2024年8月6日、9日、広島・長崎に原爆が投下されてから79年目の夏でした。
ピースボートは、被爆者の皆さんとの航海を続けながら、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営団体として、核兵器の禁止と廃絶を訴えてきました。しかし、ウクライナでも、ガザでも、そして東アジアでも、核の脅威は高まるばかりです。あの惨劇を決して繰り返させないために、今年もICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)と協力して、原爆投下の時刻に合わせて、現地からライブ配信を行いました。
8月6日(火)8:05~8:30 広島より
広島にある国連機関・UNITAR(国連訓練調査研究所)とも協力して、原爆投下の時刻に合わせて、現地からオンライン生配信を行いました。
午前8時だというのにすでに灼熱の太陽の下で、原爆投下の目標地点となった相生橋から世界に向けて話し始めました。強い夏の光とセミの鳴き声(そしてデモや訴えの声)の中で、慰霊の黙とうを捧げました。
UNITARの事務所からは、87回クルーズのおりづる被爆者である伊藤正雄さんにも登場して頂きました。伊藤さんからは今年、広島市立基町高校の生徒さんに証言をもとに描いてもらった「原爆の絵」の紹介をしました。絵を描いてもらった感想を聞くと「市中から逃げて来られ多くの被爆者が次々に亡くなり、近くの空地で遺体を積み上げて火葬される様子は、まるでゴミの焼却の様でした。今でも忘れる事の出来ないその様子を描いてくれました。5歳位にもなっていなかった幼児の記憶を見事に再現してくれた2人の高校生に感謝で一杯です。」と。
UNITARユース・アンバサダーの3名は自分の米国での経験を通して両国での原爆への理解の違いや、原爆や核兵器の問題に関する関心が薄れていると感じる中もっと意識を高めていきたいという強い思いを語りました。
また広島のNPOピース・カルチュラル・ビレッジの代表には活動内容や若者が研修などを通して広島のことを学び、生業として平和公園周辺をガイドしている仕組みなどを紹介して頂きました。
8月9日(金)10:50~11:15 長崎より
長崎のキリスト教文化を象徴するような浦上天主堂、平和祈念式典が開催されている平和公園の隣りの爆心地公園、そして長崎で一番賑やかな商店街の3か所を繋いで、慰霊の黙とうを捧げました。
V117クルーズのおりづる被爆者である小川忠義さんにも登場して頂きました。小川さんが2009年から続けている「忘れないプロジェクト」は、浜町商店街で原爆投下の8月9日11:02を人々がどのように過ごしているかを写真に捉えています。それでけでなく、同じ時刻に「自分の大切なもの/戦争で失いたくないもの」を撮影した写真を世界中から募集しています。
原爆投下から79年のこの瞬間を、荘厳な鐘の音で迎えた浦上天主堂と、キッズゲルニカを見ながらマイクを近づけないとスピーカーの声がかき消されそうな喧噪の爆心地公園。途中で、あまりの高温に通信が切れるというハプニングもありましたが、現地でしか味わえない色や音、熱気を伝えられたのではないでしょうか。
「長崎市がイスラエルの駐日大使を平和祈念式典に招待しなかったことでG7のうち、アメリカやイギリスなど6か国とEU(ヨーロッパ連合)の東京に駐在する大使らが参加の見合わせた」というニュースが配信の前日に報道されたことを受けて以下のようなコメントも含めました。「今年の式典が政治的なやり取りのツールに使われてしまうことは本望ではありません。式典は平和のために、核兵器の廃絶のために祈り行われるものだから、全ての国や地域の代表に出席してもらいたいです。」
配信後記:
両日とも、大変暑い中たくさんの人々が屋外に出て黙とうを捧げている様子が印象的でした。そして、カメラの前で話している以上に多くの人がこの配信に携わってくれています。チームワークで、広島と長崎の雰囲気が世界の一人でも多くの人に伝わり、黙とうの輪が広がっていれば幸いです。
文:渡辺里香