7.おりづるプロジェクト・オンライン

「話しあってアクションに向かいたい」和田征子さん、西アフリカの人々に語る

36回目のオンライン証言会は、アフリカ宗教者平和会議(ACRP)主催で行われました。同会議はアフリカ全土にネットワークを持ち、たくさんの個人や団体が属しています。その中でも、今回はアフリカ西部の国、カメルーン、ギニア、コートジボワール、ナイジェリア、ブルキナファソ、マリから約60名の参加者が集まりました。会はフランス語と英語で進められました。

企画、調整、司会をしてくれたリネット・ンガユさん

小さい頃から繰り返し母親の被爆当時の話を聞いて育った

今回証言してくださったのは、和田征子さん。英語で証言してくださいました。1943年に長崎で生まれ、1歳10か月のとき長崎で被爆されました。

和田さんは、当時、何が起こったか理解するにはあまりにも幼い、1歳10か月という歳で被爆されました。そのため、幼いころから繰り返し母親の被爆当時の話を聞いて育ったということでした。「私はこれから世界中で原爆がなくなるように、そしてその目的の達成のために話します。」と流ちょうで、力強い英語で和田さんの被爆証言が始まりました。

和田さんの英語の証言にフランス語の字幕をつけて

「私の家は爆心地から2.8キロのところにありました。山があったおかげで、直接的な原爆の被害からはまぬかれました。しかし、原爆は窓や障子を吹き飛ばし、その破片は家の中に30センチほど積もりました。原爆から逃げる際に黒い雨に降られ、山から逃げてくる人々がいました。

8月15日、世界大戦は終わりました。多くの建物は避難場所となっており、大学の講堂には一面に被害者たちが横たわっていました。当時、母は24歳でした。

人間の尊厳とは一体何なのでしょうか?私たちはゴミのように焼かれるために生まれてきたのではありません。10年前、母は89歳でさまざまなガンや病気で亡くなりました。あの日から76年経った今、被爆者の平均年齢は84歳です。私たちのような若い被爆者が声を上げ続けていかなければなりません。」

原爆投下後も苦しみが続く被爆者

「日本政府、アメリカ政府から厳しい情報統制(プレスコード)が敷かれ、統治下の日本では被爆者たちは、この苦しみの原因を知らされることもなく、生活を強いられました。
1945年の終わり、広島で約14万人が、長崎で約7万人の人々が原爆によってその尊いいのちを落としました。その多くは、お年寄り、女性や子供を含む非戦闘員でした。多くの人々が何が起こったか分からないまま一瞬にして殺されました。キノコ雲の下にいた彼らは、人種、国籍、年齢、性別問わず、被爆者として生きること、または死ぬことを強いられました。
今日、沢山の生き残った被爆者たちは、あの日見た光景、匂い、音が脳裏に残っていますし、放射能による差別、原因の分からない病気、経済的な苦労などに苦しめられ、沢山の夢が潰えてしまいました。」

核兵器が使われたら勝ち負けもなく、殺される。

参加者からも、「被爆者は復讐がしたいわけではなく、みんなで話しあってアクションに向かっていくことを望んでいる」との和田さんの意見が印象的だったという声がありました。また、和田さんから、今年(2021年)1月に発効がされた、核兵器禁止条約についても言及があり、それを受けて参加者からアフリカの批准国についての質問も出ました。アフリカには核実験による被爆国もあります。そのため、アフリカでの関心がもっと高まっていくことを期待したいと感じました。

参加者の一部と

和田さん証言会を聞いて

私自身、和田さんの被爆証言を聞くのは二回目でした。一回目は高校生のときでした。その時は、初めて生で聞いた被爆証言だったこともあり、原爆の恐ろしさや凄惨な描写に圧倒された記憶があります。一方で、今回の証言では、和田さんの二度と核兵器は使われてはいけないという力強いメッセージが印象的でした。この違いは証言会ボランティアを続けるうちに、証言を聞いた私自身がこの先何ができるか、何をしていくべきかと考えるようになったということだと感じています。

被爆者の語る、被爆証言が印象的でインパクトが強いだけに、現在の核の脅威についてあまり注視されていないことがあると思います。この証言会を経て、現地の方が今の核の脅威について思いをはせて欲しいと感じました。

企画・運営チーム (左上から時計回り:ピースボート渡辺里香、英語レポート&通訳のソレン・ペティコル、ピースボートスタッフで英仏通訳のレミー・ミオ、和田征子さん、同ブログ筆者の本間のどかさん、レコーディング担当の高尾桃子さん)

文:本間のどか
編集:渡辺里香

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