。

『原爆を作ったのは人間だ、使ったのも人間だ。人間は忘れやすい生き物だ。忘れたらまた同じ過ちを犯してしまう。世界の人に忘れられないように訴え続けなければならない』という使命感が松原さんの原動力であると話した伊藤さんご自身も、同じ使命感を感じている印象を受けました。

 

オーストラリアも日本も、核兵器禁止条約に参加を —伊藤さんの訴え

証言を終えて、記念すべき日にオーストラリアのフリーマントルの方々と出会えたことを喜びつつ、伊藤さんは「オーストラリアや日本のような核兵器の傘の下の国が一歩前進することが核兵器禁止条約の効力を強くし、核保有国へのより大きな拘束力となります。一緒に自分たちの国を動かしましょう」と訴えました。

ブラッド・ペティット市長

そして、証言会に参加したフリーマントル市のペティット市長は『被爆証言を大切な日に聞けたことは大きな意義があります。条約が発効し、今日からが始まりです。』と声を上げました。

 

癒えない傷を抱えている人が多い —私たちができること

証言後に『どれぐらいの期間をかけて広島や日本が復興しましたか?』という質問に対し伊藤さんは次のように答えました。

広島の復興に関しての質問が出ました

『原爆投下から25年後に復興に着手し始め、今の街ができるまでに50年はかかったと思います。復興後の街は世界で負けないくらい素敵な街になったと思っていますが、その中でも癒えない傷を抱えている方も多いです』この言葉に私は胸を撃たれました。被爆者の方が人生をかけて伝えてくださっている声を、多くの人へ届けていく必要性を改めて感じました。
核兵器禁止条約発効はゴールではなく、スタートラインに立った瞬間だと思います。
核兵器を保持・使用することが違法になったことの認識を広めていくことで、これから先の未来、核のない世界が来る。証言の中で伊藤さんの言葉にあった『戦争のない平和な時を引き継いでください。核兵器のない世界を作ってください』という言葉を胸に刻み、核のない(そしてコロナのない)世界で抱き合って喜び合える日を目指し、引き続き活動していきたいと思います。

<メディア掲載>
2021年1月22日 NHKニュース
“日豪も核兵器禁止条約に参加を” 被爆者が豪で協力訴え
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210122/amp/k10012828931000.html?__twitter_impression=true&fbclid=IwAR1R59PSLc6Yh9p_JIghOq1g8_YRRdJgLUHqH353js2QGwcTte35H2SzXLU

文:河合由実


後日、フリーマントルから写真が届きました。当日集まった方々の様子です。

集まった方々

「核兵器を廃絶しましょう ~オーストラリアも役割果たして~」というフレームをもって、核兵器を禁止する条約の発効を祝いつつ、政府に訴えかけました。

ペティット市長

平和首長会議加盟都市・コックバーン市のホーレット市長夫妻

ICANアンバサダーでもある、メリッサ・パーク弁護士

ホーレット市長、平和首長会議のエリザベス・ポーさん、 日本副領事のせんみょうなおきさん

関連記事

  1. キルギス、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、カナダの若者…
  2. オランダの国会議員に向けて被爆体験を語った時、「心こそ大切」との…
  3. 「マレーシアには核兵器はありませんが、反核活動は社会の責任」
  4. 広島で被爆し、ブラジルに移住した渡辺淳子さん
  5. G7広島サミットで高まる関心~バルセロナの若者たちと交流~
  6. この先の未来をどう創造していきたいか ~被爆証言を聞いて~
  7. モーリシャスの参加者「原爆は、人間の感情、愛、絆、文明、尊厳すべ…
  8. 「被爆証言が核軍縮に貢献している。可能なうちに耳を傾けて」と国連…
PAGE TOP