7.おりづるプロジェクト・オンライン

広島で被爆し、ブラジルに移住した渡辺淳子さん

1月23日に行われた第12回目のオンライン証言会では、ブラジルより100人を超える方々にご参加いただきました。
はじめにピースボート「ヒバクシャ地球一周証言の航海」や「おりづるプロジェクト(ヒバクシャ地球一周 証言の航海)」の活動について紹介したのち、今回のホストである日本創価大学のアレッシさんより、核兵器と核兵器禁止条約をめぐる世界の動きなどについて、発表していただきました。

 

渡辺淳子さんによる被爆証言

今回の証言会でお話をしてくださったのは、ブラジル在住の渡辺淳子さん。
渡辺さんは2歳の時、広島の爆心地から18㎞にある祖母の家に疎開していた時に被爆されました。

1967年、24歳のとき結婚を機にブラジルに移住さした渡辺さん。2003年にはブラジル被爆者平和協会に入り、現在も理事として活動されています。在外・国内被爆者と差別の無い援助を求め、政府との交渉や現地での被爆証言・放射能被害者との交流をしてきました。ピースボートの「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」には過去4回参加し、世界各地でも被爆証言をされています。

今回はそんな渡辺さんが、ポルトガル語でご自身の体験や想いを力強く語ってくださりました。

 

平和活動の原点

“1945年8月6日 ― 。
その日は朝から良い天気、いつもの様に近所のお宮の前で友達と遊んでいました。8時15分が過ぎた頃、いきなり強い風が吹いて来てたくさんの紙が次々舞い降り、焼け焦げた紙が舞い落ち… 母はあわてて私と兄を迎えに行きました。”
その時に降った黒い雨に打たれた渡辺さんはその後ひどい下痢が続き、そのためご両親は娘である淳子さんはもう生き延びないだろうと死を覚悟されたそうです。
2歳で被爆されたため当時のことはあまり覚えていなかった渡辺さんですが、60歳の時にブラジル被爆者平和協会でのお手伝いを始めました。そこで見た、惨く痛ましい原爆の写真や資料が、現在の被爆証言と平和活動の原点になっているとのことです。
記憶がないから被爆証言は出来ないと思っていた渡辺さんですが、だんだん証言をする被爆者が少なくなってくるのを見た時、こう思いました。
「被爆者自身が被爆を語らなくなった時どうなるのだろう… そうしたら、私は記憶がなくても一人の被爆者として話さなくてはならないのではないか。」

ご自身が今までに他の被爆者の方から聞いたことを、そして自分自身の心が感じたことを証言しよう。そう決心され、今の渡辺さんがあるのでした。
最後に淳子さんは、「原爆は過去の話ではありません。今も被爆者が生存していることを忘れないで。これからを担う若い人たちには、平和な世界にするためにはどうしたら良いか考えて行動してほしい。」と力強くメッセージを送ってくださいました。

原爆がいかに惨いものかということ、そして未来と平和への想い。渡辺さんご自身がポルトガル語で語られる言葉一つひとつには重みがあり、聞いている参加者の心により一層強く訴えかけました。

なんと、今回のセッションの最後にはミュージシャンによる素敵な演奏が披露されました。美しいメロディに聞き入りながら、私たち参加者は今日の証言会でのお話を思い返し、改めて平和への想いをひとつにしたのでした。

 

証言会を終えて

今回のホストの一人であるジュリアナさんからは、 「淳子さんのお話は以前にも聞いたことがありますが、やっぱり何度聞いても感動して胸がいっぱいになる。」との感想をいただきました。

「1月22日、この重要な日にベストなタイミングで証言会を開催できたことはとても有意義でした。それゆえ参加者もこのようなテーマで証言を聞くことの重要性をとてもよく理解してくれていました。淳子さんが語ってくださった経験や想いは本当に素晴らしく、感動いっぱいのとても良い会になりました。」とホストのアレッシさん。
アレッシさんの言うように、この日ブラジル時間ではまだ1月22日、核兵器禁止条約が発効されたその日でした。世界中の人たちが祝ったこの記念すべき日に証言会を開催できたことは、私たちにとってもとても嬉しく、また意義深いことでした。

終始あたたかい雰囲気の中で行われた、ブラジルの皆さんとのセッション。会の最後にはたくさんの拍手とありがとうの言葉があふれました。
今回もまた、こうして被爆者の生の声が、海を越えて人びとの心に届いたこと、そして核兵器のない世界を望む想いを共有出来たことは、私たちにこのプロジェクトの持つ意味を改めて感じさせてくれました。

<証言会の様子(ポルトガル語)>

文:高尾桃子

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